第五章 ~最難関に当った・Ⅲ~
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十二月二十一日 (水) 十八時三十分~二十二時〇〇分
本格的な第六のダンジョン攻略の続き。第二層にチャレンジ。手こずる様なら、また第一層に戻って来よう。
三十分余りで百万EP程稼ぎながら、階段室の入口に向かう。階段室に入る前に五感に(三百万余り)。消費EP千九百九十万余り。階段室に入り第二層へ上がる。扉を出ると、そこには変わり映えのしない光景が。構造も変わり映え無し。ザコモンスターも。消費EP八千万~一億一千万、HP六千万~八千万、獲得EP三十万~五十万と、少し強くなってるけど。ま、強くなってるのはこっちも同じで。一戦闘で一~三体、平均の獲得EPは八十万くらい。一時間くらい彷徨くうちに七百六十万くらい稼いだ。クリティカルが出易くなってて、サクサク進める。階段室の扉を見つけたけど開かない。EPを体力(二百万余り)、知力(三百二十万余り)、器用さ(八百万余り)、敏捷さ(八百万余り)、五感(四百万余り)に。消費EP二千七百五十万余り。更に一時間余り扉という扉を開けまくり、戦闘しまくり。中ボスの居る部屋までに八百三十万余りEPを稼ぐ。中ボスは、今度はクワガタ。消費EP二億、HP一億四千万。二本の角の間には、大量の棘。角の先も鋭利な刃物みたい。まぁ、挟まれたら痛そう。
確かに、少々痛かった。かなり硬かったし。『連撃』を最大回数使っても、一回じゃ倒しきれなかった。クリティカルもしないし、被ダメージも一ヒットで百万くらいいくし。あー、また悪い癖出た。舐めてましたよー。獲得EP百万余り、合わせて九百三十万余りを体力(四百万余り)、知力(三百五十万余り)、器用さ(一千万余り)、敏捷さ(一千万余り)、HP上限値(五百三十四万余り)に。消費EP三千六百八十万余り。部屋内で二つのスイッチをオンにする。残り時間はカティア達の強化に使おう。
四十分余りで二百二十万余りのEP。いやー、『やせ我慢』覚えといて良かったぁ!強化パーツも一個入手。防具用の四倍強化。『魔法防御力十パーセントアップ』のアビリティ付き!獲得EPは、体力(五百万余り)、HP上限値(六百五十五万余り)に。消費EP三千九百万余り。ヘキサへ戻る。
強化パーツの加工、装着。物防二百六十二万一千四百四十+一万三千百七=二百六十三万四千五百四十七。魔防六十五万五千三百六十+三千二百七十六=六十五万八千六百三十六。かなり溜まったゴールドで、MP上限値を六十万余りに。今回はこのくらいで。次回はスムーズな上層階攻略の為にも、この第二層でカティア達の強化も兼ねて粘ろう。
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「あれ、今日は早いの?」
部屋に入ろうとしていた猛に、最近聴いた覚えのある声が掛けられた。振り返れば、あのスキンヘッドの男性が、向かいの部屋から出て来た所であった。午後三時少し前。確かにいつもより随分と早い時間である。
「ええ、えーと」
ここで、猛は男性の名を知らない事に気付いた。男性も、名乗らなかった事を思い出す。
「あ、そうか。羽倉、羽倉 誠也。君は鹿島君だよね?」
その自己紹介に、休日出勤の時目にした、ノートに書いてあった名前が脳裏に浮かぶ。
「あ、はい。羽倉さんも、今日は忘年会ですか?」
「いや、こっちは先週済ませた。プロジェクト毎にスケジュールがまちまちだからさ」
「そうなんですか」
「ま、社長は顔出すと思うけど。まぁ、面倒見てやってよ」
「はい?」
含み笑いを浮かべた羽倉は、クエスチョンマークを面に浮かべた猛を後目に、トイレへと向かったのであった。
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十二月二十二日 (木) 十五時〇〇分~十八時三十分
前回の予告通り、第二層でカティア達の強化兼EP稼ぎ。
一時間ちょっとかけて、獲得EP七百八十万余り。『お試し一号』はひたすら耐え抜き、カティア達はひたすらスキルを使う。アレックスの防御魔法もあって結構耐えられるけど、ヤバくなってきたところで『連撃』で終わらせる。二人とも、初期パラメタ値の数十倍まで強化されてる。さて、獲得EPは知力(五百万余り)、器用さ(千二百万余り)、敏捷さ(千二百万余り)、HP上限値(七百八十五万余り)、五感(五百万余り)に。消費EP四千六百八十万余り。HPやMPの全回復薬とか、有り難いのは多数入手出来たけど、強化パーツは無し。もう少しだけ、粘ってみよう。
一時間ちょっとで待望の強化パーツゲット!防具用の六倍強化、アビリティ無し。防具用が続いてる様な。ま、それはともかく。獲得EP三百七十万余り。体力(六百万余り)、器用さ(千三百万余り)、敏捷さ(千三百万余り)、HP上限値(八百五十七万余り)に。消費EP五千五十万余り。残りの時間は、またEP稼ぎ。一時間足らずで八百十万余り稼ぐ。知力(六百万余り)、器用さ(千五百万余り)、敏捷さ(千五百万余り)、五感(六百万余り)、HP上限値(千六十万余り)、MP上限値(十六万余り)に。消費EP五千八百六十万余り。ヘキサへ戻る。
強化パーツの加工、装着。物防三百四十万七千八百七十二+一万三千百七=三百四十二万九百七十九。魔防八十五万一千九百六十八+三千二百七十六=八十五万五千二百四十四。『連撃』を、いよいよMAX三十二まで強化。安いアイテムを売却、効果の高いものに買い換える。これでどの辺の階層までスムーズに上がれるか?次回からは、とにかく上層階を目指そう。
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ビールジョッキが行き渡ったのを見計らい、才人は口を開いた。
「今日はみんなお疲れ様。このプロジェクトがキックオフして七ヶ月余り、弊社で働き始め一年に満たない面々もいるが、ともかく一年間、ご苦労様」
ジョッキを掲げ「乾杯」を口にすれば、五人もそれに応じる。少し口を付け、続いて拍手が沸き起こる。その居酒屋は、第四のダンジョンクリア時に飲み会を行った場所であり、『G.I.ソフトウェア』社員達は常連となっていた。
「七ヶ月って、六月くらいから始まったんだ?」
フレンチフライを一本口にし、猛が斜向かいの秀人に話し掛ける。
「正式に稼働しだしたのはね。その前から、企画の話は社長と詰めてたし」
唐揚げや揚げシューマイ等を取り皿に盛りつつ秀人が答える。
「私達も、その頃から声を掛けられていたんです。私は退職しようとしていて、この子も暇をしていたので」
ジョッキを一旦口から離した梨名が、傍らの名波を肘で小突きつつ言う。「別に良いでしょ?」などと、ふて腐れた様に名波が小突き返した。
「退職って、何か問題でも?」
猛に問い掛けられ、梨名の表情が翳った。
「まぁ、色々と」
言葉を濁した梨名に、突っ込んではいけない所だったか、と猛は申し訳ない気分になった。
「そう色々とね。猛だってだろ?」
助け舟のつもりか、秀人が茶化す様に口を挟んだ。
「まぁ、そうだよね」
内心秀人に感謝しながら、猛は秀人に調子を合わせた。
「このプロジェクトもゴールが見えてきた。しかし、ゴールはまた新たなスタート地点でもある。状況次第ではあるが、新たな展望が開けてくる事もあるだろう」
「ぜひとも、そう願いたいね」
才人に向けて、能勢が梅サワーのグラスを掲げて見せた。
二時間程の宴がお開きとなり、静かな寝息を立てる才人を、秀人と能勢が呼んだタクシーに苦労して押し込んだ。
「いつもこんななの?」
才人のコートや鞄を持った猛が、後部座席を覗き込みながら秀人に訊ねた。
「だから、先にお金を預かってたんだよ…はい、どうも。まぁ、酒乱や泣き上戸とかより、ずっとましだけどね」
荷物を受け取りつつ、秀人が答える。
「確かにね」
「ま、心配なのは、変な女に引っ掛かって面倒になる事くらいかな?」
秀人としては、ほんの軽い冗談のつもりであったろうが。
「ご心配なく!私が目を光らせてますから!」
ムッ、っとした様に、紅顔の梨名が主張しだした。
「お姉さん!?酔っ払ってるの!?」
「酔ってません!」
何かブツブツ言いだした姉の手を引きつつ、名波は一つ礼を残し、駅の方へ向かって行った。
「ははは。梨名さんは酒が入ると少々厄介だからね」
タクシーの後部ドアが閉まる。
「じゃ、会社で」
「うん」
車内から小さく手を振る秀人に、猛も小さく振り返す。タクシーは走り出した。猛と能勢は、静かに見送った。
「さて。私達も帰ろうか」
「そうします」
能勢は歩いて二十分程の所に住んでいると聞いていた。猛は反対側の駅へと歩き出し。
「鹿島君」
「はい?」
不意に呼び止められ、足を止め振り向く。
「君は、人生のヴィジョンと呼べるものを描けているかい?」
能勢の不意討ちとも言うべき問いに、猛の頭は真っ白になった。
「え?え、と…どうでしょう、成り行き任せ、と言うか…」
「そうかい。まぁ、どんなに立派なヴィジョンを描けたとしても、その通りになるかは判らないしね。運命というものは、不意に姿を現わすものだろうし」
「…あの」
何が言いたいのか判らず、猛は戸惑った。
「いや、済まないね。忘れてくれて良いから。それじゃあ」
右手を掲げ歩き去る能勢。何とも言えぬモヤモヤを抱えながらも、猛もまた駅へと向かうより無いのであった。
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十二月二十四日 (土) 十五時〇〇分~十八時三十分
あーあ、まだまだ第六のダンジョン攻略は続くよ。前回の予告通り、第三層攻略に取り掛かる。
変わり映えのしない構造をした階層。モンスター達は、大きな昆虫(じゃないのも居るけど)。蟻だ、蜂だ、蜘蛛だと、毒を持った厄介なのが主。毒と言ってもHPを削るだけじゃなく、パラメタ値を低下させるのもある。魔法ばかり警戒してたけど、こういうのもアリか!?いや、ダジャレじゃないよ…とにかく!
消費EP一億~一億三千万、HP八千万~一億程度。二~四体で出現、獲得EPは五十万~七十万程度で、一回の戦闘で平均百二十万EPくらい稼げる。カティア達を強化するには向いてない。さっさと通過しよう。
第一層から第三層まで、一時間余りで千三百四十万EP余り稼いだ。結構硬いけど、『連撃』も強化したし、一日みっちり強化に割いたしで割と楽。それでも毒で体力とか器用さとか低下したりすると、ちょっと面倒。こまめに状態異常回復薬を使う。獲得EPは、体力(八百万余り)、知力(七百万余り)、器用さ(千八百万余り)、敏捷さ(千八百万余り)、HP上限値(千四百六十万余り)、MP上限値(五十六万余り)に。消費EP七千二百万余り。更に三十分近く探索して、中ボスと遭遇。大きな蠍。消費EP二億五千万、HP一億八千万。何か、尾が四本程増えてる。両手の鋏は、切れ味良さそう。思うんだけど、ここのモンスターって、黒い霧の影響で大型化したの?それとも元々?元々だったら、ヤだなぁ。まぁ、そんな事はともかく、戦闘開始!
結構あっさり。三十二連撃の途中でクリティカルが一発出たら終了。獲得EP百五十万余り。体力(八百五十万余り)、HP上限値(千五百六十万余り)に。消費EP七千三百五十万余り。一億越すのも時間の問題かな。二つのスイッチをオン。さっさと階段室へ。
第四層も昆虫ベース。第三層の色違いに、蛾とか攻撃レンジ『全体』の毒攻撃を持ってる奴とか、力押しの蟷螂とかも加わる。消費EP一億二千万~一億六千万、HP一億~一億三千万程度。二~四体で出現、一体当たりの獲得EPは七十万~九十万程度で、一回の戦闘で平均百五十万EPくらい稼げる。力押しはともかく、この全体の毒攻撃が厄介。『お試し一号』はともかく、カティア達がすぐ危機的状況になる。後衛から仕掛けてくるし、とにかく『連撃』の攻撃回数MAXで押しまくる(それでも一度で倒しきれなかったり)。一時間半ちょっと、あらかた階層内を探索し終えた所までで二千百六十万EP余り稼いだ。最後の部屋の探索前に体力(千三百五十万余り)、知力(千百万余り)、器用さ(二千二百万余り)、敏捷さ(二千二百万余り)、HP上限値(二千百万余り)、MP上限値(七十六万余り)に。消費EP九千五百十万余り。状態異常回復薬が心許なくなってきた。
第四層最後の部屋に突入!中ボスは。百足!?顎が異様に発達して、脚長ッ!気色悪ッ!!生理的にダメッ!!!消費EP三億、HP二億三千万。噛みつきと、『連撃』みたいな脚の連続突き。地味に削られる。それでもま、敵じゃないってゆうか。『連撃』の失敗がなければ、一行動で倒せたんだけどな。獲得EP二百万。器用さ(二千三百万余り)、敏捷さ(二千三百万余り)に。消費EP九千七百十万余り。二つのスイッチをオン。他に、室内には宝箱があって。中からは加工済みの武器用強化パーツ(八倍強化)!しかも、『防御貫通』アビリティ付き!!これは、相手の物理防御力無視で攻撃力丸ごとダメージとして与えられるという、超レアアビリティ!!!クリティカルと合わされば、正に無双!!!!しかしまぁ、とりあえず装着は後にして先を急ごう。部屋を出、階段室へ。第五層へ上がる。階段室を出、少し行くとエンカウント。ドラゴンだった。このタイプ久し振り!如何にも火竜、という感じの赤黒いヤツ。奇襲された。『全体』の火を吐いてきた。これ魔法扱いみたいで。『お試し一号』はともかく、カティア達が一発で瀕死に!えーい、逃走!こっちも久し振り。五感の強化を怠けたせいか。いや、それもあるけど。カティア達の強化がまだ足りなかったか。とりあえずダンジョンを離脱。ヘキサに戻った。
まずは強化パーツの装着。片手半剣の攻撃力が、四千六百十三万七千三百四十四+二十万九千七百十五=四千六百三十四万七千五十九に。体力も合わせて五千九百九十万近いダメージを与えられる様に!もう少し体力を上げて、七千万くらいにとりあえずしよう。次に道具屋で状態異常回復薬など買い込む。かなりゴールドも溜まってきたしドーピング。四百万ゴールド程かけてHP上限値を二千百二十万余りに。ダンジョンで強化した方が早いね。
さて、これからどうするか、だけど。ひとまず『お試し一号』の強化は度外視して、カティア達の強化。一戦闘毎にHP、MPの上限値は上がってゆくから、とにかく戦闘をこなそう。他のパラメタ値も上げたいから、また第五のダンジョンに戻ろう。今の二人なら、『お試し一号』が盾役に徹しても戦闘は早く終わらせられるだろう。とりあえず、今回はここまで。




