ど-556. 永遠の禁じ手
ばらんす・ぶれいかー。withメイドさん。
「――さて、と」
『あ、あっちから良いにおいがするねぇ。あっち、行ってみようか?』
「待ちなさい」
『ん? 何、どうしたのかな? ままのおっぱいが恋しくなった?』
「誰がママですか、誰が」
『私だ!』
「違います」
『あんまり細かいこと気にしてると、老けるわよ?』
「小さなお世話です。それに老けるとか貴女に言われてくはありません」
『いや、私もう思念体だし? 永遠の十六歳とか夢の話じゃないのよね』
「誰が十六歳ですか、この耄碌婆」
『――』
「重要な事なのでもう一度言いましょうか。この耄碌婆の耄碌婆――おや、思わず三度も言ってしまいました」
『あんたって子は、まだお仕置きが足りなかったみたいね……』
「いえ、十分足りております。と言うよりも私がお仕置きされたいのは旦那様だけであって貴女の様な残念思念体にお仕置きなど誰がされますか。むしろ去ね、死ね、滅せよ悪霊」
『この手だけは使うまい……と思っていたんだけどね、そう言う態度を取る気なら仕方ない。私も相応の仕打ちってものを見せてあげようか、――ねぇ?』
「相応の仕打ちですか? それにこの手だけは使うまい? その決意をもう覆すとは随分と安っぽい決意もあったものなのですね?」
『私のこの手が金色に輝く! 鳴かぬ龍、泣かせてみせよう、今、必殺の、』
「っっ」
『甘いっ、私のこの手から逃れる事は……――秘儀、ゴールドフィンガー!』
「――ぁっ!」
『説明しよう! 秘儀ゴールドフィンガーとは、この始まりの白龍ルーロンの全能力身体機能を用いて神速にも及ぶとも勝る速度で相手の性感帯を的確に突く事により、どんな強敵であろうとも一瞬で無力化させてしまうという恐るべき技なのである、まる』
「……な、何をしくくされて下さっているのでしょうね、この方は――ひんっ!?」
『ちなみにこの技は未だかつてだれにも破られた事はなぁぁい!! あのシャトゥルヌーメの腰巾着にも実証済みの超絶美技っ、ふははは、良い反応するねぇー、おじょーちゃん?』
「……こ、殺ひぅ!」
『ん? 何か言った? わん、もあ、ぷり~~ずぅぅ?』
「――殺します。絶対、殺す。滅する、跡形もなく滅すりゅぅ!?」
『……ふぅ、やっぱり私は自分の才能が恐ろしいわ。余りに恐ろし過ぎて、と言うよりもついうっかり全国民を敵に回しかけてしぶしぶ禁じ手にしていたとはいえ、私の腕はまだまだ現役ねっ』
「――そ、創滅にゃぁん!?」
『ふふっ、随分可愛い声で泣くこと。ほら、通りすがりの小人たちが貴女の艶声を聞いて、皆興奮して立ち止まってるわよ? まさしく痴女ね! ……お金とれるかしら?』
「――」
『今度シャトゥルヌーメにも試してみようかしら? あの女神がどんな反応するか……楽しみだわ』
「――」
『……あら? ようやく負けを認めておとなしくなった?』
「――習得、しました」
『……え?』
「――そこっ!」
『なんの!』
「ひゃんっ!?」
『ぁんっ♪』
「~~っっ」
『――ふふっ、たった四度見ただけでこの超絶技をマスターするなんて。恐ろしい子ね』
「この屈辱、億倍にして返します、絶対」
『ふーん、でもまだまだよ。これでようやく互角。――で、相打ちになるって分かっていて、続ける勇気が貴女にはあるかしら?』
「――くっ」
『ちなみに私にはあるわ! こんな小人たちの視線なんて塵芥に等しいんだもの。おほほほほ~』
「……耄碌婆に加えて真性の痴女でしたか。救いようが御座いませんね、本当に。いえ、救いようと言うよりも手のつくしようもないと言い換えた方がよいでしょうか、この痴女。寄るな触るな近づくな。むしろ死んでください、いえ既に死んでいましたか、失敬。では消えて下さい、ええ永遠に」
『……』
「……私は」
『……』
「私は旦那様の御前以外で痴態を晒す気など毛頭御座いません。――いっそこの近辺にいる方々の記憶を一日程消して差し上げたいくらいです。いえ、実行しましょうか」
『――ふぅん』
「……何ですか?」
『いいえ。随分と純情に育ったみたいだね、と思ってね』
「さて? 純情かどうかは分かりませんが。少なくとも私にとって旦那様が全てである、と言う事実は覆す必要もない事ですね」
『――やれやれ。ならその純情さに免じて、この禁じ手は止めておいてあげようか』
「それは――有難う御座います」
『いや、私は別に。貴女のその気持ちに心打たれ手ひぇんっ!?』
「私は、許す気も止める気も毛頭御座いませんが――?」
『にゃ、にゃにぃぃぃぃ!?』
「――存分に、泣きなさい。この諸悪の根源が」
『い、いやちょっと待つにょ、……にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????』
メイドさんに容赦の二文字はないです。特に残念思念相手には。
と、言うか。
……何か力の使い方を間違ってる気がするなぁ、と。シャトゥと言いルーロンと言いかなり凄いはずの力を碌な事に使ってねぇ~。