103 甘酸っぱい初恋(最終話)
楽しい物語になるよう心がけています。
誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。
夜会では一番身分の高い者がラストに入場するという決まりがある。
だけど、今回は私達が主役なので、先に陛下たちが入場しますと、先日の打ち合わせでは聞いていたのだけど、、、。
「お前達、、、」
マクスが絶句している。
「まあ、マクス。祝い事なのだから、許してあげなさい」
陛下は、マクスを宥めようとしている。
王妃様は、にこやかに状況を見守っていた。
「マクス殿、申し訳ない。彼女をエスコートする者が居ないと聞いたので押し掛けてしまった」
「違うの!アタシが、無理矢理連れて来たのよぉ。だって、ダンスとか申し込まれるのが、イヤだからー!!」
相変わらず、お互いを庇い合う二人がむず痒い。
もしや、私達も他の人から、そう思われていたりする?
、、、うん、思われていそうだ。
何が起こっているのかと言えば、国王陛下ご夫妻の前に入場する予定だったサンディーが、自身のエスコート役にカルロ殿下を、突然、連れて来たのだ。
そこで、陛下が悩み出した。
陛下の懸念は、ブカスト王国の王子殿下を先に出し、自分たちがゾロゾロと後から出るのは、他国の賓客に印象が悪いのではないかというものだった。
「一層の事、入場の順番を変えた方が良いのではないか?」と、陛下が、マクスに提案したところである。
「お前、こんな勝手なことをしたら、マーカスに怒られるぞ」
マクスは、カルロ殿下に言った。
「いや、怒られるくらいは覚悟しておる」
全くブレず、堂々と言い返した、カルロ殿下。
相変わらず、肝が据わっている。
「では、こうしよう。私と王妃が出た後に、サンディーとカルロ殿が入場する。そして、最後は予定通り、マクスとキャロル嬢だ。サンディーたちが入場する前に、私から来場している賓客に、カルロ殿のことを紹介しよう。それならば、マーカス殿から君が怒られることもないだろう」
陛下の人の良さをヒシヒシと感じるお言葉、、、。
「父上、おれ達の結婚披露パーティーなのに、、、」
マクスがボヤく。
「大丈夫だ。あれだけ派手なパレードをしたのだから、皆、お前たちの事を忘れたりはしない」
「陛下、どなたかにパレードの事をお聞きになられたのですか?」
私は陛下に質問した。
「ほら、コレを」
陛下は、ポケットに手を入れて、中から取り出した物を私達に見せる。
「ああああ!!」
私とマクスの声が揃った。
カルロ殿下も、陛下の手のひらを横から覗き込む。
「これは記念品か?」
カルロ殿下が呟いた。
サンディーさんが、カルロ殿下の袖を引き、耳元へ何かを伝えている。
多分、パレードの話をしているのだろう。
「父上、どうしてそれを、、、」
マクスが尋ねる。
「それは、私も参加していたからね」
フフフと陛下が笑う。
王妃様も私の横に来て、自身の胸元を指差した。
あー!!ブローチが付いている。
「えっ、母上も!?」
マクスは驚いていた。
「久しぶりに二人で街に降りた。皆が歓喜に満ちていて、いいパレードだった。そして、二人の仲睦まじい姿が何よりも良かったよ」
陛下は王妃様と視線を合わせると、二人で笑みを浮かべた。
「マクス、サンディーは、今日、とても頑張ってくれたのですから、恋人の同伴くらい許してあげなさい」
王妃様が、マクスにピシャっと言った。
「ええ、確かにお世話になりましたので、それを辞めろとは言いません。ただ、母上に一言、伝えておきたいのですが、キャロルを誘拐しようとしたのは、コイツですからね」
マクスは、カルロ殿下を指差した。
まさかこの場で、その話が出るなんて、カルロ殿下も思ってなかっただろう。
私もマクスの失言と言っていい発言に驚いた。
「マ、マクス殿、その件は、、、。王妃様、私は以前、ランディ・ボルドーの諫言に乗せられ、とても愚かな事をしました。その折、ソベルナ王国へ多大なるご迷惑をおかけ致しましたこと、お詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした」
カルロ殿下は、国王陛下ご夫妻に深々と礼をした。
「カルロ殿下、事情は陛下から聞いていますから、大丈夫です。マクス、この場でそんな意地悪を言うなんて!恥ずかしいわ」
王妃様はカルロ殿下ではなく、マクスの態度を叱った。
「マクス、事件解決や子供達の保護など、カルロ殿はとても尽力してくれている。蒸し返すではない」
陛下からもマクスは注意を受けた。
マクス、四面楚歌だよ。
「、、、すみません。言い過ぎました。カルロ殿、すまない」
マクスは更に反論でもするのかと思いきや、素直に反省し、カルロ殿下に謝った。
「いや、私の罪は消えぬ。これからは両国の力になれるように努力したいと思う」
カルロ殿下は、マクスから嫌な事を言われても、余り気にしていないようで安心した。
私は、こっそりと手を伸ばして、マクスの手を握り締めた。。
意地悪はダメだけど、素直に謝ったことは褒めてあげたい。
「カルロ殿、申し訳ないが、我が国の大魔法使いサンディーのエスコートを宜しく頼む」
結局、陛下が話を纏めて、その場は締まった。
いよいよ、本番、まず先に陛下と王妃様が入場した。
次はサンディーさんと、カルロ殿下だ。
会場の様子を、隠し窓から四人で窺う。
「本日は、我が国の王太子結婚披露パーティーにお越しいただきありがとうございます。次は、我が国の大魔法使いサンディーと、そのパートナーであるブカスト王国の第三王子カルロ殿が入場します。先日、我が国と隣国ブカスト王国は、互いに長年の確執を悔い改め、友好国として新たな一歩を踏み出しました。この二人が、両国の良き架け橋となってくれると期待しております。大きな拍手でお迎え下さい」
陛下の挨拶が終わった。
サンディーさんとカルロ殿下はスタンバイしている。
扉が開かれると、大きな拍手が湧き起こった。
二人は優雅に会場へ入って行く。
「どちらも流石、王族、、、」
ボソっと呟く。
すると、マクスが私の耳元で囁く。
「多分、カルロはかなり緊張しているぞ」
「そうなの?」
「ああ、サンディーのためだと、あいつ頑張っているんだろうな。おれ、何であんな意地悪を言ってしまったんだろう。最悪だ、、、」
マクスは項垂れる。
えええ、このタイミングで闇落ちされると私が困るのだけど。
「マクスは、私のために嫌なことを言ってくれたのでしょう?大丈夫よ。あの二人が先に出ても、私達が今日の主役なのは変わらないのだから」
その時、「うぉー!!」と、会場から大きな歓声が上がった。
あ、主役取られたかも知れない。
再び、二人で会場の様子を、隠し窓から窺う。
「さぁー!次は王太子ご夫妻の登場だよぉー!!まーちゃんの甘酸っぱい初恋が実りましたぁ。皆さん温かい拍手でお迎えしてねー!!」
サンディーさんは両手をブンブン振りながら、会場の皆様に話しかけていた。
「アイツ、余計な事を言ってやがる!」
マスクの闇落ちは、怒りのパワーで回避出来た模様。
良かった、、、。
私は安定の緊張モード。
二人で、扉の前に立つ。
「キャロル」
いつ扉が開くのかとドキドキしている最中に、マクスが話しかけて来た。
見上げると、私の顎にマクスが手を掛けた、これだと上を向いたまま動けない。
ま、まさか!?
公開キスでもするつもり!?
イヤ、そんなの無理!!
「パンッ!!」
私がマクスの手を勢いよく振り払う音が響き渡る。
いつの間にか、扉が開いていた!!
最悪のタイミングなのだけどぉ。
えーーーー、嘘よね?
あー、コレはどうしたらいい!?
「マクスぅー」
思わず、マクスを見上げて縋る。
怒っているかなと思ったら、優しい笑みを返された。
「やり直す?」
マクスは私に問う。
手を振り解いて、微妙に喧嘩していると思われるより、バカップルっぽい方がいい気がして来た。
「うん、やり直す」
マクスは、流れるような仕草で、私の腰に手を回し、反対の手で、私の顎を持ち上げる。
私はマクスを見つめながら、ゆっくりと瞼を閉じた。
ふんわりと温かい感触がくる。
会場から、大きな歓声が上がった。
ゆっくりと唇が離れていく。
瞼を上げて、間近にあるマクスの瞳を覗き込むと、私が映っていた。
そのまま、ギューっと抱きしめ合う。
「もぉー!まーちゃん、キャロちゃん!!それは後にして、降りて来てー!!」
サンディーの急かす声がしたけど、二人で無視した。
「キャロル、愛してるよ」
「私も愛しているわ」
愛を囁き合い、もう一度キスをした。
「甘酸っぱい初恋が叶った」
「おめでとう!でもね、私もなの。初恋が叶ったのよ」
マクスは再びギューっと、私を抱き締める。
私は、幸せな気分で胸が一杯になった。
「『天使カード』を作ってくれてありがとう、キャロル」
耳元へ思いがけない事を言われて驚く。
でも、確かにアレがキッカケだったよね。
「どういたしまして」
私は顔を上げて、満面の笑みで、マクスに答えた。
会場の賓客は、中々降りてこない二人を見守っていた。
仲睦まじい様子の二人は、何かを笑顔で囁き合っている。
しばらくすると、誰かが拍手が始めた。
一人、また二人と拍手をする者が増え、いつの間にか会場は大きな拍手の渦に包まれていった。
後日、リューデンハイム領の恋人の丘に、PR看板が増えた。
「王太子殿下の初恋、100%叶いました!!」
最後まで読んで下さりありがとうございます。
103話を持って、『その願い100%叶います!』の第一部は完結です。
少しお休みしてから、第二部を必ず!書きますので、どうぞ楽しみにしておいてください。
評価、感想お待ちしています!!
第二部の配信予定など詳しい事が決まりましたら、
活動報告などでお知らせいたしますので、
ブックマークもどうぞ宜しくお願いいたします!!