宮廷園芸部責任者エヴァンスは王女からの無茶振りに苦悩する
このお話は番外編です。本編をお読みになられてからお楽しみくださいませ!!
エリザベート王女殿下から王太子殿下の散髪を命じられた時、目の前が真っ暗になった。尊い御方の御髪を庭師の私が切って良いはずがない。何度か丁重にお断りしたのだが、意思が強い王女殿下はなかなか折れてくれなかった。
そこへ運良くというべきか、悪くというべきか・・・、国王陛下と王妃殿下が通りかかったのである。王女殿下から事情を聞いた国王陛下は私にこう言った。
「エヴァンス、王太子の散髪を命じる。これは王命である」
陛下、王命をこんなことに使われてよいのですか?と心の中でツッコミを入れてしまう。しかし、これがソベルナ王家のノリなのだ。
「はっ、謹んでお受けいたします」
こう答えるしか出来ないことが悔しい。私は木を切るのが仕事なのに・・・。正直なところ人間の髪を切ったことは一度も無い。さて、どうしたものか・・・。
「エヴァンス、そんなに心配しなくても貴方の腕は一流よ。お兄様を木だと思えばいいのよ。遠くから見ても近くから見ても美しく切れば大丈夫よ」
王女殿下は楽しそうに言う。しかし、私の胸中は複雑だった。木には目も鼻も口も無いのである。王太子殿下を木と思えと言われてもそう簡単なものではないのだ。
「エヴァンス、そう思い悩むことはない。きっとはさみを持って切り始めたら、自然と手が導いてくれるだろう」
国王陛下はエヴァンスの手を人差し指でトントンと叩く。すると、ピリッと痺れるような感覚が手の甲に走った。
「陛下、これは・・・」
「ああ、簡単な魔法を掛けておいた。これでもうそなたが失敗することはない。存分にはさみを振るってくるがよい」
「―――――――分かりました」
―――――――
この後、彼はマクシミリアン王太子の髪をカットした。
その髪型はパレードでお披露目されると直ぐに王都で人気の髪型となる。
しかし、エヴァンスがカットしたという事実は本人の希望により隠されることになった。
――――ちなみに国王がエヴァンスに失敗しない魔法を掛けたというのは真っ赤な嘘である。
今回はキャロルから絶賛されたマクスの髪型を作りあげたエヴァンスのお話でした。
(果たして需要はあるのか?と甚だ疑問ではありますがw)
ソベルナ王家はノリが良いので多少の悪ふざけには乗ってしまうところがあるようです。
そして大体、マクスが被害に合います。
実はマクスが一番、きちんとしているのかも知れないと作者は思っています。
最後までお読み下さりありがとうございました!!