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第一章 ~デバッガーになった・Ⅱ~

 「どうだった?」

コントローラを置きHMDを外した猛に、にこやかに秀人は訊ねた。一つ溜息をつく。

「まぁ、普通?」

「それはまぁ、チュートリアル用だしね。本格的なダンジョンは次からだから」

「チュートリアル用って、少し甘く見た」

「だったら、今度は手強いかもよ?」

秀人の笑顔は、どこか不気味に、猛には思えた。

 × × × ×

九月十三日 (火) 十八時三十分~二十二時三十分

 スタルトを出るとワールドマップに移動した。ワールドマップ画面は他のダンジョンの街へ移動する為にだけある、といっても過言じゃない。キャラクタメニュー画面が開ける他は、他の街を指定して瞬間移動する位しか出来ない。画面にはスタルトの他にネクスタ、という街が表示されていた。十字キーで選択して移動する。

 街の中は少々広いのと施設の配置が違うくらいで、雰囲気はスタルトと大差がない。まずは武器屋へ行って強化パーツを加工して貰う。武器用の二倍パーツが四つ。アビリティは無し。剣に装着すると、百二十八×八で千二十四。体力五百十二と合わせて攻撃力は千五百三十六。この前までの二倍以上になった。防具用は残念ながら無い。とりあえず今はこれで。

 次にギルドに向かう。ここのダンジョンの情報入手と、冒険者を雇う為に。一度に二人だから、今度はどういう組み合わせにしようか?まずは受付嬢に、ダンジョンについて訊いてみる。どうやら古世界の遺跡らしい。魔法を使うモンスターもおらず、それほど強くはないらしい。ここで簡単な古世界の説明が入る。

 古世界というのは今の新世界より前に存在した、非常に高い文明レベルを誇った存在達(これを神と呼んでいる)が作った世界の事で、余り詳しい事は判っていないという。ただ、様々な異世界からこの地へやって来た存在達はやがて対立し、『神界戦争』と呼ばれる大戦争のすえ、痛み分けによってこの地を去って行った、という事らしい。人類をはじめとする動植物の多くは彼らの創造物であり、生活の為や戦争の為に創造されたという。こういった事々は、彼らがこの地を去る時人類の指導者として残された大天使により与えられた言葉や文字で古来より残されてきたが、現在ではその多くが失われたとされ、その大天使を崇め、教えを伝え守るのが大天使教団だと、そういう事らしい。まぁ、ちょっとしたトリビア程度に心に留めておく。

 次に冒険者を雇う。最大二人、一人は回復役の神官と、もう一人は、新しい職業の狩人にする(というか魔術師が居なかった)。狩人は弓矢のエキスパート。『ヘッドショット』という、急所を狙って大ダメージを与えるスキルを、最初から持っている。攻撃が命中すれば必ずクリティカルになり、クリティカルは、防御力無視でHPの三分の二を削る。そう、命中すれば。結構な賃金を前払いする。かなり痛いなぁ。

 ダンジョンに潜る。中は幾何学模様をあしらった壁と天井が続いている。三角形や円、他に歪な多角形が気色の悪い組み合わせ方をされていて、不安感を抱かせる。と、それはともかく。エンカウントもなく暫く進むと、大きな扉があった。”ここより地獄”と書かれている、との表示があり、扉が開かれ一歩中に入るやイベント発生。何かを閉じろ、と人型モンスターが語り、奥へと逃げていった。更に奥へ進むと、このダンジョン初のエンカウント。確かに、モンスターはそれほど強くはないんだろう。『お試し一号』と狩人で何とか倒してゆく。消費EPは三千くらい。小動物や鳥類の変異体が多くて敏捷さが高いのか、スカる事も多い。器用さも上げないと。幸い、それほど体力が高くないから余り削られない。むしろ数の多さに押され気味になる。敵は三体、とか言う訳じゃないのね。

 ダンジョン内は結構広く、複数階層に別れている。円筒形で、地下一階は中心を占める円形の階段室周辺に、廊下で三等分され、各ブロックはまた複雑な小部屋に別れている。マッピング機能が無ければすぐ迷子だね。そこここにアイテムが落ちている。力尽きた冒険者達の形見?逐一小部屋を確認しながら探索を進めてゆく。特にキーアイテムになりそうな物は見当たらない。三つのブロックを調べ終え、階段室へ。扉を開け、吹き抜けの螺旋階段を下りてゆく。暗くて下は見通せない。やがて扉が見えてくる。地下二階に入る。

 地下二階はまた違う構造をしている。階段室を出ていきなり左側には壁。迷路になっている。さて、正面に進むか、右か?とりあえず、正面を行く……ええい!また行き止まり!!マッピング機能前提の迷路とか、通る必要のない行き止まりも埋めたくなるじゃないか!?それはともかく、散々迷った挙げ句、ようやく下階への扉に辿り着いた。ここに来るまでに、かなりのエンカウントがあり、結構ボロボロになった。稼いだEPは殆ど器用さに注ぎ込んだ。お陰で幾分攻撃が当たり易くなった、気がする。そんな感じで、ダンジョン探索を続行。階段室に入ると、螺旋階段を下りてゆく。床が見えてきた。どうやら、地下三階で終りらしい。

 地下三階は、とてもシンプルな構造。階段室外周の廊下を隔てて、壁があるだけ。ぐるり、巡ってみると、四つの扉が等間隔に並んでいる。試しに一つ、開けてみようとするが施錠されている。二つ目は開いていた。中に入る。だだ広い空間を数歩進むと、モンスターが現れた!陸亀をモチーフにした様な、如何にも硬そうなモンスター。予想通り、削り辛い。甲羅に籠られると攻撃が命中しても一。頭突きと踏みつけも結構痛い。けれど、余り当らないしスカる事もまず無い。それじゃ、ここは狩人カモン!『ヘッドショット』で三分の二を削り、倒しきった。どこかで扉が開いた、との表示。こうやって、一つずつ扉を開けていけ、と。回復して外に出た。

 二つ目は階段室の向こう。中では、真紅の巨大な鳥が待ち構えていた。まぁ、当たり辛い。鋭い羽が飛んできて、何気に削られる。体当たりしてきた直後くらいしか『お試し一号』は役立たずなので、狩人にチマチマ削って貰い倒した。キツかった。また回復して次の扉へ。

 廊下に出て左側へ向かう。次のモンスターは、アルビノの虎がモチーフの巨大なモンスター。攻撃はそこそこ当て辛く、前足の薙ぎ払いと噛み付きが痛い。毎回回復が必要なくらい。そろそろ神官のMPが心許なくなってきた。どうにか倒す。HP、MPの回復薬をもっと購入しておくんだった。さて、最後の扉が開いた。残るは階段室向こうのものだけ。さて、鬼が出るか、蛇が出るか。

 出たのは龍だった。どういう訳か、蛇型の細長い奴じゃなく、西洋のドラゴン。この世界には、これの原型となった様な動物がいるという事か?それはともかく。結構な固さ、当たり辛さ。頭の鋭い角を使った薙ぎ払いと、空中に飛び上がってからの急降下攻撃が痛すぎる!試しに空中にいる時『ヘッドショット』を使ったが、外した。ダメージが大きい代わり、命中率が下がる様になっている。これはもう…無理!絶対、無理!!逃走を試みる。左右アナログスティック同時押しで振り向いた。と、直後にドラゴンの急降下攻撃が『お試し一号』に炸裂!逃走時にはダメージが一.五倍になり、あえなく戦闘不能に。画面が暗転し、再び表示されたのはギルドだった。受付嬢が心配してくれている。どうやら登録時に渡された腕輪の効果らしい。戦闘不能になるとギルドへの強制転移魔法が発動するのだとか。他の冒険者達は自力で帰還したという。また雇ってダンジョンに潜りたくても、『お試し一号』の不甲斐なさに愛想を尽かして断わられるだろう、ときた。今回はここまでにしておけ、という事なのか?まぁ、そういう事なら、今回はここまで。

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