被害者の幼少
佐々木刑事の携帯電話が鳴った。ディスプレイには「管理官」と表示されている。「今すぐ帰ってこい。被害者の遺族から電話がかかってきた。警視庁で事件について知っているのはお前だけだからな。」これが管理官からの電話の内容だ。佐々木刑事はすぐに警視庁に向かった。
佐々木刑事が警視庁に戻ると管理官がこっちこっちと手を振っていた。管理官のもとに行くと「これに電話をするんだ。」とメモ用紙を渡してきた。そのメモに記された番号にかけると六十後半くらいの女性が出た。話を聞くと山口の元母の宍戸豊美だという。佐々木刑事は「元母」という部分につまずいたが、話を聞いていると理解した。電話での話は以下の通りだ。
山口健二郎は宍戸家の次男として生まれる。健二郎が七歳の時に親に見捨てられる形で子供に恵まれなかった山口家の養子となる。その後大学まで進み、宍戸家との関係が深い出版社に入る。出版社では旅行雑誌編集部に配属される。旅行をしながら魅力を伝える編集者として活躍する。時折宍戸家には連絡を入れる。健二郎の死亡はニュースで知る。
話を聞いている限りでは養子になったことが今の優しい「山口健二郎」を作り出しているのだと推測できる。被害者に関する情報収集は会社での情報を残してほぼ終わったと言える。