ど-585. 異邦、二人
ちょっぴりアルアはお休みの回。
具体的にはシャトゥの行方とスィリィ嬢の暴走状態を煽ったバカが一人、な感じ。
「……」
「……」
「……」
「……うむ!」
「……なに、この子」
「我はシャトゥルヌーメであるっ!」
「シャトゥルヌーメ……何処かで聞き覚えが、」
「おお、私の名前も遂に全国区なのですね」
「あ、ああ。女神の名前ね、シャトゥルヌーメって」
「私は女神じゃありません!」
「いや、それは分かってるけど」
「そうですか。ならいいのです」
「貴女……確かレムと一緒にいた子よね?」
「うむ? そう言うそちらは冰頂の子? 今なら下僕三号殿にして差し上げます」
「謹んで遠慮するわ」
「慎み深い女の子はレムの好みです」
「え、そ、そうなの……?」
「うむ、私が言うんだから間違いない!」
「そうなんだ……」
「それで慎みの深い冰頂の子? レムは何処です?」
「ま、まあ? 私が慎み深いのはその通りだけどね。――レム? レムならあっちよ」
「あちらですか」
「ええ」
「流石は冰頂の子。それに今代は力に振り回せれずに正しく能力制御をしているようなので私も一安心です」
「正しい能力制御? そんなの、自分の力をコントロールするなんてあたりまえじゃないの」
「うむ、そうですね。……そして自分の力をまだコントロールできない私は未だ未熟者なの、しょんぼりです」
「ま、まあそう落ち込む事もないわよ? 元気出しなさい、赤い子」
「……うむ」
「それにしても。あなた、アルアを何処にやったの?」
「アルア? 多分、私と『イクスチェンジ』したのでレムの所にいます。――下僕二号ちゃんめっ、抜け駆けとは末恐ろしい子!!」
「……そう。アルアはレムの所なのね? ――確認しておくと、別に危険な事があったりする訳じゃないのよね?」
「いえ、凄く危険です」
「――危険?」
「下僕二号ちゃんの貞操がっ!」
「――、」
「うむ。でもいつもながらに燎原は他の子たちに愛されているようで私も一安心です」
「……」
「はっ、緊急脱兎!」
「……そう、レムが、アルアの貞操、ね」
「おお、冰頂の子から凄い殺気が漏れ出しているのを感じます。……計画どーり?」
「私だって、私だってまだなのに……」
「うみゅ?」
「もうどれだけ一緒のょ、……時間だって一杯過ごしてるのに、なのにあの意気地無し――それを?」
「私としてはこの地域の生態系に影響を与えるので余り大気の温度を下げないでほしいのです、冰頂の子」
「いいわ、いいわよ。そういうことなのよね、やっぱりこれはもう、神様か何かがそうしろって言ってるって考えても良いのよね」
「そうしろ? いえ、私は何も言ってませんよ?」
「レムを――調教する」
「うむ? よく分かりませんが楽しそうなので私も混ざりたいの」
「――急ぐわよ、赤い子」
「合点承知! 我に続くのです、冰頂の子!」
「って、そっちじゃないわよ!?」
「……うむ?」
……何だかスィリィが次第に遠くに行ってしまうのは何故だろう?
初めはこんな子じゃ・・・・・・・・・あれ、初めからだったかな?
【本日のメイドさん】
「……なんですか、急激に気温が下がったのは私に対する嫌がらせか何かですか、旦那様からの宣戦布告ですか。この程度で私の動きが鈍くなるとでも? ……良いでしょう、旦那様、その挑発、受けて立ちましょうとも」