六話 タイトル
1時間目の終わり、僕は急いで三沢さんに近づく。早くしないとまた本を読み出してタイトルを聞けない恐れがある。僕はあの後からずっと気になって気になって仕方がなかった。
「三沢さん!ちょっと…」
「よくない。」
僕が言葉を言い終える前に否定された。そして三沢さんは何事も無かったかのように本を取り出す。
「お願い!その本のタイトル教えて下さい!」
僕は頭を下げる。
「・・・」
三沢さんは目を見開き黙ったままだ。僕の言ったことに驚いたみたいだ。・・・僕何かおかしなこと言ったかな?
「・・・ん。」
三沢さんはブックカバーを取り外し、表紙を見せてくれる。
「犠牲魔法の真骨頂?」
・・・なんだこのタイトルは…。しかも表紙には茶髪でポニーテールの少女のイラストがある。
「真骨頂じゃなくて真骨頂よ。ちゃんとルビが振ってあるでしょ。」
言われてよく見てみると真骨頂の上にオリジナリティと小さく書かれている。
「これが…、本…?」
その本は僕が知っている本とは掛け離れていた。僕の口にした言葉を聞いて、三沢さんは不機嫌そうな顔になっていた。
「すごい!こんな本初めて見たよ!」
僕は目を輝かせてそう言った。
「え?」
三沢さんは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。
「この本ってどんな事が書かれているの!?」
「!?か、簡単に説明すると、異世界もののラノベよ。」
「ラノベ?」
「ライトノベルよ。主に10代から20代をターゲットとした娯楽小説よ。ってアンタ、ライトノベル知らないの?」
「うん!初めて聞いたよ!」
ライトノベル。日本語にすると軽い小説。名前からして確かに娯楽小説とも言えるかもしれない。それにしても世の中にはこんな本があるんだ。本は大体父さんと母さんが選んで買ってきて貰ったけど、その中には全然無かったな。
「・・・アンタ、変わってるわね…。」
「ははは…。まあ、他の人よりはね…。」
僕は乾いた笑みを浮かべる。
「・・・アンタ、それどういう意味?」
・・・まずい…。どう言い訳しよう…。
「えーと…。どういう意味なんだろうね…?」
「いや、それ私が…」
キンコンカン
「あ、そろそろ授業が始まるから準備しないと!」
「・・・」
ふー。チャイムのおかげで助かった。けどこれじゃあまた聞かれそうだな…。