ど-554. メイドさん
メイドさんvs. ある意味メイドさんの永遠の天敵
「……チェンジを願います」
『ん? 何言ってるのかね、この子は』
「人員のチェンジでお願いします」
『無理無理』
「そもそも旦那様の試練のはずが何故私が苦労をしなければいけないのでしょうか?」
『可愛い子には旅をさせよって言葉を知ってる?』
「何を仰っているのでしょうね、この方は。頭おかしいのでは御座いませんか? ああ、いえ、元より頭……の中が“お菓子”な方でしたか」
『失礼な子だねー』
「正直もう付き合いきれません」
『付き合いきれないというより、私に手も足も出ないくせにっ』
「――本気でぶちのめされたいのですか?」
『ぶちのめすも何も。――ふっ』
「……、やはりチェンジ願います」
『だから、無理』
「……――創滅の刃よ」
『ん? また、懲りずにやるの?』
「……いえ。このままやった所で地力負けしていますからね。それに私は旦那様程素直ではございませんから――当然搦め手で行かせていただきます」
『ええ、良い判断ね。まっすぐ向かってくることだけが全てじゃないからね。時には搦め手も必要よ?』
「その程度の事、あなたになど言われずとも承知しておりますとも。――では、参ります」
『ええ、来なさい? 少しは退屈しのぎになりそうだから相手してあげる』
「では手始めに……旦那様用のトラップを、ぽちっとな」
『――ん?』
「先ずは、これ」
『っ、と。……なに、このベッド? 随分と妙なギミックがついてるのね?』
「旦那様用特製の『“お空に舞っちゃうかも?”スプリング』です。いつか使う機会も、と思っていたのですが。まさかこのような事で使うはめになろうとは……ぽち」
『あ、また何か――っよ!? 何でこんなところに落とし穴が!?』
「旦那様用の、脱出用とは名ばかりの何処とも知れぬ地下道に通じている通称『地獄の落とし穴?』です」
『……何で最後に“はてな”がついてるのかな?』
「私も行き先は知りませんので。……ぽち」
『――何で空から刺付き天井が!?』
「旦那様専用の『お目覚め? お眠り? 目覚まし時計』です」
『どのあたりが時計!?』
「実は天井裏に時計がついています。……ぽち」
『――また何か押した!?』
「実は部屋が爆破します」
『嘘!?』
「嘘で御座います――そして今度こそ滅びなさい」
『な~んて、その程度の揺さぶりに掛かると本気で思ってるわけ? まあそこそこ楽しかったけど?』
「思っておりませんよ? そして私は何一つ嘘を吐いてはおりません」
『……え?』
「旦那様のお部屋、そして数々の旦那様の隠しコレクション……実に尊い犠牲でした。そして、そうですね。ええ、実に不本意ではありますが、この事を旦那様にお知らせしなければ。……決して私が旦那様に逢いたいと言う訳ではなく」
『……けふっ、あ~、折角の寛ぎ空間が。酷い事するなぁ、あの子。ぶつぶつぶつ』
メイドさんも旅立つ。