初日公演の悲劇
佐々木刑事は嘉実に初日公演に招待されたため、十月の終わりに「白い白鳥ホール」に佐々木刑事は来ていた。佐々木刑事は何日か前にもこのホールには来ていたので作り等は理解できている。ただ前回は練習を見学に来ていたのでお話の内容自体はほぼ何も理解できていないといっても過言ではない。だからこうして初日公演を見に来ているのだ。
ホールに入ると先日同様受付の人がいて、チケットを拝見していた。チケットの拝見のための行列が構成されるほどの人数がいた。数分して佐々木刑事の番になると、チケットに招待券と書いてあるのを受付の人が見て「招待されたのは誰ですか。」と聞いてきた。佐々木刑事の喉まで「ヨッシー」と出てきたが、「渡部嘉実です。」と改めた。「少々お待ちください。確認致しますので。」その人はそう言うと内線電話をかけ始めた。すぐに電話を終え、「どうぞ。」と声をかけて席まで案内してくれた。席は最前列のちょうど真ん中だった。「ごゆっくりご覧になってください。」そう声をかけてどこかに行ってしまった。ホールの幕は黒く、ホールの至る所に特大のスピーカーがあった。演技にはマイク類の拡声器は使わないはずなのにスピーカーがあることに佐々木刑事は違和感を感じた。
ブーン 音が鳴ると同時に照明が消えた。すると練習で印象に残った嘉実が”有佐”と呼んだ女性が出てきた。練習通りの踊りをして舞台の袖に戻るはずだった。しかし彼女は戻る途中でバタッという効果音を残して勢いよく地面に倒れ、ステージから落ちて佐々木刑事の足元で止まった。




