1 霊廟 1
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
霊廟の中はひんやりとしていた。これはきっと岩造りでしっかりと断熱されているからだ。決して、お化けがいるからではない!!
キャロルはお化けが大っ嫌いだ。
今、彼女はマクスに抱っこ(縦抱き)されている。初めて魔塔に中に入った時のように・・・。そして、当然、目も瞑っている。
――――不意にキャロルは頬を撫でるような風を感じた。彼女はギューッとマクスの首に回している手に力を込める。
「キャロル、どうした?」
彼女の耳元へマクスは優しく囁きかけた。どこまでも好きな女に甘い男である。
「あのね、風が・・・。ああ、もう口に出すのも怖いわ!マクス、祭壇はまだ先なの?」
キャロルは堂々と駄々を言う。そんなわがままも可愛いと感じてしまうのだから、恋心とは怖いものだ。
――――そもそも、何故、このふたりがここへ来たのかというと、それは王家の御先祖様に結婚の報告をするためである。
ソベルナ王国の王族が結婚する時は、決まった手順に則って儀式を終えなければならない。
まず一つ目の儀式は結婚する時に霊廟の奥にある祭壇へお伺いを立てるというものだ。そこでご先祖様に承認されると夫婦の紋章が決まる。この時、誰がどういう手順で紋章を決めているのかは分からない。ただ、その件に触れるのはタブーとされているため、過去の王も暴こうとはした者は居なかった。
何故なら、ソベルナ王家の子孫は皆、子の霊廟を作った初代国王アレックスを尊敬しているからである。アレックスはどこからかこの大陸にやって来て、大陸の覇者ブカスト王国からこの地を奪いソベルナ王国を建国した。
現代まで、力こそ正義というブカスト王国の建国理念は変わっておらず、ソベルナ王国の緩い統治とは相まみえない状況が長年続いていた。
――――ただ、ソベルナ王国は過去の過ちから、魔法に関してだけは緩くないのだが・・・。
しかし、キャロルの誘拐事件で知り合ったブカスト王国の双子の皇子マーカス、カルロとの友情を深めていくうちに二国の関係も少しずつ変わってきている。
きっと、マクスが国王になる頃には両国の関係は良くなっているはずだ。
そして、二つ目の儀式は、結婚式を終えたら聖堂でご先祖様に挨拶をしなければならないというものだ。
キャロルは前回やんごとなき理由(誘拐されていた)で、王家の御先祖様に結婚の挨拶が出来なかった。だから、今回マクスと一緒にここへ来れたことはとても嬉しい。ただ、こんなに怖い場所だとは思っていなかったのだ。
予想外にメルヘンチックだった魔塔に言った時もビビリ倒して、マクスに抱っこして貰ったが、今回はそれに輪をかけて、冷気の漂うような雰囲気とあり得ないくらいの広さで、心臓がバクバク言っている。
さっきからマクスがずっと歩いているのに、まだ霊廟に辿り着かない。
「キャロル、長い廊下の左右には扉が並んでいる。この扉の先には歴代の王と妃が眠っているんだ」
「――――――そ、そうなのね・・・」
キャロルの声は震えていた。マクスはどうしたら彼女の恐怖感を減らせるのだろうと考える。
「歴代の王も王妃も既に死んでいる。だから、起き上がって出て来たりはしない」
「ギャー!!何でそういうことを言うの!!」
火に油という言葉がピッタリだった。マクスの話を聞いて、キャロルは死者が起き上がって来るシーンを想像してしまったのである。キャロルの恐怖心はピークを迎えた。マクスの肩をギューッと掴んで、彼の胸に顔を埋める。
不謹慎ながら、その様子が愛らしくてマクスはキャロルをギュ~ッと抱き締めたくなった。
――――今している縦抱きではなく、腕の中に収めたいのだ。ただ、この状況でそれは難しい。マクスは悪知恵を働かせて、キャロルを自分の目線まで少し持ち上げると、彼女の頬へチュッと口づけをした。
「なっ!!マクス!!」
驚いたキャロルは咄嗟にパッと目を開いてしまう。
「んー、もう!!怖いって言っているのに!どうして余計なことをするの!?」
キャロルは頬を膨らませて、マクスをジッと見据える。――――周りを見ようとしないところが可愛い。
「分かったから、目は閉じておけ」
「もう、変なことをしないでよ!」
「はいはい」
マクスはキャロルを宥めて、更に奥へと歩いて行く。
★★★★★★
最奥にある聖堂へ到着した。
ここはいつも明かりが灯されているのだが、どうやって管理しているのかは不明だ。よくよく考えなくとも、ソベルナ王家には謎が多い。しかし、気にしたら負けのような気がする。
マクスは祭壇の前でキャロルを下ろした。
「祭壇に到着した。もう目を開けても大丈夫だ」
キャロルは恐る恐る瞼を上げて・・・。
「うっ、眩しい・・・」
顰め顔をしていてもキャロルは可愛い。マクスはつい顔が緩んでしまう。
「さぁ、結婚の報告をしよう」
「うん」
キャロルとマクスは祭壇の前に並んだ。
そして、ふたりは祭壇の上にある玉へ、手を重ねて置いた。
「よし、魔力をこれに流すんだ」
マクスの指示通り、キャロルも一緒に玉へ魔力を注ぐ。すると、祭壇の後ろにある蝋燭へ紫色の炎が灯った。
「では、儀式を始めよう。私の名はマクシミリアン・K・ソベルナ。そして、彼女は私と生涯を共にするキャロライン・リューデンハイム・ソベルナだ。今日は結婚の報告でここへ来た。いにしえの王よ。承認を・・・」
ガタン!ガタッ・・・、ガン!!
マクスが話している途中で。祭壇の後ろから大きな音が聞こえてくる。キャロルは心臓が跳ねた。――――マクスはサンディーと初めて会った時に感じたような・・・、何かロクでもないことが起こるような予感がした。
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