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佐々木勲警部補と事件たち  作者: 渡部遥介
W上野事件
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群馬県警と警視庁

 輾隹キシトリ捜査一課長は大津の殺害を踏まえて大津が関与したとみられる事件についても知るべく群馬県警捜査一課長にファックスを送った。内容としては以下の通りだった。

群馬県警察本部捜査一課長菅原誠博殿


 しっとりとした空気に緑の香りが漂う初夏の候、貴県におかれましては、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

 さて、先日貴殿から連絡があった通り大津翔について幾人かの刑事によって捜査いたしましたが、これといって悪評がないとともに最近見かけたという人はいませんでした。その後の捜査を行いたく思ったところで死体として上野で発見されました。死因は石で殴られたことによる撲殺で現在犯人を逮捕すべく調査中です。それに関しまして群馬県内で発生した事件について知りたいとともに東京都内で発生した事件と群馬県内で発生した事件の関連性について捜査すべきだと考えます。その辺りについてのご意見をお聞きしたいと思います。

 結論が出ましたらご連絡いただけると幸いです。


                 警視庁捜査一課長輾隹徹

このファックスを送ったのであとは群馬県警からの捜査協力の件についての返事を待って人を群馬に派遣する形になるだろう、そう輾隹捜査一課長は思った。

 佐々木刑事や葛西係長は大津の事件について捜査を進めていた。凶器が地面に落ちていた石であったことから計画的な犯行でないのはあからさまなのだが、犯人はそこで何があってそしてどういう経緯があって殺害に至ったのかまだ分からぬことばかりである。二人は犯人よりも大津をキーとして聞き込みをした方がいいのではないかと考え、大津の写真をもって遺体が発見された現場の周辺の聞き込みをした。現場から大体一キロくらいの範囲を聞いて回った。

 その結果として大津の写真を見せても大体の人がそのような人は見かけてないと言った。それはまるで口裏を合わせているかのようだった。本当に一人も見かけていないのだろうか、それとも犯人をかばっているのかそういう二つの可能性が考えられた。未だにほぼ何も掴めていない分、何かを掴む足掛かりにしようと考えて聞き込みをしたのだがそれが逆に謎を深めてしまうという結果になってしまった。やはり怪しい人物を誰かが見ていてくれた方が事件解決の糸口を見いだす一歩なのかもしれない、そう佐々木刑事はこの聞き込みで思わされた気がした。葛西係長は佐々木刑事とは少し考え方が違くまだ諦めてはならない、誰か一人でも見ている人がいるのだろうと少しの可能性に期待を込めていた。

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