OC-6. 六人目
・・・・・戦い。アルーシアにとっては、ある意味生まれて初めての戦い?
何か神狩りとか関係なくなってきたかも(汗)
「……ね、ねえ、少しだけ、もう少しだけ休みませんか?」
足取りもふらふら、姿もボロボロそんな――赤髪灼眼の少女はそう、虚空に向けた目で独り言を呟いた。
その様子からは普段の落ち着いた――或いは寝ぼけた様子は微塵もなく、まあ単なる危ないヒトである。
「……レム様のダミーに騙されるし、レム様のダミーに誑かされるし、レム様のレム様のレム様のッ! ……ついでに女神様のも邪魔されるしで、もう――散々ですっ!!」
燃えるような瞳で彼女は叫び声を上げる。
街中で突如上げられた怒声に、行きかう人々が視線を向けるが、すぐに逸らされた。仕方ない、余りにも“関わってはいけない”的なオーラ彼女から出ていたからだろう。
「……もう、もう、もうもうもうっ、――何処にいるんですか、レム様はー?」
ぼやいた。
もう“自分”の指示に従ってかれこれひと月ほど歩きっぱなしなのだから、ぼやかずには居られなかった。むしろ今の今までぼやくことすらしなかった自分を湛えて欲しいとすら、彼女は思った。
思ったが、その想いを再び口に出すより先、あらゆるものを飛び越えた理不尽は目の前に現れていた。
「ん? よ、ラライじゃないか。久しぶり~」
「……ぁ、灼眼」
一人は何処となく憎めない、だが取り立てて説明できるような所がない――優柔不断そう、以外に言葉が見つからない男。
もう一人は彼女と同じ、赤髪赤目の少女あるいは幼女と呼んでも差支えないだろう女の子。
探していた――ずっと、彼女が生まれるより前から探し続けていた二人が何とも気楽に、手を繋いで和気あいあいな感じで――あくまで彼女の曇りメガネな偏見だったが――向かってくるのだ。
一瞬本当に呆けてしまったおもいたしかたない事だろう。
けれどそんな呆ける暇すら勿体なく、彼女はすぐさま我に帰ると二人へと全力、それこそ“一瞬”でその間を詰めていた。
「逢いたかった、です――燎げ、レムさ、――りょ、れ、……」
彼女は開きかけた言葉を、三度同じ事を繰り返す事でようやく閉じた。
そして広がる――常人であれば実害にすらなりうるほどの濃厚な敵意。憐れにもそれを身に受けた周囲の人々は、何か疑問を挟むより先に地面に崩れ落ちていた。
「『――邪魔しないで!!!!』」
一声の怒声。
その言葉を聞くのはこの場には既に三人しかいなかった。
一人は当然、声を発した彼女自身。残る二人は彼女の目の前で笑いをこらえてる只管無礼な男と、状況が分かっていないのかただ無表情で佇んでいる紅の少女。
「相変わらず――と言うか、今度はまた“別”の事に忙しそうだな、ラライ」
笑いを抑えながらの男のソレはとんだ言葉だった。少なくとも彼以外から言われていたなら――取り敢えず矯正の為に半殺し程度にはしているだろう言葉。
だが、彼女にとって彼だけは例外。否、彼だからこその例外。
苦笑交じりに言われたソレに、彼女が覚えたのは怒りではなく羞恥と、何処からともなく湧き上がってくる喜びの感情だった。
「……お、お恥ずかしい所をお見せして申し訳ありません、レム様」
と、頭を下げてから、自分の姿が凄い事になっているのに気付く。
――ああ、今更だがなんて姿、なんて恰好で、寄りのもよって彼(彼女)の前に現れてしまったのか、と。
猛烈に“もう一人の彼女”を絞殺したい衝動にかられる彼女等の内心を知る余地もなく。――無論、知っていたとしても気にも留めていないだろうが。
「そんなに硬くならなくっても良いって。いつも言ってるだろ?」
「で、ですがレム様は――」
「俺は? 俺はお前の、なに?」
「……」
彼の言葉、その先に言うべき言葉を彼女は持たない。正確には、持ってはいるがこんな大衆の面前 (とは言っても全員が気絶してはいたが)で言える“告白”ではない。
彼女には黙る以外の選択肢は無かった。
「ま、気楽にいこーぜ?」
「……はい」
朗らかで締りのない――だが断じて“爽やか”ではない、気の抜け切った笑みを見て、彼女は。
ラライは、ああ、やっぱり私は――と。俯きながらも、改めてソレを自覚させられた。
◇◆◇
「――けど流石はラライだなぁ。実にタイミングがいい時に来る」
「タイミング?」
「ああ。まさか“アルーシア同盟”を、」
「――私の会員ナンバーは幾つでしょうか?」
「結成した次の日に……って、俺が言い終わる前に喋るなよ」
「申し訳ありません、レム様。で、私の番号は? 当然シングルですよね? ねっ!?」
「……」
「――レム様?」
「ああ、と言うか結成して一日しか経ってないし、会員は今の所、俺とリーゼロッテの二人、」
「三人です」
「……ああ。俺とリーゼロッテと、ラライの三人しかいないしな。まあナンバーで言ったらラライは『003』かね?」
「三番、ですか」
「ああ」
「……所でリーゼロッテって誰ですか、レム様?」
「リーゼ……? ん、ああ、“記外”だ」
「記が――、レム様!?」
「あ、いや大丈夫だって。ラライが気にするような事は何もないから。心配するなって」
「で、ですがレム様、“記外”は、」
「大丈夫だよ。――俺を信じろ、ラライ」
「――」
「……な?」
「……はい、レム様。私は他の何よりも、自分自身よりも、貴方を信じます」
「や、自分より他人を信じるのは駄目だろ」
「……――それ、本気で言っているのか時々疑いたくなります」
「うん?」
「……いえ、何でもないですけど」
「ま、俺を信じてくれるって言ってくれるのは嬉しいけどな」
「……はい、レム様――あの、所で、」
「あん?」
「……後ろで“燎原”が、その、何か激しく首を横に振っているんですが……」
「ああ、アレ。多分そういうお年頃だから気にするな」
「そ、そうなんですか……?」
「――俺を信じろ、ラライ」
「……」
「な?」
「……何か、今のでレム様を信じる気持ちが一気にがくんと減った気がします」
「何でだよ!?」
「何ででも、です。理由なんてそんなのレム様がレム様だから以外にありませんっ」
「くっ、何故……はっ、やっぱりとは思ってたけどラライ、お前まで、一度は俺を喜ばせて、それから落とす作戦かっ!!」
「……何の作戦ですか、何の」
「なんだ、違うのか。安心した」
「……あの、それで後ろで“燎原”が首を横に振っている件は、」
「ん? だから大丈夫だって。それよりラライ、」
「はい?」
「改めて、――歓迎しよう、ナンバー003,同志ラライ」
「……(ふるふるふるふるふる)」
「レム様、済みません。“燎原”の方が気になります」
神様? 何ソレ、不味いだけっスよ。
一応着々と、キーパーソン(?)を招集中。