ど-577. 狩りのお時間
基本、待てと言われて待つ阿呆
……テンションだだ下がりなのは何故だろう?
「あはははははっ、狩りだっ、狩りを始めるぞっ!!」
「うむ!」
「よっしゃ、シャトゥ。気分盛り上げていくぜ!!」
「うむ! ……ところでレム?」
「ん?」
「狩りって何を狩るのです? 母様?」
「――ふっ、あいつか」
「か、母様を狩るのですかっ!?」
「……シャトゥ、寝言は寝て言え」
「うむ。レムがいつも通りのレムで少し安心です」
「どうとでも言え。良いか、シャトゥ。ヒトってのは、生まれた時から狩るものかられるものって決まってるものなんだよ。あいつに手を出そうとする輩はまず間違いなく、逆に狩られる」
「狩られますかっ」
「ああ。確実にな」
「流石は母様なのっ」
「と、言う訳だからあれは無しだ」
「はい、承知しました」
「よろしい」
「それならレム、何を狩るのですか? レム?」
「いや、何で自分で自分を狩らなきゃいけないんだよ」
「実はレムはそう言う趣味でした?」
「違う……と前に言ったはずだが?」
「うむ、隠す事はありません」
「――……よし、それじゃあまず最初にシャトゥを狩るか」
「私が獲物でしたかっ!」
「獲物云々は兎も角として、まずはその口黙らせる」
「く、唇で……?」
「お、手頃な所に手頃な大きさの石が」
「レムっ、その石をどうするつもりですかっ」
「シャトゥ、あーん、だ」
「そんな甘い罠に引っ掛かる私では――」
「シャトゥ? あーん」
「うむ! あーんっ」
「――喰え」
「むぎゅっ!?」
「……ふー、やれやれ、」
「……ゴクンこ、です。レム、石はあんまり美味しくないのです」
「……チッ、この常識破りが」
「何を言いますかっ、むしろ私が常識! 私が正義! 私が世界の法です」
「路傍の石を一呑みに出来る奴が常識語るな」
「私はそんな野蛮な真似はしないのです」
「いや、今思いっきり喰っただろうが」
「あれはレムからの愛を受け取ったに過ぎません。レムからの“あーん”に意味があるのであって何を食べたかなんて些細な事。……れ、レム? 不思議とお腹が痛いの」
「いや、全然不思議じゃないし」
「うむ? 消化しました」
「早っ!? いや、このつくづく規格外が」
「照れるの。てれてれ」
「褒めてねえよ」
「うむ、コレでまた一歩素晴らしき母様に近づいたのです」
「……素晴らしき?」
「うむ!」
「何処のどうどの辺りがアレが素晴らしいと?」
「全てです」
「そうか、全てか」
「うむ」
「一度、頭を全部取り変えてこい」
「それは流石の私でも少し難しいと思います」
「……いや、まあ難し以前に普通に無理だけどさ」
「だが私は不可能を可能にする!」
「自分で言っておいて何だが。それは可能にしなくて良い類の不可能だと思うぞ、シャトゥ」
「うむ?」
「――っと。何か変なことでずいぶん話が逸れたじゃねえか」
「はっ、そうでした。このまま大人しくしてれば私はレムに狩られるのですっ」
「いや、誰もそんな後始末に困りそうなことはしないが?」
「――レムの嘘吐き!」
「ふっ、俺は基本“悪”だからな。嘘の一つや二つは吐くぞ?」
「うむ。それは知っています。レムが常々言っている、レムが私の事を好きじゃないと言う事も、」
「それは本当」
「――嘘です!」
「……じゃ、そう言う事にしておいてやろう」
「うむ」
「……と。だからそう言う事じゃなくて、だな」
「うむ? 如何なさいましたか、レム?」
「話を最初に戻すぞ、だから」
「レムが私に愛の告白?」
「今までかつてそしてこれから、そんな話題を口にする事はねえ」
「……しょんぼりなのです」
「……だから。狩りを始めるぞっ、って言う話だ」
「うむ? ああ、“根暗”狩りですね?」
「分かってるじゃねえか」
「でもね、レム? “粘着”狩りなら私は全力で脱兎するの」
「いや、アレも狩る。狩り尽くす」
「……レム、我は脱兎していい?」
「――待て、餌」
「脱兎!」
「逃がさねえよ」
「逃げるのっ!」
「ちっ、この、待ちやがれ、シャトゥ!」
「はい、待ちます」
「……流石だなぁ。待てと言われて待つ輩なんてホント、シャトゥくらいしかないんだろなぁ……ほい、確保と」
「レムめっ、謀ったな!」
「いや、謀ったな、と言われても」
「私はレムに追いかけられるのは好きだけどチートクライとクゥワトロビェは大嫌いなのです!! ……ところでレム、チートクライとクゥワトロビェって誰ですか?」
「ん? 神様」
「私は神様じゃありません!」
「知ってる」
「うむ、それなら良いの」
「じゃ、シャトゥ、早速“神”狩りでも始めるか~」
「うむ! ――そして私は再び、脱兎!」
「だから、待てシャトゥ」
「はい、待ちます」
「……あぁ、捕まえるの楽でいいなぁ」
「レムめっ、また私を謀りましたね!」
「ゃ、だから謀るも何も」
「レムの魔の手には捕まりたいけど、チートクライとクゥワトロビェの魔の手からは逃げるのですっ」
「……ま、いいか。アレ追いかけてればその内見つかるだろ、うん」
……何か気を抜くと無気力に陥りそうな今日この頃な作者です。
だうー