ど?-593. ある意味釣りの真っ最中
二人でのんびり、ティータイム
「……ふぅ、ちょっと疲れた」
「……?」
「ん? ああ、戦士の休息――時には必要だろ?」
「……?」
「や、そこで『誰が戦士?』見たいに不思議そうな顔しないでくれ、アルア。俺だよ、俺。俺の事。てか俺以外いないだろ」
「……(じー)」
「なっ?」
「……(ぷいっ)」
「……ふ、ふふ。ふふふふふ、良いんだ、別に。アルアがそんな態度取ってても、心の中ではちゃんと俺の事を分かってくれてるって知ってるから、良いんだ、別に。……良いんだ」
「……(こくこく)」
「……、ふー。しかしなかなかいい塩梅で餌に寄ってたかってくるよなー、ヤツら」
「……?」
「流石、伊達に腐臭は出してないぜッ」
「……腐臭言うな」
「ん? ああ、別にアルアの事を言った訳じゃないからなー?」
「……(こくん)」
「しかしちょいと本気で探してみただけでこうもぽろぽろと見つかるとは、正直予想外だったな」
「……?」
「んー、でもこのまま放置しとくときっと、冰頂とか点睛とか灼眼とか……流石に透怒はこないと思うが……」
「……スィリィ?」
「ん? アルア、スィリィの事覚えているのか?」
「……?」
「違う? えっと、それじゃあ……ん? どう言うことだ?」
「……?」
「あれ、もしかしてアルア、最近スィリィに会ったりした?」
「……(こくん)」
「そうか。……世間は狭いなー」
「……(こくん)」
「この調子じゃ、スィリィとかシャトゥとか、おまけにあいつあたりが出くわしたりしてたりな――ッて、そんなピンポイントは流石にないか」
「……?」
「まっ、いいさ。会ったら会ったで気が憂鬱になりそうな三人トリオの事なんて今は考えるだけ時間の無駄だっ」
「……(ふるふる)」
「いいのっ。今はアルアと一緒にのんびりタイムな気分なんだよ」
「……(じー)」
「うん、アルア。今は嫌な事全部忘れて、楽しもうっ」
「……全部?」
「そう、全部だ」
「……(じー)」
「……――お願いだから俺の事も忘れるとか、そういう発想はしないでくれな?」
「……(こくん)」
「ほっ」
「……(じー)」
「? アルア、どうかした? 俺の顔に何かついて――ハッ!? ま、まさか遂にアルアが俺の凛々し過ぎる横顔に見惚れて!?」
「……(じー)」
「……何の反応もない」
「……(じー)」
「あの、アルア? 本当にどうかしたのか?」
「……(じー)」
「えっと。な、なんだ?」
「……(こくん)」
「満足した? は? え、何が?」
「……」
「……何だかよく分からないが、俺にとって悪い事じゃない気がするので気にするのは止めよう」
「……(こくん)」
「そう言えばアルア、アルアって釣りってした事、あったか?」
「……首吊り?」
「違う。つか何でんな恐ろしい単語が出てくるんだよ」
「……?」
「ま、どうせシャトゥかあいつのせいだろうけどさ。……ヤツら、ゼってぇ後でシメてやる」
「……」
「あ、んで話を元に戻すけどさ。釣りってさ、魚を釣ってるときもそりゃたのしいんだけど、今みたいな感じに待ってる時もそれはそれで楽しいんだよな」
「……?」
「何が言いたいかって? ま、こうやってアルアとゆっくりのんびりなティータイムも悪くな――否、むしろ最高っす!!」
「……」
「と、言う事を俺は言いたかったんだ。分かってくれたか?」
「……(ふるふる)」
「そうか。……それは残念だ」
「……(こくん)」
「ま、それはそれとして。今度川にでも立ち寄った時に一緒に釣りしような、アルア?」
「……」
「釣りは楽しいぞー。何と言っても只管のんびりぐったりと惰性に過ごせる。しかも釣りしてるっつーことで文句を言われない! ――……いや、昔あいつに『こちらの方が早いですね?』とか言って川ン中放り込まれた事はあったけどさ、しかもそっちの方が確かに大量だったけどよっ」
「……(じー)」
「――て、はっ!? いつの間にやらあいつの想い出が勝手に!? な、なんて恐ろしい事を」
「……(じー)」
「とっ、兎に角っ。釣りは楽しいものだからっ、今度一緒にしような、って話なんだ。な、アルアっ?」
「……(こくん)」
「よぅぅしっ、約束だからな? 今、ちゃんと約束したからな? 嘘とかそういうのは無しだからなっ!?」
「……(ふるふる)」
「有りなのかよ!?」
「……(こくん)」
「しかも肯定!?」
「……(こくん)」
「……、ま、まあ良いや。取り敢えずは約束したって事で良しにしておこう」
「……」
「っと、それならそう言えば、だけど。ちなみにアルアって釣りってどんなのか知ってるのか?」
「……(ふるふる)」
「あのな、釣りってのは、何かこう、うにようによっとした虫を針に通してだな、それを川の中に入れるんだ」
「……」
「それで、――待つ。ひたすら待つ、獲物がかかるまでずっと待つ。まあ、時々うにょうにょな虫をクニクニしてみたりとかするけどな」
「……(こくん)」
「んで、魚がかかったら、思いっきり引き上げる。――どうだ、楽しそうだろっ!?」
「……(ふるふる)」
「――ふっ、仕方がないな。アルアには未だ釣りの高尚さは理解できないか」
「……」
「いざって時には俺が手取り足とり教えるから別に良いんだけどな、はははっ!!」
「……(ふるふる)」
「ん? 何だ、アルアは自分一人でやってみたいと?」
「……(こくん)」
「そうか。でもなぁ……無理だと思うぞぉ? いきなり初めから一人で釣りは……ちょぉぉと、むりなんじゃないかぁ? ――……あぁ、そう言えば何処ぞのヤツは釣り始めて半日もしないうちに『私は籠が一杯になってしまったのですが、おや、旦那様は未だ一匹も……?』とか抜かしやがったが。思い出すとムカついて来たな、おい」
「……(こくこく)」
「ん? アルアも同じように頑張るって?」
「……(こくん)」
「ゃ、流石にあいつと同等は無理だと思うが……まあ? アルアの可愛さなら不可能も可能かもなっ!」
「……(ふるふる)」
「ふぅ、しかし……――お?」
「……?」
「アルア、また一人発見した。それじゃちょっと行こうか」
「……拉致?」
「違うよ、全然違うよっ!?」
「……?」
「……ヤバい、何かアルアに、限りなく拙い勘違いをされている! な、何とかしないとっ」
のんびりまったり。……メイドさんが脳裏に張り付いて離れないレム君であります。