白紙に戻った事件
佐々木刑事は唖然としていた。まさか輓馬がロッカーを使う権利を剥奪されたがゆえにフローリング材の下にジップロックを隠していたとは佐々木刑事にとって驚きの言葉しか出ない。つまり捜査の大詰めと思われていたものが一からやり直し、いわゆる白紙に戻ったという状況なのだ。
佐々木刑事は唖然としたまま警視庁に戻ってきた。あれほど終わりだとという雰囲気だったところでの大役を担わされ、逮捕という終止符が打たれるはずだったのだ。事実ではなかったということになれば冷たい目で見られることはもちろんのこと、警部補という階級の降格の可能性もあるだろう。色々な心配を抱え、葛西係長に結果を報告した。葛西係長は顔をしかめることなく、そうだったかと頷いた。葛西係長は何も無かったように佐々木刑事に振る舞った。
佐々木刑事と葛西係長は二人でこれからの事件への調査方を考えていた。ジップロックが重要証拠として調査をしていたものの、それが違うと言われてしまった為どう調査しようか、困惑していた。何をヒントに捜査すればよいのか、誰から情報を聞けばよいのか、手も足も出ない状況で上からの指示も出ない。捜査員たちは今、全員捜査本部で待機している。葛西係長や佐々木刑事はその捜査員たちに指示を送る側にいるものの、本人たちが困惑しているため迷うことしかできない。




