ど?-595. 乙女×3(?)談義
スィリィ嬢、メイドさん、シャトゥ・・・・・・乙女三人か、コレ?
「はい、集合です。皆様方、集合して下さいませ」
「はい、母様!」
「……何よ、メイド」
「皆様方、既にお気づきの事とは存じ上げますが、旦那様が尻尾を出しました」
「うむ、レムが動きました!」
「ああ、アレね。ええ、気がついたわよ、と言うよりもあれに気がつかない周りの方がどうかしてるわ」
「スィリィ様、それは致し方ない事で御座います。旦那様のアレに気づくことができる御方と言えばスヘミア様、ラライ様、ミズ様、クゥワド様、キスケ様、そしてこの場にいるスィリィ様とシャトゥ……――あと乙女の直感的なモノでリッパー様、リリアン様、シンカ様が気付くか気付かないか、と言うところでしょう」
「うむ? そうなの、母様?」
「……それってどういう意味よ?」
「そうですよ、シャトゥ。そしてスィリィ様、意味と言われましても申し上げた通りに御座います。旦那様のモノは少々特殊ですので……具体的に言えば旦那様に恋しちゃっている乙女か、あるいは旦那様のご同類でしか気づくことができません」
「あ、私はレムに恋してますっ」
「ななななん、何でそうなるのよ!?」
「ちなみに私は旦那様に恋する乙女の分類で、シャトゥはどちらかと言えば旦那様の同類ですね」
「母様っ、幾ら母様でもそれは酷いのですっ、私はレムの様なHENTAI☆紳士などではないのですっ、MUTIPURI☆淑女なのです!」
「むちぷり……ねえ、それはいくらなんでも無理があり過ぎるんじゃないの、赤い子?」
「そうですね。シャトゥ、“むちぷり”とは私の様な身体つきの事を言うのですよ?」
「……母様みたいな?」
「……た、確かに」
「まあ、ですが私は無駄に色気を振り撒いたりなどはしておりませんが。ご覧の通り、清楚なメイド服ですし、何より恋する乙女ですから」
「う、……うむ?」
「――赤い子っ、何も言ったらだめよっ、思っても駄目ッ、じゃないと殺られるわよ!?」
「シャトゥ、それにスィリィ様? 何か私に仰りたい事があるのでしたら、どうぞ遠慮なく――?」
「何もありません、母様」
「何もないわ、メイド」
「左様でございますか。なら良いのです……が」
「が?」
「しっ、赤い子!!」
「――ねえ、シャトゥ? やはり私に何か言いたい事があるのではありませんか」
「……な、何もないの」
「そうですか。――スィ、」
「私も何もないわよ」
「そうですか」
「うむ!」
「ええ!」
「……」
「「……」」
「――話を元に戻すとしましょうか」
「うむ、そうですね、母様!」
「そ、それもそうねっ」
「旦那様が動きだしました。ですので今後の事を少々、相談しようと思います」
「……うむ」
「相談? 相談も何も、今すぐレムの所に行けばいいだけじゃない。今度こそ間違えないわ。ステフィア――そこにレムはいるはずよ」
「ええ、そうで御座いますね、スィリィ様。旦那様は今、十中十、間違いなくステフィアの街に御滞在なされておられるでしょうね」
「うむ、私もそう思います」
「――ですが、スィリィ様。事を焦ってはなりません。ここは少々面倒でも慎重に行くべきであると私は考えます」
「うむ、私もそう思うの」
「慎重に……? まあ、確かにレムに勘づかれてまた逃げられたりするのも癪よね」
「はい。ですので、旦那様を発見するなり文字通り空間を跳んで行こうと迂闊な行動をしたシャトゥは私が止めました」
「……たんこぶ出来ました」
「……何をどうやって止めたとか、そういうのは聞かない事にするわ」
「ご要望とあらばご説明致しますが?」
「……がくぶるがくぶる」
「遠慮します」
「そうですか?」
「……がくぶるがくぶる」
「ええ。……何か激しく震えてる赤い子見てると無性に憐れになってくるし」
「スィリィ様がそう仰るのであれば止めにしておきましょうか」
「ほぅ……うむ、それがいいの、それがいいのです、冰頂の子!」
「……私、何だか今凄い英断をした気がするわ」
「――では、スィリィ様、それにシャトゥ、話を続けましょうか」
「はい、母様」
「そうね……で、メイドは見つからないようにこっそりとステフィアに行って、レムに強襲かけようって考えてるわけ?」
「そうですね。今、私如きが提案できるのは三つ……一つは、必ず訪れる旦那様のピンチまでこっそり隠れて待ち、その瞬間にさっそうと現れる案」
「母様、レム、ピンチになるの?」
「と言うより、ピンチになる事は確定なのね」
「余り旦那様を舐めないで頂きたいっ!」
「納得しました、母様」
「ええ、私も。今のはかなり説得力のある言葉だったわ」
「はい。それでご提案の二つ目は、ピンチになるまで面倒なのでもうこちらが旦那様を罠にはめてピンチの演出をしてしまおうと言う案」
「あ、面白そうなので私はそれがいいのですっ」
「そうね。……私も、態々レムがピンチになるのを待ってるよりも、そっちの方が性にあってそうだわ」
「シャトゥ、それにスィリィ様。話は最後までお聞きくださいませ。まだ一案残っております」
「はい、母様」
「一案……そう言えばそう言ってたわね。で、残りの一つは何?」
「はい、三案目は、旦那様の凛々しいお姿を隠れて見守り拝見する、でしょうか。そしてその後にフルボッコ」
「フルボッコ……――良い響きなのですっ!」
「……成程。どれにするのか決め難いわね」
「ちなみに私は当然、今挙げた全てを選びます」
「流石母様なのです!」
「っていうか、初めから全部する気なら提案した意味ないじゃない」
「それもそうですね」
「そんな所も流石母様なのです!」
「――……まあ、良いわ」
「それでスィリィ様? スィリィ様は如何なさるおつもりですか? 可能ならば、私にご協力願いたいのですが。スィリィ様がおられれば、出来る事に“色々と”幅が広がりそうですし」
「母様っ、ねえ、私は? 私には聞かないの? ねえ、母さ、――ゴメンナサイ、ナンデモナイNOOOOO~」
「…………そうね、中々面白そうじゃない。先ずは話から聞かせてもらうわ。それで気に入らなかったら、」
「スィリィ様であれば間違いなく気に入られると、解っております」
「うむ、解ってましたよ? 私は初めから母様に協力するのですね? うむ、そんなこと知ってたのです」
「――言うじゃない。それだけの自信……なら、早速聞かせてもらおうかしら?」
「ええ。スィリィ様――少々お耳を拝借……シャトゥもこちらに来なさい」
「――レム弄りの密談ですねっ! はい、母様っ」
「……聞きましょうか」
……密談、密談。
一方その頃のメイドさん達、みたいな感じ?