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佐々木勲警部補と事件たち  作者: 渡部遥介
白い白鳥殺人事件
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 三人の話を聞き終え、その三人を怪しい人物の分類に入れた佐々木刑事と葛西係長は一時警視庁に戻った。三人の話をまとめると被害者の驇織タリシキは舞台に上がる前に武田と話したが、死を予感させるようなことはなく元気だった。毒物の入っていたと思われる袋は劇場近辺の百円均一店で販売されており、入手が容易である。ベテラン女優の輓馬バンバは被害者と仲が悪かった。という三点だ。現状の情報で怪しいのは輓馬だけだ。一応輓馬の周辺には捜査員が数名張っている。白鳥ホール内も例外ではない、捜査員や警備員が至る所で見張っているのだ。

 佐々木刑事は警視庁で劇団員の履歴書などの個人情報を調べていた。捜査本部の筋としては劇団員の中でも役者の中に犯人がいるのではないかとみている。そのために佐々木刑事は個人情報に目を通しているのだ。佐々木刑事が気になる人物はこれと言っていないが、やはりあの三人にはしっくりこない。犯人の最有力候補はやはり輓馬だ。経歴からして劇団の顔ともいえる存在だが、近年若い世代に取られて来ている。その若い世代の中に驇織が含まれているのだ。しかも驇織の成長は他のものと比べ物にならないほど早く、ここ五回は驇織が主演またはヒロインを演じており輓馬の恨みを買ってもおかしくない。

 「佐々木君、これを見てくれ。」葛西係長が佐々木刑事に近づきながら言った。葛西係長が持っていたのは科捜研から回ってくる調査結果が記されている紙だ。そこにはホールから発見された毒物が入っていたと思われる袋の指紋について書いてあった。「一致」の文字の隣に書いてあったのは驇織有佐だった。

 

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