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第五章 ~最難関に当った・Ⅰ~

RPGもいよいよ大詰めになります。プロジェクトメンバの過去も、少しずつ明らかになって行きます…。

 第五章

 昼下がりの社長室には、二人の男性の姿があった。

「…これで、良いでしょうか?」

机に向かう才人は、正面の椅子に腰掛けた能勢に訊ねた。いつもながら、才人の彼に対する態度は先輩、後輩という関係の、それの様であった。少し苦笑じみた笑顔で、能勢は肩を竦めた。

「決めるのは、この会社の経営者である君だよ。私はあくまで相談に乗るだけだから」

「もちろん、そうですが。会社の、経営者の先輩として、私は貴方を信頼しているつもりです」

「ははは。会社の方は契約社員だったし、経営者としては失格だよ。倒産させてしまったんだから」

「しかし、それは…」

「もうよそう、その話は。事情はどうあれ、私の失態である事には間違いないからね」

制止する様な仕草と共に能勢。渋々、といった風に才人は口を閉じた。

「後は、彼が応じてくれるかどうかだね」

「以前、チラリと話してはあります。問題は無いと思いますが」

「それなら、こちらとしても歓迎だよ」

「そうですか。引き続き、お願いします」

小さく頭を下げる才人。

「今更ながら、ここまで良くやれたと思うよ。小さいけれど、良いチームだと思う」

言って、能勢は腰を上げた。

「どうか、私達がゴールテープを切るのを見守っていて欲しいね」

「大丈夫です。そのゴールテープを持っているのは私ですから」

立ち上がる才人。二人は静かに笑い合った。社長室を後にする能勢を、立ち尽したまま才人は見送ったのであった。


 「今回は、本当に早かったねぇ」

少し感慨深げに猛。第五のダンジョン『ピット砦の地下通路』クリアより一週間余りで、お呼びが掛かったのである。

「ま、データの使い回しとかも出来たしね。『ネクスタの遺跡』、覚えてるでしょ?」

「何か、懐かしいなぁー。最後の四聖獣、今なら瞬殺だろうね」

「だろうね。でも、ここから先は瞬殺されるかも知れないよ?」

「やっぱり難易度、上がるんだー。どれくらい?」

「今までの苦労がバカらしくなるくらい。とにかく桁違いだから」

「ええー!?なのに、あのピット砦とかでEP稼ぎしなきゃならないの!?」

散々往復して飽き気味であった猛が渋い顔をするが。

「そこはちゃんと救済措置がされてるから。こっちも桁違いに強くなってる。それでも、今のメインキャラなら倒せる程度だけどね」

「そうなの?」

「でもまぁ、何も考えないで新ダンジョンにチャレンジしてみてよ。きっと死ねるから」

「死ねる?戦闘不能じゃなくて?」

「何も出来ずにHP上限値の何倍ものダメージ貰うと死亡、っていう事になってる、っていうかしたんだよ。まぁ、首をはね飛ばされでもしたイメージかな?もちろんバッドエンドね」

「うわー、想像しちゃったよ」

げんなりした表情になる猛。

「とにかく、このRPGの最難関、せいぜい楽しんでよ」

背凭れに身を任せ、両手を擦り合わせる秀人。横目でその横顔を睨み、猛はHMDを装着したのであった。

 × × × ×

 十二月十二日 (月) 十八時〇〇分~二十二時三十分

 さぁさぁ、今回から第六のダンジョン『ヘキサの地下遺跡』攻略スタート!ここを攻略出来れば、後は一連の事態の元凶である神殿まではすぐ。ゴールは見えてきた!

 もはや恒例行事の様に、エドマンドの屋敷からスタート。四日後、主要キャラが一堂に会し、深刻そうな話をしている。クイルが、ルイースの地下墓地や地下通路のモンスターが凶暴化している、と言っている。ステラは、恐らく『大いなる叡智』が横穴を爆破したせいで、何処かの洞窟と繋がったのでは、と推測を述べた。そこへ、黒い霧を纏ったイリスが現れた!エドマンドが言うには、未だ黒い霧を完全に取り除く方法は発見出来ていないが、ひとまず完全に正気は取り戻せた、という事で。『大いなる叡智』の魔術師も、自分達の開発した薬で正気を取り戻せたのであろう、と。イリスは迷惑を掛けた事を詫び、このままルイースのモンスターを抑え込み続ける事は困難だろう。他のダンジョンも手薄になってしまう。ここは、一刻も早く、神殿の門を閉じる必要がある、と主張した。カティアが、しかし、ヘキサのダンジョンはかなりヤバそうだし、そう簡単にいくか?、と疑問を投げ掛けると、とにかくヘキサのギルドに行って相談してみて欲しい、とエドマンドが言う。クイルは引き続きルイースの警戒に当る事になり、『お試し一号』とカティアは、ヘキサへ行く事になった。

 ヘキサへ移動する前に。溜まってたEP五千二百余りを体力(一万五千、消費EP九万二千四百余り)、知力(一万三千、九万三千四百余り)、敏捷さ(一万五千、九万五千六百余り)に。防具屋へ行き、金属鎧に強化パーツを装着。物理防御力三千八百四十、魔法防御力二千三百四。装備すると四千四百八十、二千六百八十八。次に道具屋へ行き、大分減ったアイテム購入と。HP、MPのドーピング。HP上限値を七万五千余り、MP上限値を一万五千余りに。とりあえず、これくらいで充分か。ワールドメニュー画面から新しい街、ヘキサへ。

 ヘキサは何というか、要塞みたいな感じの街。建物とかも、開放感のない、何かものものしい感じ。ギルドへ向かうとイベント発生。カティアが、私達と一緒に遺跡を突破してくれる猛者はいないか、と冒険者達に問うと、バカを言うな、そんな事は不可能だ、という声が。自殺行為だ、ここの遺跡は六階層あるんだぞ、俺達総出で第一層の掃除が精一杯なんだ、とも。どうしても神殿へ行かなくちゃいけないの、と懇願しても、知るか、行きたきゃ勝手に行け、俺達を巻き込むな、とヤジが飛ぶ。騒然とするなか、カティアは怒り気味に、もうこんな腑抜け共放っておいて行こう、と言い出す始末。そこへ、情けない!、と一喝する声が。進み出たのは女性の魔術師。貴女達みたいな無謀な事を言う冒険者を初めて見た。本気で言っているのか?、と訊いてくる。『お試し一号』が、もちろんそうだ、そうしなければ大変な事になる、と答える。魔術師はアレックスと名乗り、カティア達も名乗る。もし本気で言っているなら、パートナー契約を結ばないか、とアレックスは提案してきた。パートナー契約というのはヘキサのギルド特有の仕組みで、契約を結んだ者同士が固定のパーティーとなって、同じ仕事に従事する事を認めるものだ、と。非常に強力なモンスターを相手にする事の多いここのギルドの冒険者達が、気心の知れた者達で仕事に当たれる様に、と生まれた仕組みだ、とも。説明が入り、この契約により、これまで固定だった主人公以外の装備が変更可能になり、またスキルを使用するなど条件を満たす事で、特定のパラメタ値が上昇すると。ま、その内容は折に触れて、ね。

 ま、何というか、艶っぽいアレックスの挑発に乗る様な形で、二人は『お試し一号』とパートナー契約を結んだ。これでパーティーは三人に。ギルドを出て、まずは武器屋に。どれも高価(数十万~数百万ゴールド)で、とても購入出来ない。防具屋も同様。道具屋には爆弾があった。武器屋には擲弾銃(バネ仕掛けのライフルみたいなの。攻撃レンジ『全体』)があるから、組み合わせて全体攻撃が可能になるけど。とりあえず今はパス。ここらで一旦、ギルドでセーブ。

 ダンジョンに潜る。第二のダンジョンみたいに暫く真っ直ぐな通路が続き、やがてエレベータホールの様になって大扉が立ちはだかる。これはすんなり開いた。また真っ直ぐ数歩。進むと、エンカウント!奇襲された(久々だね)!相手はライオンの様なモンスター。ただし鬣が針鼠の棘みたいになって、爪が異様に発達してる。消費EPは…六千万!?HP五千万って!!何これ、データ入力ミス!?、と思ってると、一撃くらい。HPは〇、戦闘不能じゃなく、即死!?ゲームオーバーだって……訳判らん!今までとレベル違いすぎ!敵のインフレ、どころかハイパーインフレだよ!

 最新セーブデータをロードし直し、再開する。新ダンジョン攻略に、現状全く強化が足りてないのは判った。となれば、またEP&ゴールド稼ぎ、だけど。現状二桁も三桁も実力差があるのを埋めるのは、並大抵の事じゃないだろう。が、しかし。第四、第五のダンジョンには新しいモンスターが出現すると言うから、どれぐらい稼げるか、試しに地下墓地へ潜ってみよう。

 イヤー、こっちもインフレが進んでました。ザコモンスター一体で消費EP四万~六万、HP一万~二万くらい、獲得EP八百~千三百くらいと、これまでの中ボスくらいになってた。デザインは、今までの色違い、と言うかマイナーチェンジ。ま、これくらいならどうという事はないね。ただし、『お試し一号』一人で片付けない様にする。カティアに『アイテムスティール』をさせ、アレックスに各種攻撃魔法や防御魔法を使わせる。『アイテムスティール』使用で(成否に関係なく)、器用さ、敏捷さに十加算されるから。魔法の場合、地系列なら体力、水系列なら知力、火系列なら器用さ、風系列なら敏捷さに、それぞれ十加算される。一回戦闘に勝利する毎にHP上限値に百、MP上限値に二十、それぞれ加算される。一回の戦闘でザコモンスターが三~六体、獲得EPが平均六千くらいだから、二時間余りダンジョンを彷徨いて、カティアとアレックスに頑張って貰いながら戦闘を繰り返してたら、十万ちょっとEPを稼げた。こうなるともう、百の位の値とか、細かくてどうでも良くなってくる。とりあえず、体力(三万五千余り)、知力(三万三千余り)、器用さ(三万五千余り)、敏捷さ(三万五千余り)、五感(三万余り)と、ほぼ均等割にした。これで消費EPは十九万六千余り。第五のダンジョンに移る。

 こちらもインフレ進行中で、ザコモンスターで消費EP六万~八万で、HP三万~五万くらい、獲得EP千二百~千八百くらい。中ボスは消費EP十三万~十八万でHP八万~十二万くらい。獲得EPは六千~一万くらいときてる。カティアの『トラップサーチ』発動で五感に十、『トラップ解除』で体力と知力に十加算。『アイテムスティール』の成功率はまだ低いけど、ガンガンチャレンジすれば高くなっていく。二時間余り彷徨いて、十五万余りのEPを稼いだ。これも体力(六万五千余り)、知力(六万三千余り)、器用さ(六万五千余り)、敏捷さ(六万六千余り)、五感(六万余り)と、ほぼ均等割り。消費EP三十四万七千余り。今回はこれくらいにしておこう。アレックスの離脱魔法でダンジョンを出た。トライに戻った。あー、徒労感が。


 十二月十三日 (火) 十八時三十分~二十二時〇〇分

 前回からの続き。EP&ゴールド稼ぎ、そしてカティア&アレックスの強化。ロープを購入、床に開いた穴で使用してみる。第五のダンジョンを彷徨いて飽きたらロープで地下墓地に下り、暫く彷徨いたら出て第五のダンジョンに潜り直す、なんて事を三時間余り繰り返したら、二十三万八千余りのEPを稼げた。これも体力(十万五千余り)、知力(十万四千余り)、器用さ(十万五千余り)、敏捷さ(十万六千余り)、五感(十万余り)と、あとHP上限値(八万五千余り)に。消費EP五十七万八千余り。たった二日で、これまで稼いだEPの五倍以上稼いだ。これでも、恐らくはまだまだ足りない。ただ、良い事も。強化パーツ(武器用)を一つ、ゲット出来た。二倍強化で、『物理攻撃力十パーセントアップ』のアビリティ付き。このアビリティは、基本攻撃力の一割を物理攻撃力にプラスするもの。この手のアビリティは同種で累積してゆく。塵も積もれば、でトータル二百パーセントや三百パーセント、なんて事にもなりうる。ダンジョンを出て武器屋に駆け込む。加工、戦斧に装着して、一万二千八百+百二十八の一万二千九百二十八に。体力も含めて物理攻撃力は十一万八千余りになった。もっとゴールドを溜めて、早く最上級の片手武器、片手半剣を手に入れよう。片手で装備出来る武器は、両手に装備が可能。その時に別段何かマイナスがある、という事もない。『連撃』使用時には、実質回数は二倍になる。まぁ、当面はそこまでゴールドは溜まらないけど。それはともかく。今回はこれくらい。次回からは、重点的に強化するパラメタを特定しよう。とりあえずは器用さ、敏捷さ、五感かな。新武器購入で体力分は補完出来るだろう。『連撃』回数も上げよう。


 十二月十四日 (水) 十八時〇〇分~二十二時〇〇分

 前回予告した通り、今回から特定のパラメタを重点的に強化する事にする。EP稼ぎ重視の為、カティア達の強化は控えよう(戦闘を繰り返せば、HP、MPの上限値は上がるし)。教練場で『連撃』回数を十二まで上げる。投擲ナイフだけでザコは片付けられるだろう。第五のダンジョンから第四のダンジョンに下りてダンジョンを出、また第五のダンジョンから入り直す、なんて事を三時間半近く繰り返したら、五十六万近いEPを稼げた。スピードアップの結果。まずは敏捷さ(六十六万五千余り)。消費EP百十三万七千余り。遂に百万越え!ここまで敏捷さを上げると、中ボスクラス相手でも連続行動回数が最大の十に届くだろうね。ヘキサに戻り、片手半剣を購入。基本攻撃力二百九万七千百五十二、最大強化倍率一万六千三百八十四。戦斧から強化パーツを全て付け替え。二千九十七万千五百二十+二十万九千七百五十二で二千百十八万千二百三十五。はははは、バカげた攻撃力。ドーピングでHP上限値を八万八千余りに。次回は器用さを上げようか。


 十二月十五日 (木) 十八時三十分~二十三時〇〇分

 今回からは更にペースアップしよう。第五のダンジョンだけを出入りして稼ぐ。時間も延長!明日はバイトは無いし。

 四時間以上かけて八十六万余りのEPを稼いだ。イヤー、面倒臭い!カティア達のHPは、ダンジョン攻略開始時から軽く三万を超えて増加中。稼いだEPは、全て器用さに(九十六万六千余り)。消費EP百九十九万八千余り。はぁー、もう、どうでもいいや(とはいかないのが、デバッガの辛い所)。ダンジョンを出て、HP上限値を九万八千までドーピングした。次回は五感。うーん、でも、この調子じゃまだ第六のダンジョン攻略にはかかれないか…。


 十二月十六日 (金) 十八時〇〇分~二十三時〇〇分

 一週間かけて、まだ足踏み状態なのはさすがに無様なので、今回も前回同様稼ぎまくる。と、その前に。『連撃』回数を十八まで上げる。一ユニットに対して、最小でも三回ずつ攻撃できるように。

 三時間ちょっとで八十万近く稼げた。あー、単調すぎて飽きたー!投擲ナイフ装備して『連撃』使うだけでザコは一撃死だし、中ボスクラスでもクリティカルしまくり。で、あっという間に戦闘終了。これだけ。楽だけどつまんないよ!全部五感に注ぎ込む(九十万余り)。消費EP二百七十九万七千余り。まだ時間はあるから、カティア達を働かせよう(HP、MPの上限値は、初期値の三倍近くになってるけど)。もう少しゴールドを溜めて、防具の新調とドーピングしよう。

 第四のダンジョンに潜り、一時間ちょっと彷徨いた。獲得EP八万余り。結構収穫はあった。『アイテムスティール』の成功率が上がってきて、強化パーツを武器用一つ(二倍、アビリティ無し)、防具用一つ(二倍、『物理防御力十パーセントアップ』)入手。このアビリティは、防具の基本防御力の十パーセント分を防御力に加算する。これも累積。もちろん『魔法防御力十パーセントアップ』とかもある。稼いだEPは敏捷さに(七十四万四千余り)。消費EPは二百八十七万八千余りに。トライへ戻る。

 まずはアイテムの整理。安いHP、MPの回復薬とか、余り気味のを売却。防具を新調。強化パーツを加工して貰い、新しい金属鎧に付け替え。基本物理防御力十三万一千七十二、基本魔法防御力三万二千七百六十八。八倍強化で物理百四万八千五百七十六、魔法二十六万二千百四十四。これにアビリティ分一万三千百七を加えて物理防御力百六万一千六百八十三。うーんと、これで防げない物理攻撃って…。次は武器屋。同じく強化パーツを加工、投擲ナイフに装着して、攻撃力五百十二。ドーピングでHP上限値を十万五千余り、MP上限値を一万七千余りに。今回はここまで。まだちょっと、足りないかな?

 ● ● ● ●

 「んー、もうちょっと、かなぁ」

一週間で数百倍の強化を行っても、まだ足りない様に猛は感じていた。器用さ、敏捷さを重点的に強化し、体力や知力を後回しにしたのは間違いではなかったであろう。ここまで強化してしまえば武器や防具の必要体力など心配無用であるし、クリティカル二発で、どの様な強敵でも倒せるのである。ただ、クリティカルは確率で出現するので、最悪『連撃』を使用中、一度も出ない可能性もある。またパラメタ弱化魔法を使用してくる敵が出現すれば、たちまちピンチに陥る可能性が高い。それを考慮するならば、まだ全体的な強化も必要であろう。今度は体力、知力を重点的に、一日集中的に『ヘキサの地下遺跡』へ挑む為の準備を行いたい所であった。

「…ねぇ、ここって、今度の土日に休出するの?」

同窓会で秀人が言っていた事をふと思い出し、秀人に訊ねてみる。

「多分ね。今日の作業状況によるけど。必ず一日は休日にしてる」

「もし休出するなら、土曜にしてくれないかな?俺も出たいし。午前中からで良いかな?」

「え、いいの?」

「一週間かけて本丸の攻略に取りかかれないのは問題だと思うしね。初っ端であの調子じゃ、時間掛かりそうでしょ?」

「別に焦らなくて良いけど。ま、やる気になってるなら歓迎だよ」

「みんな何時頃に出てくるの?」

「私なら、大体十時頃には来ているよ」

返答の主は能勢であった。

「十時ですか?結構早いですね」

「まぁ、住まいが近めだからね。午後一にはみんな揃っていると思う」

「そうですか。では明日」

デイパックを手に、立ち上がった猛へ。

「ああ。早いのは、初めてだったかな?」

「あの!休日は入館の仕方が違いますから、ご案内します」

梨名から小声で何事かを促されていた名波が、不意に声を張り上げ立ち上がった。少し、頬が上気している。

「そう?何時くらいに来ればいいのかな?」

微笑みと共に訊ねると、名波は目を伏せがちになり。

「ええと、十時…十一時頃には!」

「あれ、いつもは午後なのに…」

そう呟いた秀人に、名波の鋭い視線が飛ぶ。秀人は言葉を詰まらせた。

「そう。じゃあ、十一時に」

「はい!」

部屋を出て行く猛を、名波は暫く見送ったのであった。


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