ど-561. 肩透かし?
……ぷっつん?
レム君&スィリィ嬢
「――さあ来いっ!!」
「どうかしたの、レム?」
「……あ、あれ?」
「一人で何やってるの? ピエロ?」
「あ、いや……あれ? 何か偉いヒトが来て神とヒトとの全面対決とかそんなノリが繰り広げられるんじゃないのか?」
「……何の話? 寝ぼけてるの?」
「いや、目はバッチリ覚めてる。具体的にはスィリィの乱れた寝姿をはっきりと思いだせるほ――」
「思いだすんじゃないわよ!?」
「えー。大体あれは油断しきってたそっちが悪いんじゃないか。それが何で俺が悪いって感じになってるんだよっ。ぷんすかぷんっ」
「その口で『ぷんすかぷんっ』とか言うの、止めてくれない? 余りの腹立たしさに殺りたくなってくるわ」
「ふぅぅ、全く、いつになく物騒だな、スィリィよぅ。もう少しは女の子らしくしたらどうなんだ? 分かりやすいたとえで言えばスィリィ愛用のあのネグリジェとか――」
「だから思い出すなって言ってるでしょ!!??」
「仕方ない。スィリィがそこまで言うのなら、あの光景は永遠に俺の脳内に留めておく事にしよう」
「それなら……まあ」
「うんうん」
「そっ、それより寝ぼけてるって言うんじゃないんならどうしたのよっ。やっぱり遂に頭がおかしくなったの?」
「俺は正常です!」
「……本当に?」
「いや、何でそこまで真剣に心配されてるわけ、俺?」
「……いきなり『さあ来い』とかって、街中で剣を抜いて叫ぶヒトって危ないヒトだと私思うわ」
「心配するな。ヒト様見かけるなり問答無用で魔法を放ってくる誰かさんと大差ないから。むしろ周りを一切気にしない誰かさんの方が無差別で酷いから」
「誰かって誰のことよ?」
「俺の目の前にいるスィリィ・エレファン嬢」
「……ま、まあそんな事もあったかもしれないわね」
「そんな事も、と言うよりも今朝宿屋を一つ全壊させたばかりだったと思うけど?」
「あっ、あれは急に朝這いに来たレムが悪いのよっ!!」
「ゃ、朝這いも何も、あそこは俺がとった宿で――つか思いだしたら腹が立ってきたぞっ。何で俺が金払った宿で簀巻きにされて廊下で一晩過ごさなきゃいけないんだよっ!?」
「何よっ、レムは私に一人で寒空の下野宿しろって言うのっ!?」
「――大丈夫だ。スィリィなら間違いなく誰よりも、ただしあの例外は除いて、青い空の下で強く行けていけるはずだから」
「わ、私だってか弱い女の子なのよっ」
「か弱い女の子は大の男を片手で廊下に簀巻きにして放り出したりしませんー。第一あの宿屋の亭主にも何を勘違いされたのか『お楽しみですね?』とかほくそ笑まれて一晩中放置されたし」
「お、お楽し――!?」
「ああ、つか、思い出してみると宿屋潰れてざまぁって感じだな。うん、きっと俺に酷いことしたから天罰が下ったんだ、天ば……――いや、やっぱ今のなしで。天罰とか本当にしてそうな“なんちゃった♪”存在が脳裏にちらついてしまったじゃないか」
「ななな、何勘違いしてるのよッ、レムの変態!!」
「うん? 何か非常に不本意かつ意味分からんことでバカにされたんだが。これは俺、怒っていいのか? 怒っていい所か?」
「お、怒ってるのは私の方よ!」
「んー? ……まあ、スィリィ、女の子ならそんな日もあるさ。具体的には月一くらいに」
「は? 急に何言って、……!!!」
「それよりさ、そろそろ本当に最終決戦だと思うんだ、俺」
「何、訳わかんないコト言って誤魔化そうとしてるのよ!?」
「成程、図星だったか。まあ、後二・三日すれば楽になるからそれまで頑張れっ!」
「……、~~」
「ん~、でもおかしいなぁ。確かにあのだめだめあほぅの“なんちゃった♪”存在が夢枕に立って、『今日の昼ごろ、貴殿の首を取りに仕る』とかほざいてた気がしたんだが……気の所為、いや所詮“なんちゃった♪”か。気にするだけ無駄だったな、俺」
「――レム、貴方一度お仕置きされた方がいいわ、いえレムなんて名前も必要ないわよね、ポチで十分よ、このポチ」
「は? ……、あの、スィリィさん? 何か起こっているようですが、そんなに辛かったのか、あの日が?」
「黙れ、ポチ」
「……ふむ。ここは俺がバカにされてる所だな。つまり、男としては立ち向かう場面である、と」
「――へぇ、ポチごときにそんな度胸があるって言うの?」
「普段の俺なら、無い! と言い切るところだが、最近の俺は一味違う。仕方ないからスィリィの気が済むまでほんの少しだけお相手してやろう。……“なんちゃった♪”の所為で微妙に気が立ってるしな」
「――物分かりの悪いポチには、お仕置きしてあげるわ」
「ふんっ、そりゃこっちのセリフだ、スィリィ。物分かりの悪い奴隷には相応の仕打ちを以て分からせてやろうじゃないか。――どちらが下かと言う事を!!」
「……まさか、この鞭を使う日が来るとは思ってなかったわ」
「――ごめんなさい、キミとは住む世界が違うようなのでボクは失礼させて頂きます。では!」
「あっ、こらレム! 待ちなさいっ!!」
「ぎゃー!! 笑顔で追ってくるなっ、怖ぇよ!!」
メイドさんが恋しいよぅ。
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