ど-560. 寂しいなぁ……
今日は何か駄目っぽい。
全然、駄目駄目です。
一応、メイドさんor残念思念体。
「――ふぅ」
『ふんっ、ふんっ、ふふ~んっ♪』
「チェンジ願います」
『しつこいよ!』
「しつこいと言わず何度でも申し上げます。チェンジ願います」
『チェンジって言っても私の代わりになるような大物はそうないないわ!』
「そうですか? ほら、そこの路傍の石コロなど均衡がとれていて良さそうではないですか?」
『石コロとは随分な言いようだよねっ』
「……ふぅ、あれだけ懲らしめたと言うのにもかかわらずまだ懲りないのですね」
『あれしきの恥辱、私にとってむしろ快楽なのよ!!』
「……寄らないで下さい、ヘンタイ」
『酷い物言いね!!』
「だからむしろ寄るな、ヘンタイ。そして永遠の闇の中に消えて下さい、ヘンタイ」
『変体変態しつこいよ、この変態!』
「……、死にますか」
『っと。あぶなー。なに、警告もなしなわけ?』
「私をバカにしていいのは旦那さまお一人のみに御座います。ソレ以外の方にバカにされるいわれは御座いません」
『はいはい、ばか丸出しな甘ぁ~い発言御馳走様ね~――っと!』
「……ちっ」
『なんて言うのかね? 美人って得よねぇ。舌打ちする姿ですら様になってるんだから。……まあ? かく言う私以上の美人なんてこの世に存在して無い訳だけど?』
「本当に――最早憐れみを感じる必要性すらない残念思念ですね、この方は」
『まあ、私に嫉妬したくなる気持ちは分かる』
「……今気付きました。そもそもこんなのを相手にしていた私が愚かだったのですね。――一刻も早く旦那様をお探ししなくてはいけないと言うのに私は何と言う無為な時間を過ごしていたのでしょうか」
『そして自分の惨めさのあまりに現実逃避をしたくなる気持ちも分からなくはない。相手が私だから、それは仕方がない』
「今旦那様は――……あちらですね」
『……だからと言って無視されるのにも腹が立つんだけど?』
「では行きますか」
『ちょっと待ってよ! それに第一、どうしてそっちに貴女の愛しのマイダーリンが居るって分かるわけ?』
「旦那様のにおいと予感と第六感と、本命は愛の奇跡のなせる業です。と、いけません。ついついまた時間を無駄にしてしまいましたか」
『愛……愛、ねぇ。良いよね、愛。私も昔は愛に恋に好きなヒトが二人三人四人と、……凄かった』
「……」
『もっと具体的に言うと……凄かったわよねぇ』
「――何でしょうか。無性に殺したくなってくるのでその口閉じて下さいませんか、この残念思念の耄碌婆」
『まだまだ、若いわねー』
「……私は、このような輩相手に何をしているのでしょうね? ――旦那様がとても恋しいです」
『のほほほー♪』
「……やはり旦那様に逢いに行く前に、一度この残念体は消滅させて置きますか」
『お、やる気? 私はいつでも受けて立つぞー?』
「……――さようなら」
『ふふんっ、正面からの実力じゃ私にはかなわないって事を、また教えてあげようじゃないかねっ!』
んー、何と言うか、メイドさんと残念思念のやり取りは難しいと言うか、……全く先が思い浮かばない!?
一番ありあそうなのがメイドさんが全力で逃げる、とかだけど……逃げ切れない程度には残念思念って能力高めだしなぁ、と。
兎に角メイドさんにとっては天敵の、天敵って事で。