ど-576. ――忘れるな
深い意味はない。
レム君、ちょっと悪い夢を見ました。
「――っっ、は、」
「……レム?」
「――」
「レム、どうかしたの?」
「――」
「レム、レム。私、レムの怖い顔は嫌なのです」
「――ぁ、ああ、シャトゥ、か」
「うむ。このような超絶美幼女は私以外に存在しません」
「……ああ、そうだな」
「レム? どうかしたのですか? 何か怖い夢でも見た?」
「怖い――……いや、ただちょっとな、昔の事を夢に見ただけだ」
「昔の事?」
「ああ。何と言うか、だな。まあ、忘れるな――って事なんだろうけどさ」
「?」
「て、こんなこと言ってもシャトゥには分からないよな」
「うむ。さっぱりなので具体的かつ詳細な説明を要求します」
「説明、説明……ねえ。つかシャトゥに説明してもなぁ」
「私にはレムの特殊な性癖を打ち明けられないとでも言うのですかっ!」
「誰が特殊な性癖かっ!?」
「え、レムなの」
「違う」
「じゃあ私?」
「知るか」
「ふっ、私は何でも知っている」
「……」
「母様の性感帯は耳と首の中間あたりなのっ」
「何で、んな事知ってる!?」
「うむ? ……勘?」
「勘……そうか、勘か」
「うむ。ちなみにレムの――」
「黙れシャトゥ、それ以上この話題を話そうとするな」
「うむ? 何だかよく分かりませんが分かったの」
「よーし、良い子だ、シャトゥ」
「うむ、私が良い子なのは世の真理なので当然です!」
「世の真理っつーか、むしろ中心な勢いだけどな」
「世界は私を中心に回っている!」
「……実際にそうな所が恐ろしいのな」
「私が中心! 私が正義! 私が……あ、神様とかじゃ断じてありません」
「へいへい」
「う~、……」
「……ふぅ」
「……、レムっ、レムっ!」
「あん?」
「今日は何をして遊びますかっ」
「……何をして、てか。いい加減飽きないか?」
「私がレムと一緒に遊ぶことを飽きることがあろうかっ、否である!」
「あー、まあ、シャトゥってそんな奴か」
「うむ! 私は今日も元気いっぱいシャトゥちゃんなのです! と言う訳でレム、レッツ、ぷれいんぐ!」
「いや、俺の方が飽きた。むしろもう疲れた。これ以上シャトゥの相手をしたくない」
「飽きたらポイ捨てなのですねっ!」
「この場合、何処に捨てても戻ってきそうな気がするけどな」
「はい。私が戻る場所はレムの胸の中って決まっています」
「勝手に決めるな、決まってねえよ」
「そんな釣れないこと言うレムにはお仕置きが必要だと思うのです! 具体的には世の中の悪を討つ天誅を!」
「謹んで断る」
「返品は認めませんっ、プレゼント、ミュー☆」
「それって燃えるゴミと燃えないゴミのどっちだ?」
「私の愛は永遠に不滅です! 熱き血潮が燃え続けます!」
「そうか、燃えるゴミか」
「うむ! 私の愛は燃えるゴミッ、ポイ捨て厳禁なのです!」
「あー、でもなシャトゥ、悪いけどそろそろお前に構ってる時間もないんだ。ちょっと先に用事を済ませないと」
「幼児? 私のことですか?」
「違う。その“ようじ”じゃない」
「それもそうですね。私は大人ですから」
「それも違う、かな?」
「大丈夫! 今はまだ子供でもいつかレムの手で大人に花咲く時もある?」
「……永遠に来そうにない未来が来ると良いな?」
「うむ!」
「……――さて、と。それじゃあそろそろ起きるかー」
「レム、おっき、おっきするの?」
「――誰だ、その言葉を教えたのは」
「うむ? 今は亡き下僕一号様ですが?」
「……そうかー。……――ファイの奴、今度会ったら仕置き決定だな」
「良く分かりませんが何となく下僕一号様のご冥福をお祈りいたします」
「それはそうとして、だ」
「うむ。レム、おはようなの」
「ああ、おはよう、シャトゥ」
「今日も良い天気です」
「ああ、そうみたいだな。絶好の狩り日和ってやつだ、うん」
「レムは狩りに、そして私は川で洗濯を? レム、洗濯物を出して下さいませ」
「んなものはない。汚れものは昨晩の内に全部綺麗にしておいた」
「私の分もですか?」
「ああ、不本意だけどな」
「レムの手洗い……ちょっとどきどき」
「安心しろ。昔俺が考案した魔法でしわの一つまでバッチリだぞ」
「……しょんぼりなの」
「何をがっかりしてるのかしらねえが……――あ、そうだシャトゥ」
「うみゅ? ――間違えた。うむ、何ですか、レム?」
「ありがとな」
「???」
「いや、言ってみただけだから気にするな」
「うむ?」
「……偶には、シャトゥとの会話も役には立つのな。憂鬱な気を紛らわせるのには持ってこい、ってか?」
……なんとなく。
基本的にシャトゥは太陽です。そしてボケ&ホゲ。
……まあ女神様? ですから。