第四章 ~長丁場になった・Ⅱ~
× × × ×
十一月二十一日 (月) 十八時三十分~二十二時三十分
今日から第五のダンジョン攻略に入るけど。今回もルイースの地下が舞台。
イベントで、エドマンドの屋敷で三日余りを過ごした後、ギルドに顔を出す。受付嬢と、この前は大変だった、とか話をしていると、革鎧姿の少女(十五、六歳くらい?)が話し掛けてきた。象のモンスターを倒したのは貴方か、と。そうだ、と答えると、おいおい、いきなり抱きついてきたぞ!?まさかのラノベ展開!?と思っていると、仇を討ってくれて有難う、と言われた。何の事か判らずにいると、自分はカティア、と名乗り、いきさつを説明し始めた。
十日余り前、彼女が所属していたジャッカス盗賊団が、最初に『ルイースの地下墓地』への入口を発見した。盗賊団、とは言っても盗掘集団と言って良く、よほどの事でもない限り人家を襲ったりはしない。それは彼らのモラルによる、と言うより、ギルドを恐れての事であった。ギルドには海千山千の強者達が多く登録されており、またその出自、出身地、経歴なども千差万別である。ひとたびギルドから討伐依頼が出て、それに応じた冒険者達が向かってきたならば、戦闘はおろか逃走さえままならない。となれば、盗賊と言ってもその行動内容はギルドに登録していない冒険者といった風であった。ギルドと連携がない為、冒険者ならば当然共有しているであろう危険地帯等の情報も持っておらず、時として手に負えない場所に踏み込んでしまう事がある。今回はギルドが関わる前に踏み込んだ為、それには当らないが。それはともかく、奥へと進んだ彼女達は突然、異形化、凶暴化した象と遭遇した。攻撃のろくに通らない黒い霧を纏ったモンスターに、仲間達は次々と倒されていった。彼女の父ジャッカスは、彼女に逃走するよう言い残し、時間を稼ぐ為象に向かって行った…断末魔の声を聴きながら彼女は逃走し数日間、モンスターとの戦闘を極力避けつつ散々迷った挙げ句、地下墓地を脱出する事に成功した。人心地つきどうすべきか考えた時、象への報復しかなかった。準備の為トライへやって来ると、既に象の討伐は終了したという。実際のところ、自力であの象に勝てる目算も全く立っていなかった彼女は、仇が討てず口惜しい、というより正直安堵したのであった。
上記みたいな事を、もっとラフな言葉で説明してくれたカティアという盗賊は、『お試し一号』にこれからどうするのかと問われ、ギルドに冒険者登録をした、自分の様な目に遭う人を少しでも減らしたい、という。ついては、自分を雇ってくれないかとも。「あんたについてけば、心配なさそうだし」という事だそうで。ま、信頼されてる、のかな?これはイベントなんで、自動的に話は雇う、という流れになり。と、クイルがギルドに飛び込んで来た。モンスターが地上に現れた、と。
エドマンド父娘は、まずイリスを正気に戻す為急ピッチで研究を進める事にして、クイルは引き続きルイースの調査を行っていた。と、かなりの怪我を負った冒険者がやってきて、近くのピット砦跡からモンスターが地上に現れた事を告げた。クイルは回復魔法を使うと、傷付いた冒険者の代わりにトライへ知らせに戻って来たのだ、という。ピット砦というのは、かつてルイースを守る為築かれたもので、今は土台くらいしか残っていないと。ルイースと地下通路で連絡出来る様になっていたらしいので、そこを通って出てきたのだろう、とも。今ギルドには『お試し一号』達しかいないので、ピット砦に向かってくれないか、と依頼される。当然、否応無しに向かう流れに。
まずは準備。道具屋に行き回復薬や『ノーリスク』シリーズ、ダンジョン離脱魔法のスクロール等を購入。HP、MPの強化は様子を見ながら。武器屋に顔を出すと新入荷の武器が。攻撃レンジ『中』の投擲ナイフ。ただ、柄の中に細い鎖が収納されていて、それを操る事で鞭の様に使えると。でも値段の割に基本攻撃力も最大強化倍率も低い。とりあえずパス、かな。必要体力も千五百三十六、と装備出来ないし。
ここで唐突かつ今更なチュートリアルパート2。今回は攻撃レンジについて。
攻撃レンジというのは武器やスキルによって攻撃出来る敵の距離、範囲の事だけど。種類としては『近』、『中』、『長』、『全体』の四つ。『近』は剣や戦斧など、直接打撃系が主。距離は前衛から敵前衛。『中』は上の投擲ナイフや攻撃魔法など、前衛から敵後衛、後衛から敵前衛。『長』は弓矢等の武器やパラメタ弱化魔法の様な生命魔法など。『全体』は魔術師の全体魔法や狩人の『アローレイン』等、特定のスキル、また一部アイテムも該当するとか。『お試し一号』は戦士だから、今まで『近』の武器しか装備出来なかった。魔法を覚えれば『中』までカバー出来たけど、投擲ナイフでも可能になる。ただし、一つ注意しないといけないのは、『中』と『長』の違い。『中』の武器、スキルで後衛を攻撃しようとすれば、まず敵の前衛がいない事が条件となる。『長』にはそういう条件は無し。将棋で例えるなら、『中』が香車で『長』が桂馬、っていうところ?『お試し一号』の場合、後衛の厄介な敵を排除するにも、まずは前衛を全滅させないとね。
さて、ダンジョンへ向かう。ワールドメニュー画面から『ピット砦』へ向かう。今回は地上からのスタート。上は青空、左右は崩れた壁。少し進むと広場があり、早速エンカウント。消費EP一万以上のザコモンスターが一~三体。HP三千~四千だから、多少手強くなったかな、くらい。イリス相手に四苦八苦したのが役に立ってる(口惜しいけど)。獲得EPは平均百前後。カティアも前衛、クイルは後衛って配置だから、結構手早く済ませられる。消費EP一万まで、それほどかからないかな。それはともかく。地上を進んで行くと、床にぽっかり、地下通路への入口が開いていた。下りてゆく。
地下通路は煉瓦積みの壁と床が続いている。ザコモンスターの強さが少し上がったみたいだけど、まあ問題なし。サクサクこなしながら(カティアの『アイテムスティール』を試したりするけど、まぁ成功しない)。奥へと進んで行くと、左右に扉があったりするけど大体は歪んでたりで開かない。ほぼ一本道を行く。と、カティアが制止の声を上げた。どうやらトラップがあるらしい。これまでになかった仕掛け。盗賊のスキル『トラップサーチ』は最初から習得済みで、ダンジョン内で常時起動、MP消費も無し。五感が重要で、トラップにランダムに設定された難易度と比較し、発見出来るかどうか判定される。今度のは発見出来た、っていう事。スキル『トラップ解除』で解除するか訊ねてくるけど、”いいえ”を選ぶ人、いる?『トラップ解除』にも、器用さを基準とした成否の判定がある。今回は無事、解除出来ました。こっちはMP消費あり。先に進む。たまに鍵が掛かってるだけの扉を『鍵解除』で開けて貰い中に入る。宝箱があったりアイテムが落ちていたりする。こまめに回収しつつ先に進んで行くと、大きな扉が立ち塞がっていた。カティアが鍵穴が無くて開けられない、という。右側にある扉を見れば、鍵が掛かった扉で、解錠し中に入る。一歩、足を踏み入れた途端、モンスター登場。しかも消費EP四万以上と、明らかに中ボスクラス!でもまぁ、大した事はないかな、と思ったけど。
嵌められたー!ゴリラみたいなモンスターが、後衛から魔法攻撃仕掛けてくる!ここへ来て、よりによって何でゴリラが!?これも黒い霧の影響!?まったく、どこまでご都合主義!!しかも、『お試し一号』より魔法防御力が低いからか、カティアを集中攻撃!敏捷さが低いクイルの行動順が回ってくるのが遅いから、回復もままならない!攻撃レンジ『近』の武器しかないから、手も足も出ないし。あぁ、魔法覚えとくんだったぁー!逃走を図ろうにも、背後が扉で不可!逃走には、最低背後に一マス必要なのに!!仕方がないから、HP回復薬を使用するけど、すぐ切れた。クイルに頼りすぎたー!完全手詰まり。待機するしかないままカティアのHPは瞬く間に削られて、遂に戦闘不能に。断末魔の悲鳴と共にゲームオーバー。茫然自失。また、前のセーブデータからやり直し。
ロードし直し、新章の最初から。イベントを適当にやり過ごし、まずは道具屋へ。HP回復薬を多めに購入。次は武器屋。投擲ナイフを購入。『中』の武器を、これで手に入れた。両手剣から一つ、強化パーツを外す。投擲ナイフの基本攻撃力は百二十八、最大強化倍率は十六と、何とも心許ないから、外した強化パーツを装着。ただし必要体力に達してないから、まだ装備は出来ない。何で両手剣より低スペックの武器の必要体力が大きいのか?要するに、手元から離れて操る為に振り回されない様に、とか。次に向かうのは、教練場。とりあえず火系の攻撃魔法を覚える事にする。戦士ではレベル一までしか覚えられないから、知力も上げないと。HP回復魔法も初歩的な、一割回復するものを。これで一応魔法戦士、ってね。当面は、体力と知力の強化に努めよう。やり直しになって消費EP八千余り、体力千二十四、知力七百余り。体力を最低千五百三十六、知力を一千台に、というのを一応の目標にして。配置も見直し、カティアを後衛に。
ピット砦の地上部分での戦闘も、結構歯応えがある。カティアが後衛に下がったのが原因なのは明白で、戦力の低下分は強化で埋め合わせる。地下へ突入したら、トラップが復活していたのでカティアにお任せ。少し戦ううちに、必要体力に到達。次は知力の番。あの、第一の扉へ辿り着くまでにこちらも到達。余剰分は器用さに。武器をナイフに持ち替え、いざ、因縁の対決に決着をつけるべく部屋に突入!
かなり手こずった。ナイフじゃやっぱダメージ低すぎ。『連撃』と攻撃魔法を連発してると、あっという間にMPが底をつく。カティアにMP回復、クイルにHP回復をしてもらいながら、何とか倒した。獲得EP七百余りは、器用さと敏捷さへ。『連撃』強化と連続行動の為に。部屋の奥に進むと、スイッチがあったからオンにした。外に出ると、扉は開いていた。がしかし。このまま先に進むには、余りに頼りないパラメタとしか言い様がない。ここは一旦ダンジョン出口まで戻って、少しEP稼ぎをしないと。とりあえずは体力強化かな。街に戻ってHP、MPの上限値も上げよう。来た道を戻りながらEP稼ぎしているうちに、体力は千九百余りになった。余り稼げなかったなぁ。出口から出ると、ワールドメニュー画面になる。トライへ戻り、ギルドでセーブして今日は終り。くそー、あそこでバッドエンドにさえなってなければ!
● ● ● ●




