3 ブカスト王国の砂漠化を防げ 1 カルロの邪な決意
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
灼熱の大地、ブカスト王国。国土の砂漠化が進み、近年は深刻な水不足に悩んでいる。国王マーカスは緑地を増やす方法を他国と共同で研究しているのだが、なかなか良い解決策が見つからない。
そして、今日も太陽がジリジリと大地を焼き付ける中、カルロはサキと一緒に黄龍軍の指導をしていた。
「前から二番目!ズレているぞ!!」
サキは素振りのタイミングが遅れている兵士に注意を入れる。
カルロは隣に立っているが余程のことがない限り、口も出さないし、動かない。――――石像か!?と突っ込みたくなるが、上司の機嫌を損ねたら面倒なので我慢する。
「殿下、トレーニングは続けていますか?」
「ああ、当然だ」
「女神と?」
「余計なことを訓練中に言うな」
少し前、ブカスト王国第三王子カルロに恋人が出来た。部下のサキの知る限り、上司にとって初めての恋人だ。今まで女性を保護することはあっても一切、手を出したりしなかった男が、恋人サンディーにはメロメロなのである。部下としては堅物の上司を揶揄うネタが出来て、とても愉快な気分だ。
「こんにちは~~~!カルロ~、サキちゃ~ん、黄龍軍のみんな~ぁ!!」
可愛い声と共に空から女神が降って来た。天真爛漫という言葉がピッタリの女神は隣国ソベルナ王国の大魔女様なのである。
「サキ、少し席を外す」
「はーい、ごゆっくり~」
「何が、ごゆっくりだ。私は彼女と仕事の話を・・・」
上司がお小言モードに切り替わったので、サキは女神に丸投げする。
「サンディーさん!早く殿下を連れて行って下さーい。三日も会えなかったって拗ねていまーす!!」
「あんりゃま!!カルロ~!!ごめんね~~!!愛してるよ~ぉ」
サンディーは周りの目も気にせず、カルロに飛びついて、ギュッと抱き付いた。
――――黄龍軍の素振りは上司の色恋に気を取られて、ガタガタになってしまう。
「お前達、これしきの事で気を抜くではない!!」
カルロは怒号を飛ばす。しかし、上司はその腕に愛しい恋人を抱えているのだ。
説得力ゼロで、兵士たちは困惑してしまう。
「カルロ、邪魔しちゃってごめんねぇ~」
サンディーは彼に謝る。
「いや、いつ、いかなる時でも、軍人は簡単に動揺してはならない。これは私の指導不足が原因だ。すまないが喝を入れて来る。小一時間ほど待ってくれないか?」
「えっ、カルロが直接みんなを指導しちゃうのぉ!?キャー!!見たい!!見たーい!!」
兵士たちは突然、風向きが変わって息を呑む。灼熱を浴びているのに、冷気を感じるのは気のせいだろうか・・・。
サキは上司を煽り過ぎたと天を仰ぐ。
「よし、全員かかって来い!!」
次の瞬間、黄龍軍の兵士たちは一斉にカルロへ向かって走り出す。
黄龍軍では、カルロの命令に従わなかった者は、即マーカスの軍に送られるというルールがある。
マーカスの軍は貴族の子息が多い赤龍軍だ。そこへ、国で一番強いと言われている黄龍軍から左遷されてしまったら、屈辱でしかない。
――――だから、カルロの命令は絶対なのである。
また、この不定期開催カルロ対黄龍軍は、上司に一太刀でも浴びせられたら、全員に金一封という特典付きだ。
先ほどまでの緩い素振りは何だったのかというくらい、兵士たちは真剣な面持ちでカルロに斬り掛かって行った。
♢♢♢♢♢♢♢
黄龍軍はカルロに叩きのめされ、明日の訓練は休息日となった。
サンディーは午前中にマクスとキャロルから新たなミッションを言い渡されたと彼に伝える。
「――――御父上か・・・。是非、お会いして挨拶をしなければ・・・・」
「いやいやいや、カルロぉ。そこはあまり重要じゃないからね~。それよりもブカスト王国の砂漠化の方を早く解決しようよぉ!!」
「そうは言っても、会えないと思っていた方が現れたのだ。このチャンスを生かさなければ・・・」
「は?アタシの父に会いたかったって言うのぉ!?」
サンディーはカルロの頬を「嘘つき~」と、横に引っ張った。
「嘘ではない。そなたの父上には前から会ってみたかったのだ。出来れば母上にも」
「ん~、もう!!何、カルロ、カッコ良過ぎる~!!」
カルロは時を超えて、この時代に復活したサンディーの両親と会う機会があるのなら、是非、会ってみたいと本気で思っている。それは挨拶をしたいということだけではない。――――まだ、確信がないので今は口に出せないが・・・。
「それでね、アタシはしばらく忙しくなるから、会う機会が減っちゃうかも知れないのぉ!」
「ブカストのために動くと言うのなら、俺も手伝う。それなら・・・」
カルロはサンディーを抱き寄せて、言葉の続きを彼女の耳元へ囁いた。
「――――ずっと一緒に居れるだろ」
「ぎゃー!!!攻撃力高すぎん!?わ~、胸がギュン、ギュウ~ンだわ~~ぁ!!」
サンディは彼の腕の中で悶える。
カルロは笑みを浮かべて、もう一度、彼女の耳元で囁く。
「幾らでも、惚れてくれ」
「ぎゃ~~~~~ぁ!!」
サンディーの悲鳴は宮殿中に響き渡った・・・。
――――この時のことを部下から散々イジられたカルロは、後日、サンディーに、二人で話をする時は防音の魔法を掛けておいて欲しいとお願いしたのだった。
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