群馬県警から捜査協力
「群馬県警から捜査協力依頼があったんだ。ある事件の被害者と繋がりから浮かび上がっている唯一の被疑者と思われる人物の本籍地が東京にあるらしくて詳しく調べて欲しいとのことだった。本来なら所轄署に頼むことなんだか住んでいる住所の登録が一週間に一度くらい変わるらしくて都内にはいるとのことだった。これがその人物に関する資料だ。」
警視庁の輾隹捜査一課長から呼ばれた佐々木刑事は群馬県内で起きたある殺人事件の被疑者とされる人物について調べるために資料を受け取った。その資料には顔写真とともに名前や本籍地、現在の住所などが書かれていた。
「捜査一課長、事件に関する詳しい情報は警視庁には入っていないのですか?被疑者とされている人物の情報を掴む上で知っておきたいので…。」
「私も出来れば伝えた上で捜査して欲しいのだが群馬県警の方から事件に関する情報なしで被疑者とされる人物に関する話をされてしまって分からないんだよ。」
佐々木刑事は表情を変えずに軽く礼をして捜査一課長室を出た。部屋で一人になった輾隹捜査一課長に期待の眼差しを向けられたままで…。
佐々木刑事の庁内での主な仕事場である部屋には彼の上司である葛西係長がデスクワークをしていた。先日大きな事件を解決したばかりで葛西係長が指揮をする強行犯第四係には担当している事件がなかったのだ。佐々木刑事は輾隹捜査一課長から受け取った資料を片手に部屋に入り自分のデスクに普段よりは丁寧にしかし端から見ると雑に資料を置いた。その置き方に対して口を出す者は誰一人いないのがその癖が治らない原因を作り出しているのだろう。佐々木刑事はデスクにあるパソコンを立ち上げ警察庁のデータベースで渡された資料に書かれた名前である大津翔と入力してみた。警察庁のデータベースには主に前科歴や補導歴が記載されいるため、前科等がないと該当することがない。どうやら大津はその該当しない方に当てはまるらしい。警察のデータからは情報が掴めないようだと判断した佐々木刑事は現在登録されている住所の場所に行ってみようと思い立ったが、殺人事件の重要参考人であるということしか分からず捜査がどれだけ進んでいるのかも分からない状況で無謀に乗り込んでいくことは妥当ではないと判断した。ではどうするべきなのか、と考えてみると普段事件の被疑者に目星が付いたらその人の近所や同僚、上司から聞き込みをすることが鉄則だと思い直した。しかし一人で調べるとなるといくら時間を要するのか分からないほど必要なのは言わずとも分かる。佐々木刑事は葛西係長に話をして協力してもらうことにした。
「葛西さん、先ほど輾隹捜査一課長に群馬で起こった殺人事件の被疑者とされる人物を調べて欲しいと捜査協力を要請されたことを伝えられました。周辺から探っていきたいんですが、一人では手に負えないと思うのでこの班全員で聞き込みする事できないですか。」
「事件の重要参考人ってことか…今は大きな事件が終わった後で捜査の担当に当分の間は入らないだろうな。よし、班全員で手分けして聞き込もう。」
葛西係長が佐々木刑事と話をするとすぐに葛西係長が班長の班員を全員呼び、佐々木刑事から聞いた内容を伝えて各人の役割を決めた。佐々木刑事の役割は大津が前に住んでいた家の近所への聞き込みだった。役割を聞いてそれぞれが外へ出て散らばっていった。佐々木刑事もその後に続いて外に出て彼の目的地へ向かった。




