何がこれで何があれなのか
葛西係長と佐々木刑事は二人が持ってきた情報を共有し、この後の捜査をどのようにすべきか、また今までで得た情報を整理しあとどんな情報が必要なのかなどを二人で考えた。彼らが得た情報は武田と驇識が恋愛関係になっていたことが主でその他に収穫はほぼなかった。どうすればよいのか、その言葉が彼らの頭に浮かび、消えなかった。
そんなときに部屋にある電話が泣き出した。葛西係長が慌てて受話器を取り、電話をかけてきた主と会話を始めた。電話口からは男の人の声が聞こえる。葛西係長と電話口の男の人との会話は互いに二三言喋ってから電話は切れた。葛西係長は電話が終わった後すぐに
「おい、佐々木。今の電話サイバー犯罪対策課の稲葉さんからだった。武田のパソコンを開けることができたとのことだった。だからサイバー犯罪対策課に今から行ってくる。お前もついてくるか。」
と佐々木刑事に声をかけた。佐々木刑事は口を動かすのではなく、首を動かして意思を葛西係長に伝えた。葛西係長も言葉ではなくジェスチャーで行くぞと伝え、部屋のドアを開け照明のスイッチを切った。佐々木刑事は慌てて葛西係長を追って部屋を出た。
サイバー犯罪対策課はコンピュータやディスプレイ、サーバーなど警視庁の中でも屈指の機器がある。稲葉貴弥はその機器の中にひっそりと隠れて作業をしていた。そのため葛西係長と佐々木刑事は彼を見つけるのに苦労をした。ようやくという思いで見つけると精密機器が岩のようにあることなど頭のどこにもなく、貴也のもとへと駆けていった。貴也は一言も喋ることなく、武田のパソコンを手渡してきた。あまり人と話すことが得意ではないためであるだろうと思おうと佐々木刑事は思ったが、“先ほどの葛西係長の電話では何の問題もなく話していたな”と少し不思議な気分になった。葛西係長が武田のパソコンを抱えると、周辺にいるサイバー犯罪対策課の職員が“早くこの場から離れてほしい”“機器に害があるからこんな人来てはならぬ”といった思いを目線という名の圧力で訴えてきた。佐々木刑事はもしかしたら機械が得意な人はあまり人と話すのが得意ではないのかもしれないと思った。
部屋に葛西係長と佐々木刑事は戻ると阿吽の呼吸で武田のパソコンの中身を解析しようと準備を始めた。ただふと佐々木刑事は思った。それをふと葛西係長に言ってみた。
「葛西さん、僕ふと思ったんですけどパソコンのロックってこんなに簡単に開けられるものなんですかね。こんな簡単に開けられたら、ロックの意味が無くなってしまう気がするんですけど…」
「多分そこはサイバー犯罪対策課の裏の力でも使ったんじゃない。本当はいけないことなんだけど、申請してその手を使わせてもらったとか…でもあんまりどういう手を使ったかなんて聞いていいものではないと思うけどな。」
やはりそのくらいしかないよな、佐々木刑事はそう思い作業を続けた。




