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佐々木勲警部補と事件たち  作者: 渡部遥介
白い白鳥殺人事件
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指紋の一致と犯人

 白い白鳥ホールの稽古場の床から出てきたジップロックの毒物反応と指紋を鑑識課に調べてもらい、毒物反応が出たジップロックから予想していた通りの人物の指紋が検出された。次なるステップとして逮捕状が請求され、その翌日に逮捕状が発行された。

 逮捕状が取れたため、被疑者の逮捕が可能になり葛西係長と佐々木刑事は被疑者宅へ向かった。今までの捜査の中で何度か訪問したことのある家だったので迷わずすんなりと行くことができた。佐々木刑事がボタンを押し、チャイムを鳴らした。少しすると返事がして玄関の扉が開いた。中から出てきた人は何の疑いもせず、家に入れてくれた。家の中にはいるとすぐに葛西係長が口を開いた。

「今日お伺いしたのは事件の犯人が分かったというのが理由です。そしてその犯人はあなた、輓馬バンバさんですね。」

そう、ここは輓馬の家なのである。輓馬は葛西係長のその発言に対して顔をしかめる仕草をするわけではなく、どちらかと言えば対抗的な目をした。

「では、私が犯人であるという証拠を見せていただきましょうか。現行犯をのぞいて令状がないと逮捕できないと日本国憲法の第33条に定義されていますからね。」

「まあ、もう令状は出ているのですが、説明しないよりは説明した方がよいでしょうから説明しましょう。」

佐々木刑事が輓馬に負けじと対抗心を燃やして発言した。それを引き取るように葛西係長が続きを話した。

「あなたはどんな理由で驇織タリシキさんを殺害したのかは分かりませんが、彼女の水筒に毒物が混入させて彼女が飲むのを待つのみだった。そのタイミングと舞台に出てくるのが合って舞台上で彼女は死亡しあなたは舞台袖でその様子を見ていた。毒はよく利用するジップロックの中にいくつかに分けて所持していた。毒物を持っていると疑われるとあなたは思い、袋ごとゴミ箱に捨てた。ただ使用して中身が空になった袋は捨てられず、あなたが以前よく使っていた稽古場の床に隠した。先日、私たち警察が調査するとどこかで聞きなぜだか分かりませんが大量のジップロックを用意してそこに毒物を入れたジップロックがあることを分かりにくくした。その時に私たちは気づかず、スルーしてしまった。そして昨日再び稽古場に行き、床を調べてみるとジップロックの内側に毒物反応がするものがひとつだけ発見され、あなたの指紋以外に何も出ませんでした。もちろん手袋痕や指紋をふき取った形跡もね。そういった理由で驇織の事件に関してあなたに逮捕状が出されました。武田さんの事件に関しての逮捕状が出るのも後は時間の問題でしょう。」

葛西係長がすべてを話し終えると、輓馬の対抗的な目はうなだれこれ以上の抵抗は無用であると判断したように見受けられた。椅子から立ち上がりもう良いというような仕草をして葛西係長、佐々木刑事の二人に連れて行かれた。

 数日して事件のことがよく分かってきた。輓馬は驇織がどんどん演技の腕を上げ自分の居場所を脅かしていることに気づき何とか居場所を守るために殺害したらしい。武田の殺害に関しては付けていた手袋の繊維と武田の家に落ちていた少量の繊維が一致し、再逮捕された。やはり驇織の事件に関する口封じであったとのことだった。

 久しぶりに佐々木刑事はプライベートとして白い白鳥ホールに足を運んだ。出迎えてくれたのは嘉実だった。

「無事に事件、解決したぞ。劇団内での殺人だから少し風評被害が起こるかもしれないけど頑張れよ。」

「ああ、劇団全体としてあの事件はなかったものだと思うようにしているんだ。前よりもっといい舞台ができたら呼ぶよ、お前の上司の刑事さんも一緒にね。」

「ありがとう、楽しみにしとくよ。」


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