第四章 ~長丁場になった・Ⅵ~
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十一月二十九日 (火) 十八時三十分~二十二時〇〇分
第五のダンジョン攻略の続き。とにかくあの格闘家を倒すべく、もう少し強化しよう。全中ボスも倒してEP稼ぎ。全体的に、特に今回は体力を重点的に。
あのセーブポイントまで、EP稼ぎしながら進んで行く。中ボスは、もう脅威と呼べる程じゃなくなった。体力四千五百余り、器用さ四千八百余り、敏捷さ五千余り、HP上限値四万九千余り、と分散して強化するけど、やはり体力強化が中心。この時点で消費EPは二万三千五百余り、ってとこ。物理攻撃が当たり辛くなった時に備え、ダンジョン出口へ引き返す際の獲得EP五百余りは知力に(二千五百、消費EP二万四千余り)。トライに引き返し、溜まったゴールドでHP上限値を五万一千余りまでドーピングした。とりあえず、これで準備OK、かな?
ダンジョンに戻る。セーブポイントまで中ボススルーで急行した。ザコ戦の五百余りのEPをMP上限値に注ぎ込み(三千二百、消費EP二万四千五百余り)、セーブして再挑戦。強化の効果や如何に!?
結構手こずったけど、まぁ勝った。スキルを使われて物理攻撃が当たり辛くなったら、効果が切れるまで攻撃魔法でチビチビと削る。もう少し知力上げとくんだった。効果が切れたら、両手剣で『連撃』を叩き込む(四回攻撃)。四発命中すれば三万五千余りまで削れるけど、そう甘くはなくて。せいぜい二発くらい。で、結局手こずった。ただ、相手の攻撃は殆ど当らなかった。それで『岩砕拳』打ってくるとか!器用さと知力が低かったのが敗因?獲得EP二千五百余り。知力に全て注ぎ込む(五千、消費EP二万七千余り)。確保しなくて良かったのは、『大いなる叡智』メンバだったから?それって、どうなんだろ?
格闘家を倒すと、クイルが喋り出す。この者は、恐らく遺跡調査隊に紛れ込んでいた者の一人なのだろう。三十年余りも地下を徘徊し、ようやく平安を手に入れられたのだ、と。それって、都合良すぎじゃない?まぁ、倒したのは『お試し一号』だけどさ。
先に進む。間もなく大扉に阻まれる。今度は左右に部屋も無さそう。スイッチのある部屋を見落とした?とりあえず、時間的に今日はここまでだから、セーブポイントまで戻りセーブした。はぁ、このダンジョン、まだ続くのかぁ…。
十一月三十日 (水) 十八時三十分~二十二時〇〇分
さて、セーブポイントから再開。無いとは思うけど、出口へ戻りがてらスイッチ等の仕掛けを見落としてないか確認する。扉という扉を片端から開くか試し、開けば中に入って確認。そんな事やってるから時間は掛かるし、エンカウントも増える。アイテム入手も並行すると余計時間が掛かる。もっと強化パーツが必要なんだ!
一時間半余り掛けて探し回ったけど、特に見落としは無し。ただ中ボスの部屋は飛ばした。散々確認したから。こうなると、他の場所でイベントでも起きてるのかな?溜まった九百余りのEPを体力(四千八百、消費EP二万七千三百余り)、敏捷さ(五千六百、消費EP二万七千九百余り)に割り振った。ダンジョンを出てトライに戻る。ギルドに顔を出すけど、特にイベントらしき会話にならない。道具屋でアイテムを補充し、エドマンドの屋敷に寄ってみると。待望のイベント発生!
エドマンド父娘が酷く慌てている。黒い霧から人の意識を取り戻す為の薬品を試作し、イリスに試したという。その為か、イリスは今眠っているらしい。さて、その薬は金庫に保管してあったが、それが盗まれたという。助手として雇った冒険者の魔術師が姿をくらましたらしい。街で情報を集めてくれと頼まれ、屋敷を出る。真っ先にギルドに行くけどハズレ。次に武器屋、防具屋、道具屋と回ると。
道具屋に入るとイベント発生。クイルが主人に、エドマンド氏の雇った魔術師がどこにいるか知らないか、と訊くと、主人は、知らない旨を答える。ここまでは今までと同じだけど。不意に見知らぬ冒険者が話し掛けてきた。それならピット砦の方へ行った、と。ルイース地下の調査に携わっていたが、アイテムが心許なくなってきたので補給しようと戻ってくる途中見かけた、と。何か気が付いた事は無かったか、と訊けば、単身で、やたらと馬をとばしていた。ピット砦へ一人で行くのは自殺行為だろうに、と思った、という。
屋敷へ戻るとエドマンドにこの話をした。魔術師の目的が何なのかは不明だけど、とりあえず追ってくれ、という話になり。かくして『お試し一号』一行はピット砦に引き返したのだった、と。
とりあえず中ボスは無視して地下通路を急いだ。セーブポイントに到着すると、獲得EP五百余りを低い五感に注ぎ込み(二千六百、消費EP二万八千四百余り)、セーブして先に進む。あの大扉は開いていた。ようやく先に進める。
大扉の向こうは、平たい石を積んだ壁になっている。ここはルイースの地下。地下墓地はこの下らしい。少し進むとエンカウント。相手は六体。前衛は黒い霧のモンスターで、後衛は、人間!?うん、黒い霧を纏ってない人間。こいつら、もしかして『大いなる叡智』のメンバ!?しかも神官らしく、パラメタ弱化魔法で各種パラメタをバンバン弱化してくる!下手すると、必要体力以下になって武器も防具も外れそう!マズい、マズ過ぎる!ここは、逃走!戦闘から逃れ、ルイース地下をそそくさと脱出する。またパラメタ弱化魔法かぁ。この魔法は重ね掛けで一パーセントまでパラメタを弱化できる。つまり、HP上限値を最大限弱化しても倒せない、って事。ま、随分倒し易くはなるだろうけどね。それはともかく。この先こういう戦いが待ってるなら、まだまだ強化が必要だね。
砦の地下通路を彷徨き、中ボス全てを倒して稼いだEP四千余りは体力(六千八百、三万四百余り)、敏捷さ(七千六百、三万二千四百余り)に割り振る。トリオに戻り、教練場で『連撃』回数を六まで強化。二回連続行動が出来れば、両手剣と投擲ナイフで全滅させられるだろう。
武器屋に寄ると、普通の売買画面になって、新入荷の武器があった。戦斧だけど、高価で今は無理。防具屋も同様で、新入荷の金属鎧は高くて買えない。ギルドでセーブして、今回はここまで。
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「また、パラメタ弱化魔法かよ…」
溜息混じりの呟き。こういう事が前にもあったな、等とチラと思う。
「ははは、敵に神官が出てくれば、そういう事もあるだろうね」
相も変わらぬ秀人のニヤけ顔。いや、少し変わったか?どこがどう、とは言えなかったが。
「やっぱり、パラメタを強化しないとダメ、って事でしょ?」
「もちろん。ゲームの特長を考えれば、そういう方向に誘導していくのは当然でしょ?ガンガン行って貰わないと」
「…ところでさ、何で普通の人とモンスターが一緒なの?」
「ま、普通の人じゃなくて、『大いなる叡智』メンバだけどね。あのモンスターは、エドマンドの『封印瓶』で封印していたのだろうね。道具屋で売っていたし」
「おいおい、むざむざ敵に利用されてどうすんの?」
「市販されてるんだから、そういう事もあるだろうね」
肩を竦めてみせる。
「…まぁ、良いけどさ。暫く、つまんない展開になると思うけど、仕方ないでしょ?」
ともかくEPとゴールドを稼がなければならないのである。まぁ、そういう事はこれまでもあったが。
「仕方ないよね。頑張って!」
猛は肩を叩いてくる秀人の右手を、不意に掴むと握手した。
「頑張らせて貰うよ!」
シェイクハンドの後、手を離さずに腕を軽く捻る。完全な奇襲攻撃に、秀人は体を捩らせた。
「痛たたた」
机の向こう側では、名波が面を伏せつつ小刻みに震えている。
「それじゃ!」
手を離すと、「暴力反対!」などと腕をさすりつつ噛みついてくる秀人を後目に、満面の笑みと共にデイパックを取り上げた猛であった。




