ど-586. 愛されてる?
誰が、とは言いません。
誰を、とも言いません。
レム&アルーシア。
「……あふぅ」
「……?」
「っと。つい気が抜けてしまったぜ。いや、アルアには恥ずかしいところを見せたな」
「……(ふるふる)」
「――と、こんな感じで適度に弱味みたいな所を見せて最近停滞気味のアルアの好感度をアップ! どうよ!?」
「……、(こくん)」
「お、おおおぉ、――マジで!?」
「……(ふるふるふる)」
「いやっ、どっちなの!? そこ重要な所ですからっ、焦らさずに俺に教えてっ、プリーズ!」
「……?」
「くはっ、――その無垢な姿が俺のハートをブレイク……いやぁ、日頃から散々腹グロだったり違う方向に純真潔白だったり、単にイタいだけの神もどきと違ってアルアとこうしてると癒されるなぁ」
「……シャトゥルヌーメ様は神モドキじゃない」
「お? あ、アルアが俺に反論を? ……え?」
「……シャトゥルヌーメ様はシャトゥルヌーメ様」
「え、あ、まあ、確かにシャトゥはシャトゥな訳だが、残念過ぎる所とか永遠のイタい幼女だったりする所とかも」
「――そこが良い」
「……あれ、おかしいな? 何か俺、幻聴が聞こえるのかもしれない」
「……?」
「アルア、ご免。今のセリフをもう一度言ってもらえるか?」
「……?」
「だから、シャトゥはああいう非常に残念な存在であるわけだが、」
「――そこが良い」
「……」
「……」
「……」
「……?」
「ア、アルーシアッ!! それは駄目だっ、それはフレッシュな輩の陰謀だ、洗脳されてるんだっ!!」
「……、」
「な? だから考え直せっ。今ならまだ間に合う、いや俺が間に合わせてみせるからっ!!」
「……(ふるふる)」
「ぁ、――アルーシアがぁぁぁ!!!??? 俺の可愛いアルーシアがっ、惨いっ、惨すぎるっ!!」
「……」
「神よっ、これは一体どう言う仕打ちかっ!? ――……いや、一度本気で問い詰めてくるか」
「……(じー)」
「あ、アルア? ちょっと待ってろよ? 今すぐ、俺が元凶をとっちめて来るからな? んでその後、アルアの目の前で土下座して平謝りさせるから、」
「……!」
「イテッ!?」
「……(むー)」
「――アルアにぶたれた!? 母親にだってぶたれ……まくってたか。てかぶたれるだけならあいつとかスィリィとかリリアンとか……思い出すのに事欠かないな。あれ? 何か目から心の汗が出てくるよ?」
「……(むー)」
「うぅ、痛いよぅ。特にアルアにぶたれた頬とか、その辺りがとっても痛いよぅ。ほら、ちょっぴり痣になってるし?」
「……(むー)」
「もうっ、ちゃんと責任取ってよねっ!」
「……(むー)」
「……」
「……(むー)」
「あ、アルア?」
「……(むー)」
「そ、そんなに睨まなくても。ほ、ほら、アルアにペチンされた頬だって実はそれほど痛くはない――いやゴメン、強がりました。めっちゃ痛いっス。身体じゃなくて、心が引き裂かれそうなくらいに胸がズキズキしてます」
「……(むー)」
「……ぉ」
「……(むー)」
「――全部俺が悪かったですっ、だから許して下さい!!」
「……(じー)」
「……」
「……はい」
「ありがとうっ、アルア!」
「……(ふるふるふる)」
「……、と許してもらえて改めて思うんだが、どうして俺が許してもらわないといけなかったんだっけ? それと何故にシャトゥにさせようとしてた土下座を俺がしなきゃいけないんだ?」
「……」
「な、何でもないよ? だからな、アルア? そんな冷たい目で俺の事を見ないで? お願いだから」
「……(こくん)」
「……ふぅ。――チッ、神め、神の分際で……いつかオトシマエつけさせるっ」
「……(じー)」
「あ、いや、何でもないよ? 全然、本当にもう、何でもないですよ?」
「……(じー)」
「よし、アルアっ。今日は無礼講だ! また甘いもの食べに行こう。な!?」
「……」
「だ、大丈夫だ! 俺の伝手を使ってここから一番近い……そうだな、ラントリッタのお城にでも行って姫さんにお菓子おごってもらおうぜ、アルアっ」
「……(こくん)」
「そうと決まれば行くか、アルア」
「……はい」
「……あと、何となくこの場所からはさっさと離れた方が良い気がするしなぁ。うん、この直感には従っといた方が良い気がする。何故かは深く考えないけど」
レムの悪行の数々。
【本日のメイドさん+α+β】
「確か、旦那様はこの辺りに――あら?」
「うむ? 母様?」
「……、ファアフ、姉様?」
「シャトゥにスィリィ様。このような場所で奇遇で御座いますね?」
「うむ、偶然とは恐ろしいものですね、母様」
「……偶然?」
「「「……」」」