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うちの娘は世界で一番可愛い  作者: 青葉桂都
1/4

お父さん大好き

「おとーさんだいすき」

 マナはそう言って、俺の脚に両方の手のひらを押し付けてきた。

「いい子だね、お父さんもマナのことが大好きだよ」

 答えて、頭を撫でてやろうとしたが、マナは俺の手をすり抜けて駆け出していた。

 つまるところ、簡単な話だ。

 マナはお父さんに撫でてもらうよりも、お土産が入った買い物袋のほうが気になっているのである。

 夏生まれのマナは3歳と半年ほど。

 まだお土産目当てに親にこびを売るような歳ではない。だからこの行動は『お父さん大好き、ってしたらお土産あげるよー』という俺の言葉を聞いてのものだ。

 言われたとおりに、マナは素直に大好きと言いながら俺の脚に抱きつこうとした。

 しかし、そこは3歳児。

 お土産が気にかかりすぎて、うまく抱きつけずに両手を押し付けるだけに終わったというわけだ。

「おかーさん、おとーさんのお土産ちょうだい!」

 マナが迷うことなくキッチンへと駆け込んでいく。

 うちのマンションは対面式キッチンで、キッチンとリビングの間の壁は大きな窓のようになっている。

 窓枠となる部分にポンと置いた買い物袋を、先ほど妻が回収して片付けてくれていた。マナはきちんと見ていたようだ。

「あー、ハッピーセットのおもちゃだあ!」

 歓声がキッチンから聞こえてくる。

 お土産と言っても、そもそも大したものではない。

 帰り道に某ファーストフードで買ってきた、子供向けのおもちゃ付きセットだ。

 うちは貧乏なのでたいそうなものは買ってやれないが、マナはこういうちゃっちいおもちゃでもしっかり喜んでくれる。

「おとーさん、ハッピーセット開けてー!」

 おもちゃの袋を手に、マナが戻ってきた。

「その前に、お父さんにありがとうを言わなきゃいけないんじゃなかったかな?」

「おとーさん、ありがとー!」

 俺に指摘されて、すぐに答えるマナ。

「うん、マナはいい子だね」

 本当は指摘される前に言うのが『いい子』なのかもしれない。

 だが、3歳児にはまだそこまで求める必要はないだろう。

 ……きっと、自分からお礼を言うようになったら、俺はちょっと寂しいと思うだろうし。

「はやくー! あけてあけてよー」

 おもちゃの袋を押し付けてくるマナからそれを受け取って、私は今度こそ、頭を軽く撫でてやった。


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