CC. 一人目
OC = Open Conbat 戦闘開始?
CC = Close Conbat 戦闘終了?
「……あれ?」
私、何してたんだっけ?
気が付くと知らない所で寝ていた女性――ジェニファは、隣に誰かが寝ている事に一瞬身体を強張らせたが、すぐに力が抜けた。
赤い髪の女の子がすやすやと眠っていた。
「……(すぅすぅ)」
「――ふふっ」
何となく心和む寝顔だ、と思いながらも改めて どうしてこんな事になっているのかを思い出し、……そうしようとしてここしばらくの記憶が抜け落ちている事に気がつき愕然とした。
最後に覚えているのは、近所のパン屋へ朝食を買いに家を出た所まで。その後で何かに遭った――様な気もするがしばらく唸ってもはっきりとした確証を得られる事はなかった。
「ん?」
「……?」
さてどうすればいいのかと、ジェニファが途方に暮れ始めた辺りで丁度タイミング良く、一人の男が現れた。特に目立った特徴もない、強いて言うならばへたれっぽい雰囲気が漂っている気がする男だった。
お陰で――妙に警戒心を持ち難い。
「お、起きた?」
彼はジェニファの事を見知っている風に寄って来たが、少なくとも彼女には見覚えはない、知らない男のはずだった。
「こ、ここは何処なんですか?」
「ここ? ステフィアの宿屋」
ステフィア――男の口から自分の住んでいる街の名前が出て安心するも、今度はそもそもどうして宿屋などに自分はいるのかという疑問が湧いてくる。
「えっと……?」
「んー、その様子からするともしかして記憶がなかったり?」
「な、何の事ですか……?」
「おねいさん、ここしばらくの記憶が抜け落ちてるとかない? いや、それよりも状況説明が先か。おねいさんはさ、ちょいと悪いモノに憑かれていてな」
「わ、悪いモノ?」
持病、は少なくとも持っていなかった筈だけれど、と思い起こしながら。
「ああ。まあそっちは俺が完全に消滅したから問題ないんだけどさ。その時、“ついで”に記憶の方も吹っ飛んだかもしれないなーって思って、おねいさんを混乱させるのも可哀想かなって思ってちょいと起きるの待ってたんだ……ああ、アルアの方は待ち切れずに寝ちゃったかー」
目の前の男が言う事は良く理解できなかったが、少なくともここしばらくの記憶が抜け落ちている原因が目の前の男であること……そして傍で寝ていたこの愛らしい少女の名前が『アルア』らしいと言う事は分かった。
「ま、事後説明は必要でしょ、って事で。さ、おねいさん、混乱しているだろう所悪いけど、二・三質問に答えてくれないかな? ああ、それと俺は別に怪しいモノじゃないぞ。 まあ、……――スズタケって言う薬師だ」
「薬師、ですか……?」
「そ。だから医者っぽい事も時々しててな。おねいさんの場合はこうして事後承諾になっちゃったけど、ちょっと冥了は危険性が高かったからなー、勝手に治させてもらいました」
「……」
「じゃ、先ずは一番重要な質問をしておこうか。おねいさん、」
「は、はい……」
「お名前は?」
「……、はぃ?」
「だから、名前はなんて言うのかなって」
「は、はぁ……?」
「あ、その様子だと分かってないね? 名前、重要だよ、第一いつまでも“おねいさん”じゃ、何と言うか他人行儀じゃないかっ!」
「他人ですけど?」
「ぐっ……、そう、そしてその他人を知り合い、もしくはそれ以上? まで引き上げるためにもおねいさんの名前を聞くのは最重要課題って事で――で、名前はなんて言うの?」
「……ジェニファ、ですけど」
「ジェニファ、ジェニファ……ね。うん、良い名前だね、ジェニファ」
「……はあ」
一つだけ、ジェニファは目の前の男に対して分かった事がある気がした。
何と言うか、もう最高に……もう色々と駄目な男と言う事が分かった。理由は特になく、直観的にだが恐らく間違っていないだろう。
「ん? 何か途方もない程バカにされている気がする」
「……気の所為じゃないでしょうか」
「そうか?」
「はい、多分。……このヒト、勘だけはいいのかしら?」
「ま、いっか。じゃあ次の質問に入ろうか」
「はーい」
「……あれ? 何かジェニファから恐怖とか緊張とか、その辺りの気が抜けたような?」
「あ、はい、そうですね。そうかもです」
「……ああ、流石俺っ。フレンドリーシップが溢れすぎてたんだなっ、はははっ!」
「……かもしれませんねー」
「と、言う訳でお互いの新密度が一気にアップした所で、ジェニファ」
「新密度……?」
「じゃ、まあそれなりに重要な質問に移ろうか」
「あ、はい」
「身体に何処かおかしい所は? 何か異常とか、気持ち悪いとか調子悪いとかはある?」
「えっと……いえ、特にないと思います、けど」
「けど? 何か思いついた事があるなら素直にどうぞ? 何気ない事に重要な事が含まれてる可能性もあるしさ」
「は、はあ、でも……」
「おっけ、おっけ。俺に遠慮は良いから、素直にどーぞ」
「…………わたし、何で裸?」
「俺の趣味づっ!?」
「――この変態っ!! 私の純潔を返せっ、返せッ!!」
「や、ま、ちょ、」
「この、このっ、このぉ!!!」
「いや、だから、ちょ、今のは冗、軽いジョーク、ジョークだからっ!!」
「あ、はい。私も冗談です。何となく、あなたにそんな度胸はない気がしますし?」
「――何だとこのっ、俺を舐めるなよっ!?」
「舐めているわけでは……」
「いいさ、いいだろうっ、お望みとあらば襲ってやるさ、今すぐジェニファ、キミを襲って――」
「……(じー)」
「はっ!? アルア、一体いつから起きて!?」
「あれだけ騒げば誰でも起きると思いますけど……?」
「いや、そこはアルアだから」
「……は、はぁ」
「……(じー)」
「さて、それじゃジェニファ。身体の何処にも影響はなさそうだったし、後遺症もなさそうだ。良かったなっ!」
「はい?」
「さ、アルア。ジェニファのおねいさんも無事ってのが分かった所で、俺らは次に行こうか。じゃ、ジェニファ、そういうことなので、俺はこれで」
「あ、いあ、ちょっと待って! と言うより説明はっ!? 今の状況に対する説明はどうなったの?」
「――ジェニファ、良い事を教えてやろう。俺に一番大切なのはアルアの機嫌を損ねない事なんだ。悪いな」
「わ、悪いなって……」
「……(じー)」
「あ、アルア、ちょっと待ってろな? ちょいとジェニファと話をつけてから――」
「……駄目。ちゃんと説明して」
「よぅし、ジェニファ。好きな事を聞いてくれっ、何でも俺が質問に応えてやろうっ!!」
「……はい」
「……何だかなぁ」
何と言うか、緊張感はないのだけれど、どうしてこんな事になっているのだろう――と思わずにいられなかった。
真面目は続かない。それがレム君のクオリティ