一話 迷子
「〜♪」
桜並木の下を鼻歌交じりに歩いて行く。今日は待ちにわびた学校だ。普通の人達からすれば嫌な学校は、僕にとっては楽園だ。
「楽しみだなー。」
学校に近付くにつれ、気持ちが高まっていく。
「ここか…。」
校門の前に立ち止まり、辺りを見渡す。部活の朝練なのか、ジャージを着て走っている団体、自分と同じように学校に登校してくる学生達、そして大きな校舎。それらがどれもこれも新鮮に感じる。
「おっと、ボヤボヤしてないで職員室に向かわないと。」
止めていた足を動かし、前に進む。そこまでは良かったのだが…。
「・・・ここどこ?」
簡単に言うと迷子になった。というかそもそもこの学校が大き過ぎなのだ。パンフレット見たけど敷地面積が東京ドーム40個分って異常すぎません?187haとか普通科しかない高校の敷地面積じゃないから。全国で一番広い敷地面積の高校って確か東京ドーム45個分じゃなかったか?しかもそこ農業高校で北海道にあるし。
「・・・どうよう…。」
とにかく考えよう。そうすればきっと何かいい案が…
「あら?どうかしましたか?」
「え?」
なんか分からないけどすっごい美人な人に声をかけられた。制服を着ているから生徒だって分かるけど大人っぽい雰囲気がある。髪は茶髪でロングヘアー。背は170ないくらいだろうか?というかおっきいです。あえてどことは言いませんが。
「うーん。見かけなかおですね。」
「あ、はい。今日この学校に転校してきたので。」
「そうだったんですね。ところでこんな所で何してるんですか?」
「あ、それなんですけど…」
ことの成り行きを彼女に話す。
「あー、そうだったんですか。確かに、この学園広いですもんね。よろしければご案内しましょうか?」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「それじゃあこちらです。」
彼女の案内で無事に職員室までたどり着くことができた。フー。ホント助かった。
「それじゃあ、私はここで。」
「はい。ありがとうございました。」
互いに礼を終えた後、彼女は踵を返して歩いていった。