ど-567. メイドさんに会ったら先ず敬礼を
基本知識です。
……駄目だっ、と言うか、アルーシアって一体どこに向かっているのだろう?
「ひとぉ~つ、ヒトに会ってはレムを斬り」
「……ひゅー、どろどろ」
「ふたぁ~つ、悪に会ってはレムを斬り」
「……どんどん、ぱふぱふっ」
「みぃぃつ、神に会っては――レムを斬るっ」
「……ぴゅ~、からからから」
「微幼女女神、シャトゥちゃんとは――……あっ、私のことよっ!」
「……わー、ぱちぱちぱち」
「――」
「……」
「うむ! バッチリ決まりました!」
「……シャトゥルヌーメ様、ご立派でした」
「うん。アルアも効果音? を出してくれてありがとうございますっ、なの」
「……(てれてれ)」
「ところでアルア」
「……?」
「何で私は一々レムを斬らなきゃいけないのです?」
「……???」
「うむ?」
「???」
「これぞ神罰かっ!」
「……神罰!」
「ちなみに何となく思った事なので意味はありません。ついでに私が女神様とかそういう事実も一切ないの」
「……女神さま」
「うむ? 確かにアルアの言いたい事は分かります。微幼女な私を女神と見間違うのも当然のコトです!」
「……微」
「うむ、微なのです。でも決してお胸の小ささを言っているのではありません」
「……シャトゥルヌーメ様の胸は世界の財産です」
「アルアはいつも良いコト言うのっ!!」
「……(こくこく)」
「でもそろそろレムが恋しくなって枕を涙で濡らしちゃう年頃な私なので、早くレムに会いたいです」
「……斬るの?」
「レムに会ってはレムを斬る! でも抱きついて頬擦りでも可なのです」
「……むにゅむにゅ」
「うむ、むにゅむにゅです!」
「……(こくん)」
「と言う訳でっ、――レムはギルド総本山にあり!! 彼奴の頬に頬擦りするのです!!」
「……(こくん)」
「――アルアッ」
「……はい!」
「……ギルドの総本山って何処ですか?」
「……分かりません」
「うむ?」
「……」
「困ったの。凄く困ったの」
「……(こくこく)」
「くぅ、レムの居場所は分かっているのにレムが何処にいるのか分かりませんッ! 具体的に言うと此処から南へ三日ほど全速力で駆け抜ければ街角でパンを咥えたレムと衝突します!」
「……困った」
「きっとこれも全てレムの策略なのですっ。レムめ、そんなに私が怖いのか!」
「……怒っているシャトゥルヌーメ様、凛々しくて素敵です」
「私が怖いと言うのならば私の胸の中でプルプル震えているが良いのですっ、……きゃっ、レムの大胆さん♪」
「……恥かしがっているシャトゥルヌーメ様、可愛いです」
「うむっ、でもレムが何処にいるのか分からないので会う事も出来ないなんて……寂しくて涙が出ちゃう、だって私、――お腹が空いたのです!!」
「……どうぞ。今日のご飯はそこに生えていた雑草です」
「流石はアルアッ、お仕事が早いのです! ……うむ! これも下僕一号様の作り出していた悪夢と比べれば何と御馳走なのでしょう!」
「……(もぐもぐ)」
「――!」
「……シャトゥルヌーメ様?」
「……お、お腹が痛いの」
「……!」
「ふ、……ふみゅぅ。この怨み、忘れないの、レム。これもきっと、レムの陰謀です」
「……シャトゥルヌーメ様っ、大丈夫ですか!?」
「――うむ。きっかり二秒で完全消化しました! 我、完全・復活! アルアっ、雑草もう一枚下さいなのっ」
「……どうぞ」
「うむ! ……――!」
「……シャトゥルヌーメ様!」
「ぉ、お腹痛いの。これはもしや……つわり?」
「……つわり?」
「良く分かりません。何となく思い浮かんだので言ってみただけです」
「……???」
「そして消化完了! 我、復活です」
「……(もぐもぐ)」
「……アルアはお腹痛くなったりしないのです?」
「……?」
「――ふっ、どうやら私の負けのようですね。うむ、潔く負けを認めましょう」
「……???」
「アルア、アルアー、雑草はもう良いのでもっとまともなものを食べたいのです」
「……お金がないです」
「!!!」
「……!!」
「……くっ、仕方ないのでここは涙を飲んで、秘蔵中の秘蔵、『下僕一号様よ、永久に』シリーズを解禁するしかありませんかっ」
「……シャトゥルヌーメ様、それ、前にも言ってなかった?」
「うむ? 違いますよ、アルア。前に涙を飲んで売り払ってしまったのは『下僕一号様よ、永遠に-なつかしき僕らの青春』シリーズなのです。大きく違います!」
「……ごめんなさいです」
「うむ、分かればよいのです。それに誰にだって間違いはあるものなの、気にしちゃダメなの、アルア」
「……シャトゥルヌーメ様」
「と言う事だから早く次の街に着かなければいけません。具体的には私のおなかと背中がぺったんこになっちゃう前に!」
「……(こくん)」
「――私の胸のようにぺったんこって言ったのは誰ですっ!?」
「……(ふるふる)」
「……ふぅ、幻聴でしたか。何か『シャトゥルヌーメのナイ乳最高!』とか言う何処かの蒼バカなクゥワトロビェの魂の叫びを聞いていしまいました。――そんな魂、滅んでしまえ」
「……(こくこく)」
「アルア、私の当るも八卦、当らない事は可能性すら存在しない勘からすると、次の街はここから南へ全速力で三日ほど暴走した所にあるの」
「……(こくん)」
「――分かっていますね、アルア?」
「……?」
「私たちはお腹と背中がくっついちゃう前に、次の街に着かなくちゃいけないのです。つまり私たちは凄く急いでいる!」
「……!」
「アルアッ、今こそ時間の速度を超える時! 全・速・力で往くのですっ!」
「……(こくん)」
「いざ――必堕のぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、ぷはっ、……息が切れました」
「……シャトゥルヌーメ様」
「うむ。心配してくれてありがとうなの、アルア。でも次こそはっ」
「……(こくん)」
「では改めて。――必堕のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、『はーと・きゃっちゃ~~~』……あんど、リリース」
「……!」
「ふははは、待っているのです、レびゅ……噛んだ、痛いの」
「……シャちゅ、っっ」
『はーと・きゃっちゃ~~~』
シャトゥ、108の必堕技の一つ。必ずオチる技、と書いて必堕技。
『はーと・きゃっちゃ~』の部分で何か良く分からないものを溜めて、その後の『あんどリリース』の呟き声で胸の奥底に眠る大事な何かを解放する、付加系の御技である。周りに影響ないけど、基本“不可”系の技。何故なら大切なものを常時垂れ流している誰かさんにはあまり意味がない。
愛しの彼への想いを解放すると暴走状態に入るらしい。でもって時々周りのヒト達がその余波に当てられることがあるので注意が必要である。幼児、幼女問わず告白タイムのラブの園が生まれたり生まれなかったり?
……シャトゥの必堕技、ようやく十一個くらい? 十二個?
まだまだ先は長い。