第四章 ~長丁場になった・Ⅶ~
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十二月一日 (木) 十八時三十分~二十二時〇〇分
もう十二月かぁー。このゲームをプレイし始めてもう三ヶ月以上経つんだよねー。あの頃はまだ暑さがキツかったけど、もうダウンジャケットくらいは必要な季節になって、あと一ヶ月で今年も終わりかぁ。これ、あと一ヶ月で終わるのかな?
さてと、リアルな呟きは置いといて、第五のダンジョンの続き。はぁー、先は長そう。とにかくもっと色々強化しないと。だからまたもやEP稼ぎ。ピット砦の地下通路を三往復ほどして、EP一万三千を目指そう。ついでにアイテム回収も行う。なかなか上手くいかないとは思うけど。とにかく、突き進むしかない。
退屈な三往復、EP一万三千近くを予定通り稼いだ後、気分転換に久々に第三のダンジョンに潜る。イヤー、強くなった。五、六回は普通に連続行動が可能な上に、『連撃』を使えば一回の行動で片が付く。投擲ナイフでこれだから、このダンジョンでなら充分使えるけど。こうして時間一杯稼いだEP一万三千二百余りは、体力(九千八百、消費EP三万五千五百余り)、器用さ(八千八百、三万九千五百余り)、敏捷さ(九千六百、四万一千六百余り)、五感(六千六百、四万五千六百余り)に。溜めたゴールドでHP上限値を五万四千余り、MP上限値を四千二百余りまで上げる。カティアの回収したアイテムを一部売ったりして、少々ゴールドを補充した。もうそろそろ大丈夫かな?次回から先へ進もう。
十二月二日 (金) 十八時三十分~二十二時〇〇分
前回からの続き。ルイース地下通路に進むため、ピット砦の地下通路はスルー。獲得EP四百余りはMP上限値(四千六百、消費EP四万六千余り)に。ルイース地下通路に踏み込んで間もなく、エンカウント。六ユニット中、四人が神官で、二人が戦士。みんなただの人間。完全に見通しが甘かった。固い。両手剣で『連撃』を使い、前衛は結構簡単。後衛に手こずる間に神官が弱化魔法を使ってくる。HP上限値が七割がた抑えられ、魔法攻撃を食らう。かなりギリギリでクイルに頼り、何とか倒せた。けど…EPもゴールドも無し、って…酷すぎる!あ、そういえば…「倒した」じゃなくって、「戦闘不能になった」って表示されてたっけ?つまり、そういう事?はぁ。ま、とにかく、まだまだ強化が必要か。ひとまず知力を上げよう。パラメタ弱化魔法対策の為に。あとはHP、MPの上限値も。
ピット砦の地下通路を二往復半して、一万二千八百余りのEPを稼ぎ、知性(九千、五万余り)、HP上限値(五千六百、五万二千余り)、MP上限値(一万一千四百、五万八千八百余り)をそれぞれ強化。主なパラメタ強化はこれくらいで良いかな?後はゴールドを溜めて武器と防具を新調しよう。当然ドーピングも。
トライに戻る。ゴールド不足で武器、防具を一遍に新調は出来ない。まずは防御力向上の為金属鎧を買い求める。物理防御力六百四十。魔法防御力三百八十四。必要体力二千四十八だから装備可。強化パーツを付け替えて二千五百六十/千五百三十六。全体的には三千二百/千九百二十。あと一個は強化パーツが欲しいところ。今回はこれまで。あーあ、まだまだ足踏みは続きそう。
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「何なのあの連中?『大いなる叡智』のメンバ?」
「まぁね。彼らにとって、ここは特別な意味があるらしいから」
もったいぶった口調で秀人は猛に言った。
「でもさ、HP〇にして、何で戦闘不能なの?冒険者とか?」
「いいや。でも、『大いなる叡智』メンバは至る所に居るんだし、ギルドと同様のシステムを持っていてもおかしくはないだろ?」
「…つまり、俺達は、同じ連中と何度も戦う、って事?」
「ま、そういう解釈でも良いんじゃないかな?」
「何か、因縁深くなりそう」
げんなりした様に猛が呟くと。
「はははは、そういうサイドストーリーも良いかもね」
秀人は本当におかしそうに笑うのであった。
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十二月五日 (月) 十八時〇〇分~二十一時三十分
いい加減、ここまで新展開が無いのはどうしたもんかなぁ。もしかして、俺のやり方が悪いだけ?
ピット砦の地下通路を三往復して、EP一万三千六百余りを稼ぐ。HP上限値(六万八千、消費EP七万八百余り)、MP上限値(一万三千、七万二千四百余り)にする。トライに戻り、武器屋で戦斧を購入。基本攻撃力千二百八十、最大強化倍率百二十八。必要体力は二千四十八。両手剣から全強化パーツを外し、三個だけ装着。残った一個は投擲ナイフに。これで物理攻撃力は戦斧が七千六百八十、投擲ナイフが五百十二。体力を合わせれば一万七千五百余りと一万三百余りになる。『連撃』の回数も八まで上げておく。とりあえずはこれくらいで充分、かなぁ?あとは不要なアイテムを売り、必要な物を購入して今回は終り。次回からは、本当に、本当にぃ、先に進みたい。
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「猛さん!」
階段を下りようとしていた猛を、後を追ってきた名波が呼び止めた。
「はい?」
振り返った猛に、走ってきたからか、少し頬を紅潮させ呼吸も荒めの名波は、僅かに身を引きつつ目を伏せた。
「ええと、あの」
「何ですか?」
少し微笑んで問い返す猛に、上目遣いであった名波は、意を決した様に真っ直ぐ見返す。
「秀人さんから聞いてますか、忘年会の事?」
「え?はい」
秀人からは、二十二日と聞かされてはいた。
「出席されますよね?」
「ええと、この仕事が続いてれば、多分」
一応は次の仕事もある旨の話を聞いていたが、まだ具体的にどうなるかは現状不明であった。自分はあくまで一時的な手伝い、という意識の強い彼としては、今の仕事が終了するまでに具体化しなければ、また元の生活に戻るつもりであった。
「そうですか…終わりそうですか?」
名波の瞳には、少々不安げな色が浮かんでいる。
「んー、どうでしょう?まだまだ先は長そうだし…」
「そうですよね!?忘年会までは続きますよね!」
勢い込んで身を乗り出してくる名波。その勢いに猛は気圧された。
「そう、だと、良いですね」
「そうですよ!楽しみですね、忘年会!」
上機嫌で一礼すると、踵を返し戻って行く名波。暫く呆然としていた猛であったが、こちらもやがて前へ向き直り、階段を下りていったのであった。




