サキとサマンサの微妙な関係
このお話は番外編です。
本編読了後にお楽しみくださいませ!!
どうぞ最後までお付き合いください!!
ブカスト王国には王国軍、赤龍軍、青龍軍、黄龍軍の四つの軍があり、その中でも最も強いのは第三王子カルロの率いる黄龍軍である。
強い理由は明白。やる気のある者を出自に関係なく採用するからだ。
現在、黄龍軍の指揮官を務めているサキの一家は、とある事情でソベルナ王国から移住して来た。他の軍では採用試験を受ける資格さえない移民だが、黄龍軍はやる気さえあれば面倒を見てくれる。逆に才能があっても、家柄が良くても、やる気のない者は入れない。この方針を定めた上司カルロのことをサキは尊敬しているし、忠誠も誓っている。
しかし、この男は・・・・。
「サキさん、残念ですが、もう主のことは諦めた方がいいですよ。ええ、こればかりはどうしようもないですよね~。仕方がないから、僕が慰めてあげましょうか?」
サマンサは回りくどい言い方をして、確信を突くようなことは言わない。だが、大方予想はつく。彼はサキがカルロのことを好きだと思っているのである。だが、それは大きな勘違いだ。主が誰を好きだろうとサキには関係ない。この気持ちは忠誠心であって、色恋ではないのだから。
それにサキを慰めてあげるという彼の一言は余計だ。頭脳派のサマンサはサキの好みではない。彼女の好みは細マッチョな体形で美しい顔のマーカス王子殿下なのである。
「サマンサ、私のことをバカにしているのなら、拳でお仕置きをしてあげようか?」
「いえいえ、それは遠慮しておきます。サキさん、その様子なら昨夜、殿下がお部屋に女性を連れ込んだことをご存じではないということでしょうか?」
「はぁ~?何それ!?本当に???」
サキは動揺した。今までカルロは自身の妃が大勢暮らしているハレムからさえ、誰も閨に呼んだことがないほどの堅物だ。そんな上司が私室へ女性を連れ込んだ??しかし、――――あの御方は少し人が良過ぎるところがある。もし、変な女に引っ掛かっているのなら一言、進言するのが臣下としての務めではないだろうか・・・。
サマンサはサキが色々と考えている様子を、ニヤニヤしながら眺めている。
「サキさん、相手のことが気になるからといって今、突入したら、真っ最中かも知れませんから止めておいた方がいいですよ」
「―――――真っ最中!?」
「ええ、秘め事の真っ最中です。殿下から確実に嫌がられますよ~。場合によっては、クビにされてしまうかもしれませんね」
―――――こいつデリカシーが無いなとサキはサマンサをジト目で見た。しかし、サマンサは動じない。
「後で使用人たちに聞いてみたらいいですよ。どんな女性なのか。あの鉄壁の殿下を籠絡した女性ですからね・・・」
「―――――、そうね・・・」
実際のところ、カルロとサンディーは同じベッドで寝てはいたが、色事もなくスヤスヤと仲良く寝ていただけだった。だが、それを知らない側近と使用人たちは一晩中、ああでもない、こうでもないと色めき立っていたのである。そこへサキが出勤して来たため、サマンサは真面目な彼女を揶揄っているのだ。
「ですが、いきなりお泊りですからね。普通の御方かどうか・・・。サキさん、やはり相手の女性がどんな方なのか見て来てもらえませんか?僕は男なので、女性の居る部屋へは踏み込めませんから・・・」
「確かに相手がどういう女性なのかは確認した方がいいかも知れない。場合によっては・・・」
サキは腕を組んで険しい表情を浮かべる。サマンサは面白いことが起こりそうでワクワクしてしまう。
――――そこへ、一人の侍女がやって来た。彼女はサマンサにコソコソと何かを報告し、彼はそれに頷く。話が終わると侍女を待たせたまま、サマンサはサキに話し掛ける。
「サキさん、殿下が女性用の洗面具を用意して持ってくるようにと指示したそうですよ。良かったら侍女と一緒に様子・・・」
サマンサが話している途中で、サキは居ても立っても居られなくなって駆け出した。そして、勢いづいたままカルロの私室へ踏み込んだ。
激怒する上司を見て、大失敗したと気付く。彼のお相手はとてつもない大物だったのである。
隣国ソベルナ王国の大魔法使いのサンディーは絶世の美女という言葉がぴったりな女性だった。また圧倒的な存在感と柔らかな雰囲気を併せ持ち、初めて会ったサキを激怒するカルロから救ってくれた。礼を欠いた行動をしたサキが悪いにも関わらず・・・。
彼女以上に上司とお似合いの相手は容姿、身分、能力のどれを取っても他に居ないだろう。サマンサの下世話な話にのせられてしまった己がバカだった。
―――――――
――――サキはあの日のことを思い返すたび、自分に腹が立つ。サマンサは信用してはならないと分かっていたのに!!!
「サキさん、今夜空いています?美味しい肉料理の店が出来たらしくて~!!」
「―――――、行く・・・」
「では、黄龍軍の人たちも誘って一緒に行きましょう!!閣下、お会計よろしくお願いいたします!!」
「・・・・・」
――――今日もサキは簡単にサマンサの罠へハマってしまうのだった・・・。
サマンサは真面目で一本気なサキをつい揶揄ってしまいます。黄龍軍の部下たちはこの二人のやり取りをいつもヒヤヒヤしながら見ています。
サキがご機嫌斜めになると自分たちへ火の粉が降りかかるからです。
そんな軽薄男、サマンサにお灸を据えることが出来るのはカルロだけです。
カルロは怒ると怖いのです。それに実はとても強いのですが、まだ物語ではその辺にあまり触れていません。
いつかその辺のお話もお届けしたいと思っています。
最後まで読んで下さりありがとうございました!!
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