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4 ブカスト王国の砂漠化を防げ 2 ミハイルの旅路

今回はマクスたちの結婚式より、少し前のお話です。


楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


「ここも砂漠化が進んでいるのか・・・」


 バッシュ帝国の皇太子ミハイルは草木のない乾いた大地を見渡す。今日は夜明け前にオアシス・ロッサを出発した。出来れば次なるオアシス・ヴェルデまで午前中には到着したい。


 ミハイルとその妃ルナはソベルナ王国の王太子の結婚式に参列するため、初めて国を出た。


――――何故、皇太子なのに外国へ行くのが初めてなのかというと・・・。


 バッシュ帝国は鎖国中だからだ。


 この大陸で二番目に歴史のある国、バッシュ帝国。彼らは今から数百年前に独自の文化を守るため、他国との行き来を禁止した。しかし、それは表向きの理由で本当の理由は・・・。


――――ともかく、ソベルナ王国の王太子夫妻に皇帝(父)から託されたお祝いの品を渡せば、バッシュ帝国が鎖国政策を取らなければならなかった原因は解決する。


 ミハイルが大役を終えて無事に帰国した暁には、バッシュ帝国は開国を宣言する予定だ。そして、ソベルナ王国とブカスト王国の間に新しく出来た街道をバッシュ帝国まで延ばして貰えるよう、両国との交渉を始めたいと考えている。


「長年、放置してきた弊害だな。この道も酷い有様だ・・・」


 手入れをしていない道は、辛うじて道であると分かるくらいの状態で、馬ならまだしも、馬車だと酷く揺れる。ここまでの旅路で車輪が歪んだり外れたりすることも幾度となくあった。


 本来ならば、昨日ソベルナ王国の王城に到着している予定だったのだが、今もなお、皇太子一行はブカスト王国の砂漠地帯を抜け出せていない。


 何とかして、ソベルナ王国の王太子マクシミリアンの結婚式に間に合わせなければと、護衛隊長の顔も日に日に険しくなっていく。


 また、ミハイルが今一番心配しているのは、皇太子妃ルナが連日の暑さで体力を奪われ、元気のない状態が続いていることである。彼女が寝込んでしまうような事態を迎える前にブカスト王国を抜けたい。


「ルナ、そろそろ果実水を飲んだ方がいい」


 ミハイルは彼女の侍女に用意させた果実水をルナへ渡した。馬車が揺れてもこぼれないよう、細長い筒状の容器に入れている。


「殿下、お気遣いありがとうございます」


 ルナは、か細い声でお礼を口にし、水筒を受け取った。


――――今、彼女は暑い馬車の中にも拘わらず、厚手の民族衣装を着ている。


 彼女の長袖をまくり上げたい。それから胸元も開いて・・・いや、どうせなら全部脱がしてやりたい。ミハイルはそんな衝動に駆られる。これは色事とかそういうことではなく、彼女の体調を心配しているからである。


 ルナにこんな格好をさせているのは彼女の侍女たちだ。妃は暑くともきちんとした身なりをしないといけないのだという。ミハイルは馬車の中くらいは軽装で良いと指示を出したのだが・・・。


 彼女の侍女をしているのは貴族の娘たちだ。ルナは元々、巫女であり貴族の娘ではない。だから、侍女たちは彼女を軽んじているところがある。


 ミハイルはルナに一目ぼれをした。そして、ルナが神に仕える身だと知っても、我儘を通して求婚したのである。


 皇帝を神のように崇めるバッシュ帝国では、皇太子からの求婚を断ることは事実上不可能だ。


 程なくして、ルナはミハイルの元へ嫁ぐこととなり、巫女の任を解かれた。


 今頃になってミハイルは『ルナは巫女で一生を終えたかったのかも知れない』と、無理やり娶ったことを反省している。


 だから、彼女が目の前で青い顔しているのを見ると胸が痛い。


 巫女だったら、こんな苦行を強いられることも無かっただろうに・・・。


 償いというわけではないが、彼女がいつも笑顔でいれるように、そして、幸せだと実感してもらえるような日々を与えられるように努力していきたい。


 まだ、服装のひとつも解決出来ない不甲斐ない男だけども・・・。


♢♢♢♢♢♢♢


 先日、皇帝(父)からミハイルは呼び出された。


「ミハイル、ソベルナ王国のマクシミリアン王太子が結婚する。これは招待状だ」


 皇帝が彼の前に差し出したのはアイリスの紋章が入った一通の手紙だった。彼は受け取って、中の手紙を確認する。


「結婚式の招待状ですね。随分と日程が急・・・」


「ああ、日程は色々と事情があるのだろう。それよりも私がお前に伝えたいのはその手紙に描かれているアイリスの紋章だ」


「ん~、これは、――――美しいデザインですね?」


 話の意図が分からないミハイルは取り敢えず、上質な紙に描かれたアイリスの紋章のデザインを褒めた。


「そんなことを聞いているのではない。我が国が何故、鎖国政策を取ることになったのかをお前は忘れたのか?」


 いつになく真剣な眼差しの皇帝を見て、ミハイルは自国の歴史を思い返してみる。この国が鎖国を始めた理由は・・・。


「――――盗賊たちから、大切なものを守るため・・・?」


「そうだ。はるか昔、我が国の皇帝は親友であるソベルナ王国の初代皇帝から、大切なものを預かった。そして、我が国が鎖国政策を始めたのは、それを狙ったと思われる皇宮襲撃事件が多発したからだ」


「失念していました。ところで・・・、それとこの手紙に何の関係が?」


「ミハイル!!この手紙にはアイリスの紋章が描かれている。預かっていた大切なものをかの国に返却する時が来たということだ」


「なっ!!」


 ミハイルは驚く。余りにも古い言い伝えで、本当に返す日が来るとは思ってなかったからだ。


 正直、鎖国までしてその大切なものを守り抜こうとしたのは、ソベルナ王国の秘宝を先祖が盗んだからなのではないかと疑っていたくらいである。


「ミハイル、ソベルナ王国のマクシミリアン王太子殿下の結婚式に参列し、預かっていた大切なものを贈り物として返却してくれ。これは命令だ」


 これまでバッシュ帝国は他国の王族が結婚した際、お祝いのメッセージやお祝いの品を送って終わりにしていた。


 皇太子が国を出るなんて、いつ以来なのだろうか・・・。


――――そんなミハイルの不安は的中し、旅に不慣れな護衛達と共に過酷なブカスト王国の大地で四苦八苦することになったのである。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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