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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)
102/127

102 存在感

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 歌詞を聞きながら、色々と考えてみても何も浮かばない。


国や家族を懐かしく思う気持ちと、今、自分はこの国を興し、高い志を持って生きていくと言うような内容だった。


言うまでもなく、国歌は子供の頃から知っている。


今も昔も、特に違和感を持ったことはない。


国歌の演奏が終わり、わたしはマクスの袖を引く。


「どうした?」


「あのね、何が意味深なのかが分からないの」


周りには気付かれないよう、穏やかな笑顔で語り合う。


「そうか、また詳しいことは今度にしよう。そろそろ出発の時間だ」


マクスが視線で教えてくれた先にいる楽団員達は、一度下ろしていた楽器を再び構えていた。


指揮者が指揮棒を振ると、迫力のあるファンファーレが鳴り響く。


同時に馬車がゆっくりと動き始め、続いて軽やかな曲の演奏が始まった。


「さあ、出発だ」


マクスは私の腰に手を回して、ギュッと抱き寄せた。


突然だったので、グラっとした。


「マクス!」


「これくらい近付いていたら、緊張しないだろう?」


全く悪びれることも無く、いい笑顔で返して来た。


確かに落ち着くので、そのままにしておこう。




 大通りを進み始めると、先日マクスと行ったカフェが、、、。


あれ!?見えない。


「人が多過ぎて、あのカフェの場所も分からないわね」


「ああ、かなりの人出だ。こんなにパレードって、賑やかなんだな」


マクスは沿道の人たちに手を振りながら、私の質問に答える。



そこで少し大きな声が上がった。


「きゃー!!」


「浮いてる!?」


「えええ!?あれは女の子?」


彼らは空を指差している。


沿道の人たちが一斉に空を見上げる。


私達も指差している方を見た。


あ、あれは、、、。


「ヤッホー!!アタシは、この国の大魔法使いサンディーだよぉー。まーちゃん、キャロちゃん、結婚おめでとう!!」


沿道の建物よりも少し上で、ぷかぷかと浮いているのはサンディーさんだった。


どうやったら、あんなに声が通るのだろう?


叫んでいる訳でもないのに、その声はしっかりと聞こえた。


 ぷかぷかと浮かんでいるサンディーさん、軽やかな黒い生地に金糸の細かな刺繍がはいったローブを纏い、長い銀髪はさらさらと風に靡いている。


そのお顔も姿も相変わらず美しかった。



 

 突然“大魔法使いサンディー”が降臨したことで、辺りは騒然となる。


気を利かせたのか、馬車も停止した。


「あいつ、何やってんだよ」


マクスがボヤく。


サンディーさんは両手を広げた。


「さあ、これはアタシからのプレゼントだよぉ!!みんなにあげるから、押したりしないでねぇー」


彼女が言い終えると同時に、何かが大量に舞い落ちてくる。


人々は頭の上に手を伸ばし、その何かを取ろうとした。


ふわふわと舞いながら、一人一人の手にサンディーのプレゼントが届く。


受け取った者達は、そのプレゼントを食い入るように見ている。


私とマクスのところへも、ユラユラと一歩遅れてプレゼントが舞い降りて来た。


手を伸ばして受け取ると、私とマクスの顔が描かれたブローチだった。


金色で楕円形のブローチは、アイリスの紋様で縁取られ、中心には私達の肖像画、裏には留めるためのピンと今日の日付が刻印されていた。


「あ、これ、凄くない!?」


「ああ、俺の髪型が、、、」


肖像画のマクスは、さっき、イメチェンしたばかりの新しい髪型になっている。


「まーちゃん!突然、髪型変えるからビックリしたわぁ!!」


上から、サンディーさんが叫んだ。


沿道の人たちの視線がマクスヘ集まる。


「王太子殿下、ハンサムー!」


「似合ってるぞー」


「素敵ー」など、褒める声が沢山掛かる。


「まーちゃんカッコいい!」と言う声が、何処からか聞こえてくると皆が笑った。


その後は、まーちゃんと呼ぶ声が、彼方此方から聞こえて来る。


マクスは様々な声援にも、余裕を持って、素敵な笑顔を返していた。


「キャロちゃん、とても綺麗よー!!ハイ、しっかり笑って頑張ってねー!!」


サンディーさんは手を振りながら、私に向かって言った。


今度は、私に視線が集まる。


「キャロちゃーん!可愛い」


「王太子妃殿下ー!」


「おめでとー!!」


「キャロちゃーん」


「キャロちゃん、ガンバレー!」


何だか、今後、王国民の皆さんから、キャロちゃんと呼ばれそうな気がする。


最近のキャロはダメだ!とか言われない様にしなきゃ。


いや、ダメだ!って何よ!?


変な想像をしていたら、自然に笑えた。


「それじゃあ、皆さん、またねー」


サンディーさんが、手を振ると沿道の人々もこぞって笑顔で手を振り返す。


そして、彼女の姿が最高のタイミングで、スッと消えた。


「うわー!!」


「消えたー!?」


「大魔法使いさまー!!」


大きな歓声が上がった。


スゴイ!!


元女王だけあって、人心掌握が上手い。


「これ、アイツが作ったのか」


マクスは、ブローチを手のひらに置いて、じーっと眺めながら言った。


「即座に作った可能性があるわよね?魔法って何でも出来るのね」


「・・・そうだな」


馬車はゆっくりと動き出す。


沿道の人々は、受け取ったブローチを笑顔で眺めている。


私はその姿を見て、とても温かな気持ちになった。


沿道の人々と目が合うと、最初はビクビクしていたのに、段々と気持ちが通じてくるような感覚がして、気付けば、笑顔で手を振っていた。



また、サンディーさんは、一度だけではなく、その後も新たな通りに馬車が入る度、空から現れては、ブローチを配り続けた。


きっと、パレードを見に来た全ての人にブローチが渡るよう配慮したのだろう。


そして、この行動で、“ソベルナ王国の大魔法使いサンディー”の存在を、王国民は事実として認識した。



 パレードは最初の大通りへと戻って来た。


後は、ここを真っ直ぐ進んで、王宮へと戻るだけだ。


「マクス、こんなにパレードが楽しいなんて、思わなかったわ!!」


「ああ、おれも楽しい」


「沿道の皆様も来てくれてありがとう!!」


二人で、王国民へ向かって手を振る。


最初から最後まで、沿道には多くの人が溢れていた。


この風景は一生忘れられない。


マクスの横顔を見た後、美しい青空を仰ぐ。


今は消えたけど、サンディーさんが笑顔で手を振っている姿が、私の脳裏にはしっかりと焼き付いていた。




 無事に王宮へ戻り、マクスがボヤいた。


「サンディーに負けた。余りキス出来なかった」


そこで、ハタと気付いた。


マクスとサンディーは、私が緊張して失敗しない様にしてくれていたのだと。


「マクス、パレードとっても楽しかったわ。ありがとう」


マクスは、突然のお礼にビックリしている。


「緊張しないようにしてくれたでしょ?」


「ああ、そんなに大した事はしてないから、気にしなくていい」


珍しくツンと言い返して来た。


サンディーさんへの対抗意識?


「サンディーさんが大魔法使いって、すぐに浸透しそうね」


「ああ、国民のツボが分かっていそうだからな」


マクスの返事が冷たい。


「元女王なのだから、私達が敵わなくて当たり前よ」


「でも、負けたくない」


ブスっとしているマクスが可笑しくて、とうとう、笑ってしまった。


マクスが、ジト目で私をみる。


「私は勝ったとか負けたとか言わない、いつものマクスが好きよ」


私の言葉でハッとしたのか、マクスはジト目を辞めて、麗しい表情に戻った。


その素直なところが大好きよ。


「名残惜しいけど、夜会の準備に行くね」


「えええ、もう?」


「そう、直ぐに戻って来て下さいって言われているのよ」


「昼食は?」


「多分、締め付けられていて余り入らないから、途中で何か摘むくらいだと思う」


「花嫁、過酷過ぎる」


「そうね、でも一生に一度のことだから頑張、、、」


言い終わる前に、ギュッと抱き締められた。


「マクス、衣装がぁ!」


顔を上げて訴える。


「着替えるなら問題ないだろう」


マクスはそのまま、私にキスをした。


軽くない、全然軽くないキスを!!


「んー、、、」


腕を叩いて、訴えても辞めてくれない。


好き勝手に口の中で暴れて、私の思考をグズグスにした。

 

このまま、ベットに行ってコルセットも全部脱ぎ捨てたいと思うくらい、、、。


漸く、唇が離れる。


気が済んだマクスの顔は大惨事になっていた。


隠しポケットからハンカチを出して、マクスの顔を拭う。


口紅がハンカチにベットリと付く。


マクスもポケットから、ハンカチを出して、私の口元を優しく押さえた。


私達は何をやっているのだか、、、。


自然と二人で可笑しくなってきて笑った。


さあ、次は夜会!!


パレードみたいに楽しいことがあります様に。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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