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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
o メイドさん+女の子とご主人様
925/1098

 PickUp 11. おいてけぼり

……忘れてた二人。


そこはタイプー山の頂上辺り。


純白のラクリマの花が咲き乱れる“純白の平野”に一組の男女の姿があった。


寒々とした、疲労或いはある種絶望的な空気が漂っている。





「……ね、アレフ」



「……何だ?」



「これって、凄く拙い状況だよね?」



「そう、だなぁ……」



「スィリィのばかぁぁ。こんなところに私たちを置いてけぼりにして、どうしろって言うのよぅぅ」



「かと言って、いつまでもこんなところにいるわけにもいかないしな」



「……残りの食糧は? あとどれくらい持ちそう?」



「切りつめて……後二日ってところか。どの道、まだ元気なうちに何か行動を起こした方がいいよ、これは」



「だよ、ねぇ。ただでさえ勝ち目が薄いのに、万全の状態じゃないとこの付近の魔物たちの相手なんて、到底無理だし」



「……悪い、俺の所為だ。俺があの時、スィリィを見失ってなければ、」



「あー、アレはアレフの所為じゃないよ。スィリィが全面的に悪い……とは言ってもスィリィのおバカ、あの時完全完璧なまでに“恋する乙女もーど”だったし」



「俺たちの事なんて眼中になし、って感じだったからなぁ」



「うん……と言うより、もしかしなくてもスィリィの事だから私たちの存在、まだ忘れてるかも?」



「参ったなぁ」



「……アレフぅぅ。参った、とか済むレベルじゃないよ。大体、こんな化け物の巣窟みたいな所、私たち二人だけで突破できる自信とか、ある?」



「無理」



「でしょー? スィリィってば、最近その“化物”に片足突っ込んでるからなー」



「正直なところ、今のスィリィってW.R.の誰かに匹敵したりするんじゃないのか?」



「あー、そうかも?」



「大体、地竜を眼光のみで撃退するってどうなのよ? とか思う訳だが」



「ほんと、アレには私も驚いたね」



「いや、驚くってレベルじゃないし」



「そうだけど。まあ、今はいないスィリィのバカの話はこれくらいにして、もっと現実的な相談しようよ、アレフ」



「……確かに」



「それで――どう? アレフ、何かいい案ってあるかな?」



「いい案、って言われてもなぁ。正直座して死を待つよりも、特攻かけて麓まで降りる、くらいしか思いつかねえ……、アイネは?」



「んー、私もアレフと同じ……と、言いたいところだけど、」



「けど? 何かあるのか?」



「何かあるってほどじゃないんだけどね。ただ、結局スィリィがどうしてこんなところを目指したのか、って言うのが気になって。あと、あのレムさんは一体どこから現れたのかなーとか」



「レム……ああ、あの空から降ってきた男の事ね。そう言えば確かに」



「うん、もしかするとその辺りに何か、何とか私たちでも生還出来る手立てがあるんじゃないかなって、勝手に期待もったりしてるんだけど……アレフはどう思う?」



「――いや、うん。確かにそうだな。言われてみると、ただ無謀でしかない特攻を掛けるよりも現実的かもしれない」



「そう? アレフもそう思ってくれる?」



「ああ。……と言うよりも今の俺たちに選択の余地って殆んどないしな」



「……うん、そうだよね。――ほんっっと! スィリィのバカぁぁ!!!」



「……はぁぁ、取り敢えず、不思議とこの辺りに魔物はいないみたいだし、危険のない範囲でちょっと調べてみようか」



「うん。……あ、ちなみにアレフって古代文字とかって分かる?」



「古代文字? いや、全く」



「そっか」



「で、その古代文字がどうかしたのか?」



「……ううん。アレフは、『竹龍の地』って知ってる?」



「『竹龍の地』?」



「そう。別名、天空の大地。こっちの方が有名かな?」



「ああ、それなら分かるな。大昔、龍種の王族が住んでたって言う、伝説の大地だろ? 何でもその存在は知られているのに、誰一人としてその場所を知らないとかって言う、」



「その通りっ!」



「それがどうかしたのか? と言うより今話す話じゃ――」



「――あのね、アレフ。この辺りなんだけどね、どうしてこの辺りだけ魔物が居ないのかなって、私少しだけ考えたんだけど……此処、ちょっと広すぎると思わない?」



「広すぎる?」



「そ。なんでこんなところに広い平原があるのか、とか。そもそもこの花って確か――」



「花? まあ、今まで見たことない花だけど……これが魔物を近寄らせない効果とかあるのか?」



「ううん、そうじゃなくて。例えば――そう、これって私の妄想に近いんだけどね、タイプー山って、強力な魔物が住み着いてるよね」



「ああ。ちょっと歩けば竜に遭遇するとか、普通ありえねーよ」



「そう。タイプー山って、“竜”の棲み家なんだよね。そしてこの場所は……“龍”が一休みするのにちょうどいいくらいの広さに“ならされている”と思わない?」



「……――おいおいおい、ちょっと待てよ、待てよ、おい。それってつまり、」



「うん、だから私の妄想、って言ってるんだけど。此処って何か不思議な感じがするし、もしかして伝説の『竹龍の地』と何か関係があるのかも、とか思ったり」



「……」



「それにね、全くの妄想ってわけでもない――と思う。この辺りに転がってる石、何かが彫られてるものが時々混じってるの。ほら、これとか」



「あ、ホントだ」



「それでね、多分これ――古代文字」



「おいおい、それって凄い発見とかなんじゃないのかっ!?」



「――うん。私の予想が本当で、ついでに私たちが生きて麓まで戻る事が出来れば……の話だけど」



「……結局そこに戻る訳か」



「そうなんだよね。それにもしここが予想通りで、“転移装置”の一つでもあってくれれば安全な所に帰れるかなぁ、なんて思ってるんだけど……早々都合よく見つかるはずもないよねー」



「そりゃそうだ」



「でも、だからこそこの辺りを調べてみる価値ってあると思ってるんだ、私」



「ああ、確かに。その通りだな。それにアイネの話聞いてると、何だかわくわくしてきたしっ」



「ふふっ、男の子ってこういう伝説とか言う話、好きだよね?」



「ああっ、男に生まれた以上そう言うのに憧れない輩はいないと思うぜっ!」



「そうだねっ」



「それじゃ、アイネの想像通りなのかどうかっ、俺たちが無事に麓まで戻れるのかどうかを掛けて探してみるとするかっ」



「うんっ!」



「よし、なら――っっ、アイネ、俺の後ろに」



「? アレフ? どうかし、」






それは突然、現れた。


周囲が光るとか、輝くとかそういう前兆めいたものは一切なく、唐突に。






「いー、だっ、スィーのばか! しらないっ、スィーなんてだいっきらい!!」



「わ、我はミミルッポ、そなたの為を思ってだな、」



「しらない、しらないっ。わたし、クェトラムなんてぜっっったい、たべないもんっ!」



「み、ミミルッポっ、我が悪かった! もうそのような事は言わぬ。だから大嫌いなどとそのような事は――」



「って、スィー!? ちょっとミミルッポに大嫌いって言われたからって直ぐに意見を変えないでよっ!?」



「う、むぅ。……だがな、ライカーレ、そうは言っても、」



「言っても、じゃないの! それにミミルッポも、いつまでも我儘な事ばっかり言ってないで――あら?」






何もない空間から“出現”したメイド服姿の女の子二人と、長身の男が一人。その内の背の高いほうの女の子がアレフとアイネの事に気がついたのか、三人の目が合った。




「「「……」」」






「いやっ、こないで!」



「ミミルッポっ、後生だ、その様な事を言わないでくれっっ」






ちなみにもう一人のメイド服姿の女の子はこちらに気づいた様子はなく、長身の男の方は二人をちらっと一瞥しただけで後は完全無視である。






◇◆◇






「……えっと、こんにちは?」



「あ、はい。こんにち……は?」



「……、お恥ずかしい所をお見せしました」



「いや、そんな事は、ないと思う、よ?」



「そう言ってもらえると、と言うよりもすぐに忘れてくれると良い、です」



「あ、うん。……努力し、ます?」



「ありがとうござい、ます?」



「「……」」






そこには先程までの、生死を賭して――などと言う空気は微塵もなく。






「――ミミルッポ、ちょっとこっちに来なさいっ」



「ゃ、ライねぇ……だれだれ、そのひとたち、だぁれっ?」



「あ、はい。私はアイネ・シュタンバインって言います。それでこっちはアレフ・シトネス……」



「アイネとアレフだねっ、わたしはミミルッポだよっ、よろしくね!」






「む、ミミルッポ、その様に安易に――」






「……そっか。私はライカーレ。それでこっちがミミルッポよ。それでそっちのがスィーカット。宜しくね、アイネ。それとアレフも」






「ライカーレまでっ!」






「スィーは黙ってて! ……と言うより、少しはミミルッポの事を信用したら? この子、ヒトを見る目だけは確かなんだから。ね、ミミルッポ?」



「んー? うん、よくわからないけど、アイネとアレフはいいこだよ?」



「ですって? だから多分、この二人は信用しても大丈夫」






「う、むぅ……」






「じゃ、ミミルッポ、私はちょっとアイネ達と話してるから、またスィーと遊んでなさい」



「……ぁ! わたし、スィーのことまだきらいなんだからっ」






「そ、そんな――!?」






取り敢えず、状況についていけていないと言う事だけは確かだった。






「――と言うより聞きたいんだけど、アイネにアレフはどうしてこんなところにいるのかしら? ……言って悪いけど、実力が伴っているようにはとても見えないんだけど?」



「う、む、……まあ、実力が足りてないのは確かだし。……うん、ちょっと、仲間においてかれちゃってね」



「おいていかれた? 随分と酷い仲間もいるのね?」



「まあひどいと言えば酷いけど、あれは……どちらかと言えば間が悪かった気がするなぁ。急にレムさんが空から降ってきて、スィリィだって混乱してただろうし、」



「……」



「? どうかしたの?」



「いえ、なんでも……と言うよりご主人様、また何かやったんですね」



「?」



「いや、こっちの話。それより困った事とかない? 私たちに出来る事なら可能な限り手伝っても良いけど?」



「え、急にどうしたの?」



「いや、自分のことじゃないんだけど、何と言うか罪悪感がひしひしと……はぁぁ」



「ま、まあ困ったことと言えば此処から降りれなくて困ってるけど……」



「――ああ、そう言えば。此処って確か魔法が使えなくなるって言う、」



「うん。それに竜とか普通に生息してるし」



「成程。そう言う事なら――スィー、ちょっとこっちに来て!」






「? どうかしたのか、ライカーレ。我は今、ミミルッポの機嫌を取るのに忙し、」






「良いからこっちに来るっ! 来なさいよ!!」






「う、む。……何やら理不尽な事で怒られている気もするが、分かった。どうかしたのか?」






「うん、この二人、アイネとアレフがこの山から降りれなくて困ってるって言ってるから、ちょっと二人を麓まで送ってきてくれない?」



「え、そんなこと――!?」






「だが我はミミルッポの、」






「ミミルッポー、ちょっとスィーに“お願い”してくれない?」






「スィー、だめ?」



「全て我に任せろっ!」






「……全く、このバカはっ。と、言う事だからこのヒトが麓まで送ってくれるから。ああ、実力は確かだから安心していいわよ?」



「え、でも、その、」



「まあ、私たち、と言うよりご主人様にも非があるみたいだし、ご主人様の責任は私たちの責任でもあるから――まあ気にしないでって事よ!」



「え、あ、うん……?」






「と、言う訳だからミミルッポ、ご主人様の後始末はスィーに全部押し付けて、私たちは館に戻りましょうねー?」



「ぁぅ、つかまっちゃったー」



「だからおとなしくしてなさいって。それにクェトラム喰らい食べられるようにならないと、胸とか大きくならないわよ?」



「それはヤー!」



「はいはい、だからちゃんと食べる。あんなの、目をつむって食べれば一瞬でしょ?」



「……はぁい、ライねぇ」



「じゃ、私とミミルッポは戻るから。アイネにアレフ、機会があったらまた会いましょうね? ……と言うよりご主人様に関わってるならその機会がありそうなんだけど」






「――む、ならば我も、」






「――スィー、ちゃんと後始末、お願いね?」



「……スィー?」






「う、む……心得た」






「じゃ、そう言う事で。またね」



「またねー、アイネ、アレフー」






◇◆◇






そうしてメイド服を着た二人の少女が消えるや否や。




「よし、ならば行くぞ――着いた」



「「え、あ、え???」」



「これで我はもう用済みだな? そうだな? ならば早々にミミルッポの元へ戻る――」



「ちょ、ちょっと待って!?」



「……何だ? 我は今、とても忙しい。用事ならば手短に話せ」



「いや! 今、一体何したの、貴方!?」



「何だ、その様なことか。単にタイプー山の頂上と、それから麓に至るまでの道を“破壊”しただけだ。大したことはしていない」



「……い、いや。大したことはって。それにタイプー山じゃ、魔法は使えないはずじゃ、」



「魔法などではない。単なる我の“力”だ。用事はそれだけか? それだけだな? ならば我はいくぞ、いいな? いや、良いなと言われずとも我はもう行く。では去らばだ!」



「ぁ、……」






そうして長身の男の姿も気が付くとなくなっていて。


今までずっと呆けていたらしいアレフが、ようやく我に返ったかのように一言、漏らした。




「……なあ、アイネ」



「……なに?」



「助かった、って事で良しにしようか」



「……そだね」



結局、それに落ち着いた。


スィーカット、基本も応用も全て、ミミルッポの完璧なしもべ君。

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