大津情報~大家さん~
輾隹捜査一課長から話をされ、群馬県警からの捜査協力の要請により事件の重要参考人である大津を葛西係長が班長を務める班員で手分けして身辺調査を行っていて佐々木刑事は大津が前に住んでいた場所の近所の人に話を聞きに行っていた。大津が住んでいたのは今から三年近く前で元来人付き合いが良くない大津が近所の人との交流を持ったとは到底考えられない。しかし決めつけてはいけないと佐々木刑事はまず大津が借りていたアパートの大家さんに話を聞くことにした。その大家さんは大津が借りていたアパートの二軒隣に家を構えていた。門の表札の隣にあるチャイムを押して目的の人物を呼んだ。数十秒して門から数十メートル離れた扉から初老の男性が現われた。一歩一歩踏み占めるように歩いて佐々木刑事のいる門のところまでやって来た。もごもごと何か言ったようだったが佐々木刑事の脳はその音を正常に判断することはできなかった。何と言ったのか、佐々木刑事は大家さんに聞き返した。
「何の用でわしを訪ねてきたんじゃ。もうアパートの部屋はいっぱいじゃし、空きが出る予定もない。帰ってくれ。」
家に人が訪ねてくることに対してよく思っていないらしく、声に怒りの色が窺えた。佐々木刑事はどうにか大家さんを落ち着かせようと話をした。
「大家さん、僕は入居希望者ではないんです。以前こちらのアパートに住んでいた人のお話を伺いたいと思ってきたんです。」
佐々木刑事の話を聞いてもなお大家さんの怒りの色は貌から引かなかった。昔入居者に何かがあっていい思いをしていないのかもしれない。佐々木刑事は話を聞きかないとここを離れることはできないためどうしても大家さんに口を割ってもらわないといけない。身分くらいは明かしておいた方がいいのではないかと背広のポケットから警察手帳を取り出して大家さんに見せた。一瞬驚いた表情を見せたのちに少しくらい話をした方が良いのではと思ったのか、協力的な表情を見せた。
「警察じゃったのか、最近記憶が曖昧になっておっての…答えられる範囲で少しは協力してやろうかの。捜査協力しないと罰当たりそうだからな。」
「では何点か伺いたいんですが、三年近く前にこちらのアパートに住んでいた大津翔さんについて聞きたいんですが覚えていらっしゃいますか。」
「三年前…大津翔…あぁ!!あの問題ばかり起こした大津か!!あいつの事なら何年後でも何十年後でもお答えすることができるよ。」
「大津さんは近所の方との付き合いはどうだったんですか。」
「基本的には外に出ていることはなく、自分の部屋にこもっていることが多かったんじゃよ。」
「ではここで過ごしていた間恨まれるようなことはなかった、ということなんですね。それなら問題ばかり起こしたとはどういったことをしたんですか。」
「部屋を無茶苦茶にしてくれたんじゃよ。その部屋は今も修理中じゃよ。」
「捜査協力ありがとうございました。今後またお話を伺うことになるかもしれないですがその時にはお願いします。」
佐々木刑事は大家さんにお礼を言って二軒隣にあるアパートの方へ歩いていった。それは大家さん以外の人の口から大津の情報を得るためだった。




