ど-583. 取り敢えず、遊ぶ
こんな感じ。
「んー」
「……」
「ど、どうしよっか」
「……?」
「あ、いや。これからちょっと神退治でもしてこよっかな-、とか思ってたんだが。アルアが一緒となるとな。考えを改めるべきかと思って」
「……」
「あ、別にアルアが邪魔って言ってるわけじゃないぞ? ただ俺が荒を危険な目に巻き込みたくないと言うだけであってだな、」
「……」
「……まあいいや。第一、折角アルアと二人きりでいるのに何でこんな話ししなきゃいけないんだ」
「……」
「だよな、アルアだってこんな話されたってつまらないだけだよな?」
「……(こくん)」
「と、言う訳でアルアっ、嫌な事はパッと忘れて遊ぶとしよう!」
「……?」
「そうだな……先ずはあそこにあるお店で甘いものでも食べながら今後の相談をしようか」
「……(こくん)」
「お、流石アルア。甘いものには食い付きが良いな」
「……(こくん)」
「よぅしっ、お兄さん、奮発しちゃうぞー。アルア、何が食べたい?」
「……はちみつパン」
「む、アルア、別に遠慮しなくても良いんだぞ? いや、まあ確かに館にいた時と同等のモノが食べられるってのはないけどさ。例えばケーキとか、料理狂の独作がほとんどだしな」
「……(しゅん)」
「おお、アルアが目に見えて落ち込んでいるっ。よしっ、こんな時こそ優しく声を掛けて好感度アップを狙うんだ!」
「……(こくこく)」
「えーと、そうだな……うへへ、お嬢ちゃん、お兄ちゃんと良い事しない? ――って、これは違うっ!?」
「……(じー)」
「あ、アルア? 今のはちょっとした冗談だからな? 別に他意はないぞ?」
「……(じー)」
「くっ、最早条件反射的にボケてしまうこの身が憎いっ」
「……(じー)」
「ほ、ホントだぞ? 今のはボケたのであって、別に他の意味とかないんだからな?」
「……(じー)」
「……こほん。まあ、何だ。取り敢えずお店に入って甘いものでも注文しようか、アルア」
「……(こくん)」
「よし、アルアははちみつパンだったな。甘い甘いヤツ」
「……(こくん)」
「ん。それじゃ、――おーい、おねえさ―ん、注文一つ頼むー」
「はーい、ただいまー」
「よしよし。じゃあ何か腹が膨れるもの適当に。それと甘いお菓子みたいなヤツ、何かない?」
「甘いお菓子? そんな貴族様じゃないんですから、そんなモノ置いてませんよ~」
「……」
「アルアがっ、アルアがこれまで見た事ないくらい落ち込んでいるっ」
「……」
「じゃあお菓子は良いから、取り敢えずこの店で出せる一番甘いもの頼む」
「一番と言うと、果実の詰め合わせ、かな? で、いいですか?」
「ああ、それでお願い」
「……(こくこく)」
「はい、分かりました。……ふふ、それにしても仲の良いご兄妹ですね。じゃあ、少し待ってて下さいね?」
「……」
「……」
「兄妹と間違えられてしまった」
「……」
「ここは喜ぶ所? それとも哀しむ所? どっちだろ?」
「……(しゅん)」
「アルアが落ち込んでるように見えるのは別に俺と兄妹扱いされたからじゃないよな? 単に甘いものがなかったっていう理由だよな?」
「……」
「頼むから何か言って下さいっ!!」
「……元気出して」
「ソレ何に対する励ましなの!?」
「……」
「……ふ、ふふ。アルアも中々、俺を焦らすのが上手いな、いや、うん、俺はアルアに他意なんてなくて、ただ単純にそう思ってるだけって言うのはちゃんと分かってるけどな」
「……?」
「ふー、うん。それでこそアルアだ。安心した」
「……ちょろいぜ?」
「――アルーシア、お願いだから何処かのバカどもに毒されないでくれ。いや、マジ真剣にお願いします」
「……?」
「大丈夫だ、俺はアルアの事を信じてるからっ」
「……はい」
「そうだな、じゃあ甘いもの食べたら、二人でこの街の中色々とぶらついてみるかっ。手を繋いで恋人同士、みたいな感じで?」
「……」
「……」
「……」
「……へ、返答を何か下さい。リアクションでもいいから」
「……(こくん)」
「それは何かな? え、俺のデートのお誘いに対する肯定の返事? それともリアクションしてくれって事に対する返事?」
「……(じー)」
「――はっ!! もしや俺は今、アルアに試されている!?」
「……(じー)」
「ふっ、それなら仕方ない。ここは男としての器量を見せる場面な訳だ。良いだろう、アルア、強気な俺を見て惚れ直すと良い」
「……(じー)」
「……」
「……(じー)」
「取り敢えずは甘いものを食べた後にしようか、アルア」
「……(こくん)」
まあレム君はへたれってことだ。
【本日のメイドさん】
「? 旦那様の気配が急に変に……? また何かやらかしたのか、それとも巻き込まれたのか、旦那様もつくづく暇にはなれないお方ですね――当然、私も含めてですが」