59. どれいと追跡者
~これまでのあらすじ~
覗きの罪で色々と捌かれそうになったレム。それを助けたのは十二人の変態だった!?
(いえ、違います。マイファ国のそれはもう美しいと評判のお姫様達です)
そんなこんなでちやほやされてるレム……コレは一体どんな夢だ!?
マイファ国の十二人のお姫様の説明。……長いですが。
長女:リッテスラ・・・苦労人。
二女:ミスト・・・むねのヒト。
三女:ゲイツィート・・・一応、運動が得意。
四女:ルルネル・・・・勘が鋭い。
五女:ニャイハ・・・ナイ乳っ娘。
六女:チュール・・・一言多い……けど愛されてる子。
七女:イリュミ・・・深窓の令嬢っぽい感じの子。でも実は魔法が得意。
八女:ツバルィ・・・深窓の令嬢っぽい感じの子2.でも実は身体動かすの好き。一番すばしっこい。
九女:アステル・・・胸が気になるお年頃?
十女:クロフフィーネ・・・寡黙?
十一女:キクカ・・・双子の姉。
十二女:シマ・・・双子の妹。
シンカ・・・もう人生転落中の元(?)予言の巫女の偉い子。……見る影もない。
「「「「「「「「「「「「――」」」」」」」」」」」」
「……ん?」
「ヘムさんっ!」
「ヘムさん言うな、シンカ」
「そんな小さな事はどうでもいいんですっ」
「いや、小さくないし」
「そんな事よりもっ、ヘムさんはどうしてそういつもヘムさんなんですかっ、私の事が欲しいって、そう言ったじゃないですかっ!」
「「「「「「「「「「「「――」」」」」」」」」」」」
「……ん?」
「ヘムさんの嘘吐きっ」
「いや、待てシンカ。そもそも俺はそんな事言って覚えはないぞ?」
「責任とってくれるって言いました!」
「あ、それは言ったな、うん」
「私にキキキ、キスした責任ちゃんと取っ、」
「「「「「「「「「「「「――キス!?」」」」」」」」」」」」
「レム様はそれはどう言う事ですか!?」
「詳しく話を聞かせてほしいですっ、レム様!!」
「どんなだったの? レモンの味? それともイチゴ?」
「レム様っ、私にも私にもっ」
「あ、ずるいわよ、リッテスラ! 私だって――」
「「「「――ニャイハ姉様っ、抜け駆けは許さないっ!!」」」」
「「レム様ー」」
「……キ、キスって言うとその、あの唇と唇の、マウストゥマウしゅぅぅ……ドキドキ」
「ああ、うるさいっ。十二人が同時に騒ぐなっ、うるさくて敵わんっ!」
「「「「「「「「「「「「――」」」」」」」」」」」」
「……って、何で俺が睨まれてるんだよっ」
「……ヘムさん、それ本気で言ってます?」
「あん? そりゃどう言う意味だ、シンカ」
「……そもそも、リリシィまで名を轟かせているマイファ国のあの十二美姫とヘム、もとい変態なレムさんが知り合いだった事は凄く驚きなんですけど、それはレムさんって事で納得しておきます」
「何だか微妙にバカにされた気がするぞ」
「してません。むしろリリシィ共和国の奥の奥、巫女の間にまで侵入してきたレムさんには凄い驚きと……それ以上に呆れかえってるだけです」
「何だろ、やっぱり馬鹿にされてる気がする」
「してませんって。そんな事よりも、レムさん……まさか本気で気付いてないって、言いませんよね?」
「気付いてない?」
「――」
「……ああ、アレ、アレね。それはら当然気がついてるぞ」
「……本当にですか?」
「何だ、親愛敬愛純愛して止まないはずの俺を疑ってるのか?」
「はい。――それと別に親愛敬愛純愛とかはしてません」
「何、照れる事はない」
「照れてません。あ、愛とかそういうのは夫婦生活で培っていけばいいだけですからっ。だから今はまだべっ、別に……」
「「「「「「「「「「「「――夫婦生活?」」」」」」」」」」」」
「……ん? また妙な気配が」
「と、兎に角ですねっ」
「ふっ、まあ仕方ない。シンカが照れてないって言うのならそういう事にしておこう。何、大丈夫、その内ちゃんと素直になれるようにし調教てやるからさっ!」
「ちょ、調教とか言わないで下さいっ!!」
「……ねえ、聞いた、シマ? 調教だって」
「うん、聞いたよ、キクカ。調教だって」
「シマにキクカッ!? そ、そんなは、はしたな――」
「「ミスト姉様、キョウミシンシンなくせに」」
「イリュミ!! ツバルィ!!」
「……良いなぁ、レム様の調教。私も受けたい」
「アステル! ……そういう事は思うだけにしておきなさい」
「はい、リッテスラ姉様」
「っ、そうやって話をはぐらかそうとしたってそうはいかないんですからっ!」
「いや、別にはぐらかそうとかはしてないぞ? 俺は思うがままの事を口にしてるだけだ」
「レム様、それを妄言垂れ流しと言います」
「うるさい、クロフフィーネ」
「……叱られました」
「クロフフィーネ姉様、何だか嬉しそう」
「うん、嬉しそう。そして羨ましい」
「ふっ、まあとにかくだ。アレにはちゃんと気がついてる。気がついてるともさ、うん」
「……ならアレとか言わずに、気がついてるのが何なのか、言ってみて下さい」
「うん? ああ、良いぞ」
「……」
「ってか、大丈夫。流石にアレだけ直球の好意に気がつかない程俺は朴念仁じゃない」
「あ、一応ちゃんと気がついてたんですか」
「……おい、シンカ。お前は俺の事をどう言う目で見てるんだ」
「どう言うって……変態レムさん、みたままその通りじゃないですか」
「改めて言うのもなんだが訂正しておこう、俺は変態じゃない」
「女の子の裸を覗くのが大好きなくせにっ!」
「――むしろそれは男として当然だと言っておこう! 覗き上等じゃねえかっ!!!!」
「「「「「「「「「「「「「――」」」」」」」」」」」」」
「……ん? 何か四面楚歌な雰囲気? いや、今のは間違いなく全世界の男の代表として真っ当な主張をしただけだぞ」
「……やっぱりヘムさんです、レムさんサイテーです」
「で、ですが覗きは殿方の甲斐性と言いますし、……そ、それにレム様ならば私は」
「リ、リッテスラ姉様?」
「リッテスラ姉様がいつになくやる気です!?」
「眠れる獅子が起きちゃった!?」
「あ、あのリッテスラ姉様が……」
「「負けてられないっ!」」
「お、何か知らんが追い風ムード?」
「ヘムさん!!」
「って、冗談、軽い冗談だって。そうぷりぷりするな、シンカ」
「……変態なレムさんがいっぱいいっぱいだらしない顔してるからですっ」
「ふっ、……――と言うかふと気がついたんだが、俺って今とてもつもなくモテてたりしね?」
「は? ヘムさん、急に何を、」
「俺の事を取り合う十三人の女の子たち……おお、何だか素敵な響きだ」
「レっ、レム様!!」
「ん? どうかしたのか、リッテスラ」
「レム様、わた、」
「――ふんっ!!」
「しぎゅ!? ……ゲ、ゲイツィート、あな」
「盟約違反だと思います、リッテスラ姉様」
「……ぅ、」
「……、……あのさ、ゲイツィート」
「何でしょうか、レム様」
「リッテスラ、大丈夫か? あと盟約って何だ、盟約って」
「リッテスラ姉様は大丈夫です。少々暴走気味だったので、きつく気付けを打っただけですから」
「……アレで気付けって、随分過激だなー」
「それと盟約は……秘密です。恥かしいので言いたくありません」
「恥かしい内容なの?」
「……取りようによっては」
「何か俄然、興味が出てきたんだが、その盟約とやら」
「秘密です」
「そこを何とか」
「秘密です」
「そう言うわずにさ。な、ゲイツィート?」
「……秘密で」
「「「「「「「「「ゲイツィート姉様ばっかりレム様と話してずるいっ!!」」」」」」」」」
「……さっきのリッテスラ姉様は自業自得だと思うけど、ゲイツィートも今のはずるいと思います」
「「「「「「「「「ミスト姉様の言うとおりです、ゲイツィート姉様っ!!」」」」」」」」」
「……――ふふふふふふふふふふふ、仕方ないな、お前ら。俺と話してばかりで羨ましい? そういう事なら全員同時にカマンだぜッ、さあ来い、たかが十二人、この俺が受け止めてやるっ!!」
「ヘムさん、何だか気味悪いです」
「そ、そういう事でしたらレム様、私……」
「ミスト姉様ッ、抜け駆けは……」
「一番ノリは私ですっ、――レム様ッ!!」
「っと。急に飛びこんでくるなよ、ニャイハ。危ないじゃないか」
「……ぇ、えへへへ♪」
「それと胸が押し潰されて凄い事に」
「~~ッッ」
「「「「「「「「「――レム様!!」」」」」」」」」
「ヘムさ、――あ、出遅れた」
「――は? ゃ、確かに全員同時とかアホっぽい事言ったけどさ、本当に十一人全員ってのはちょいと無理があ、ぎゃあああああああああああ!!!???」
「あ、ヘムさんが押し潰された。……でも何だか嬉しそうな顔してるのはやっぱり変態なレムさんなんです。う、浮気は駄目なんですからねっ、レムさん!!」
◇◆◇
「……で、だ。取り敢えず全員、釈明を聞こうか」
「あ、あのレム様? どうして私たち全員、縛られているのでしょうか?」
「それはレム様の趣味――」
「ルルネル、黙れ。それと縛ってるのは収拾がつかなくなるからだ。全員大人しくしてもらう」
「お、大人しくって……つまりそういう事ですか? 今からレム様に『大人しくしないといけない』様な事をされてしまうと言う、」
「みっ、ミスト姉様、それ本当っ!?」
「は、初めてをこんな大勢でって……はぅ」
「ミスト、黙れ。ニャイハ、興奮するな。あとアステル、違ぇから変な妄想するな。――あと予め言っとくけど、他の奴らも少し黙ってろ。話が先に勧められない」
「「「「「「「「「「「「「――」」」」」」」」」」」」」
「もう良い、釈明はめんどいから後にする。それよりもこれからのコトだな。何か俺、今スフィアから指名手配受けてるっぽいし。……心当たりはないんだけどなー」
「「「「「「「「「「「「「それ、絶対嘘」」」」」」」」」」」」」
「……訂正。心当たりはあり過ぎて判断つかないんだよなー?」
「「「「「「「「「「「「「納得しました」」」」」」」」」」」」」
「ってコレで納得するのかよッ、お前ら!? ホントっ、俺の事どう言う目で見てるのっ!?」
「「「「「「「「「「「「「……そ、」」」」」」」」」」」」」
「ゴメン止め、やっぱり今のなし。聞く勇気が俺にはないから言わなくていい、と言うか大体想像つくし。進んで罵りを受ける程俺はバカじゃない」
「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」
「ヘムさんはレンタイヘムさんです」
「はい、シンカー? そこは空気読め。あと俺は変態じゃねえ。まあ、不幸な事故ってのはいつの世も数多くあるモノだったりするけどな」
「「「「「「「「「「「「「――不幸な、事故?」」」」」」」」」」」」」
「ああ、そうだよ、事故だよ、事故。事故で悪いか、悪いのか、テメェら、ああん!?」
「「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」」
「……っと。それはいいとして。今後のことだ。少しは真面目に話し合っておかないとな。――まあ、お前たちのお陰でクリスから逃げられたのは僥倖だったんだけどな、」
「いえ、当然のことをしたまでです、レム様」
「「「「「「「「「「「はい、レム様」」」」」」」」」」」
「……いやぁ~」
「シンカは別に何もしてないから。どちらかと言うと俺の足引っ張ってたから。だから照れるな」
「ぶー!」
「この子ばっかりレム様と楽しそうに……」
「そう言えばこの子って、レム様と一緒にいた、つまり一緒に旅をしていた――!?」
「ふ、二人きり?」
「「「「「「「「「「――二人きり!!??」」」」」」」」」」
「……え、あ、その、……な、何でしょうか、マイファの姫様方? わ、私何か悪いことしました?」
「「「「「「「「「「「「――じー」」」」」」」」」」」」
「ああもうっ、だからそういうのすると話が進まなくなるから止めろって言ってるんだよ、俺はっ。そういうごちゃごちゃしたのは俺のいない所でやれ。シンカの扱いについては死なない程度なら許すからさ」
「ちょ、ヘムさん私を見捨てるんですかっっ!!??」
「「「「「「「「「「「「「はい、分かりました、レム様」」」」」」」」」」」」」
「ほほほ、ほらっ、マイファの姫様方、何かすっごくいい笑顔を浮かべてる気がするんですけどっ、私、凄い身の危険を感じるんですがっ!!」
「流石に殺されはしないから大丈夫だ、シンカ。……ふぁいとっ」
「そんなぁぁ――!!??」
「……――で、だ。もう問答無用で話を先に進めるからな? これからの事なんだが、俺を助けてくれたお前たち――マイファ組には感謝してるけど、正直な話これ以上はお前らの手に余る。ありえないと思うけど最悪な話、スフィアから敵性国家扱いされたりしたらたまんないだろ、お前ら」
「そ、それは……」
「「「「「「「「「「「「でっ、ですがレム様――」」」」」」」」」」」」
「まあリッパーに限って俺の癪に障る愚行をするとは思えないけど。他の年寄りとか、野心ある馬鹿どもとかがどう動くか分からない以上、――これ以上余りお前たちに関わらせたくないと俺は思ってる」
「そんな、レム様っ、レム様の事でしたら私たちは別に、」
「――止めとけ、リッテスラ。もし、仮に、万が一、お前らにもしもの事があったりしたら血の雨降るぞ、絶対」
「「「「「「「「「「「「「――っ!」」」」」」」」」」」」」
「と、まあそれに他にも理由はあってだな。やっぱりお前ら相手じゃ全然、全く、微塵も歯が立たない、っつー、そういうことだ」
「「「「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」」」」
「――見つけたぁぁ!!!!」
「「「「「「「「「「「「「――!!??」」」」」」」」」」」」」
「……チッ、やっぱりあの程度じゃクリスを完全にまくってのは無理だったか。まー、そういうのやらせりゃ、マデューカスの次辺りに得意だしなー、クリス」
「レムッッ、その首獲ったる!!!!」
「何か既に殺る気に!? ――ちっ、そういう訳だからお前ら、またなー? あ、その縄はしばらくすれば勝手に切れるから安心、」
「れぇぇぇぇむぅぅぅぅぅぅ――我の守護する五天の標よ、火・水・地・風、四方、万物。その一片より外れし若草よ、混沌と混ざりて害なき悪を断てっっ」
「おまっ、いきなりそんな、……――チィィ、シンカッ、逃げるぞっ!!」
「え、あ、……は、はいっ!!!!」
「あんなの打たれちゃたまったもんじゃねえ、つか、周りの被害考えてねえしっ。……もしかして空腹でキレたか、あいつ?」
「……て、あれ? そう言えば、私は別に逃げなくても良い様な気が……」
「あははははっ、――既に手遅れだ、シンカ」
「そんなー!!!???」
「滅びの槍――“ミストルティン!”、せぇぇい、……やぁぁ――!!!!」
「――シンカ、ちょっと、行くぞ。舌噛むなよ?」
「ぇ」
「「「「「「「「「「「「レムさ――」」」」」」」」」」」」
≪Fall――故に、それは美しい≫
「……外したか。流石はレムね。絶対命中精度を誇ってる筈のアレをかわすなんて。――いや、かわしたというよりあれは……消した? いえ、それこそまさか、よね」
「「「「「「「「「「「「レム様!!??」」」」」」」」」」」」
「……それよりこの子たち、どうすればいいのかしら? と言うか、何? このウサ耳バニーの変態の群れは。しかも縄で縛られて、あ、コレはレムの趣味か」
「「「「「「「「「「「「変態じゃありません! 怪盗“うさぎぴょんぴょん”です!」」」」」」」」」」」」
「……変態で十分ね」
「「「「「「「「「「「「違います!!」」」」」」」」」」」」
「なら自分たちの姿をよく見てからもう一度言ってみなさいよ」
「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」
「で?」
「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」
「と、言う訳で変態決定ね、あなた達」
「「「「「「「「「「「「……はい」」」」」」」」」」」」
◇◆◇
「さて、と。これからどうするかなー? やっぱりまずはアルと感動的な再会して、裏切り者のレアリアにきつぅぅくお仕置きして、それからアルと感動的な抱擁を交わしてっ、だな!」
「……死んだ。私、今、間違いなく死にました。もう絶対です。ああ、ここは天国か何か何でしょうか。……でもヘムさんもそこにいるし。私たちって、夫婦になっちゃったから死んでも一緒なんだ、……うぅぅぅぅ」
「死んでないぞ、シンカー。天国とかじゃないし、今は取り敢えず必死に逃亡中だから、俺ら。あと夫婦とか言う事実も勝手にねつ造しないように」
「……あんな馬鹿みたいにありえない魔力の攻撃、絶対死ぬに決まってます。いえ、決定です」
「そうか? アレ以上なんて俺は日常的に見てる気がするぞ? 主に何処ぞのメイドの所為でっ!! ああ、何か思い出すと腹立ってきたなぁ!!」
「だからここは天国なんです、あ、いえヘムさんと一緒だから地獄?」
「それはどう言う意味だ、シンカ」
「ひは、痛い痛い、レムさ……あ、あれ? 痛いって事は、もしかして私まだ生きてる?」
「応。だからそうだってさっきから言ってるだろ?」
「あ、う、……でもあんな、……」
「ま、難しくは考えずにさ。今は生きてるって事に満足しておけばいいさ」
「…………そうですね」
……ふー
非常に(一日程)遅れました。申し訳ないです。