ど-540. おみやげ
色々と、あっぷっぷ
「おや、旦那様? お持ち帰りの品はないのですか?」
「……何の事だ?」
「お土産は?」
「ない。つーかお土産って何だ」
「お土産とは、何処かへ行ったその記念が一割と私へ貢ぐ目的が十二割の、つまりは貢物で御座います」
「いや、既に十割超えてるしっ。てか何でお前に貢がなきゃいけないんだ」
「やはり私が旦那様へ貢ぐべきでしょうか?」
「いらんっ。お前の貢物なんて怖くて受け取る気にもならんわっ!」
「怖い、ですか? ……、そのような事は…………御座いませんよ?」
「いや、その無意味な溜めは何だ」
「旦那様、ご心配なさらずとも絶対旦那様がびっくりなさるものをご用意致しますとも」
「……吃驚、程度ならむしろ喜々として受け取ってやるんだけどな」
「吃驚するような――その程度では物足りないと、そう言う訳で御座いますね」
「ゃ、」
「いえ、態々口に出されずとも分かっております。旦那様の空の果てより広大な御心、私はしかと承知しておりますとも」
「……ああ、お前はしっかりと分かってるだろうさ。そんな事は百も承知だ」
「勿体ないお言葉」
「だがなっ、だとしても敢えて言わせてもらおう!!」
「はい、聞き流します」
「そんなモノは何歩譲ってもいらねえよ!! ――って、聞き流すな!?」
「では旦那様への貢物は後に考えるとしまして、今は旦那様のお土産を催促する事にしましょう」
「て、だから重要な事だからさらりと流さないで!?」
「旦那様もそうやって、お土産の件を有耶無耶にしてしまう御心積もりに御座いますね?」
「や、俺は別にそんなつもりは……つか、大体お土産とかって何だよ」
「私への貢物で御座います」
「いや、そう言う説明じゃなくて、てか遂にお前へ貢ぐ事のみになったのか」
「御心配なされずともしかとお返しの品はお贈りいたします。――“品”ではないかもしれませんが」
「いやいい。てか、今はそう言う事じゃなくてな」
「つまり旦那様はこう仰りたいのですね? 『お土産? 何のお土産だよ、ってか何処へ行ってきたことの土産だよ?』と。はい、承知しておりますとも」
「うん、正にその通りだから。と、言う訳で、お土産? てか、ちょいと旧神都に降りてきただけだろうが。あんな廃墟に行ってきて土産もなにもあるか」
「ですが……既に館の皆様方には旦那様からお土産を賜わる事が出来る、と既に吹聴しておりますので、もしお土産がないとなれば皆さま暴動を起こします」
「って、土産がないと暴動起きる事は確定かよ」
「私が責任を以て扇動致しましょう」
「そう言うのは責任とは違うと思う」
「ですが……お土産がないとなれば、誠に残念ながら暴動が起きる事はもはや確実でしょう」
「お前が起こすからな」
「はい」
「……起こすな、と言う選択肢は?」
「ですがご安心くださいませ。旦那様がお土産の品をご提示くだされば、皆様快く引き下がって下さることでしょう」
「流すなよ。つか、だからあんな廃墟に降りてきたくらいで土産とかそんなのないって。しかも全員に配るとしたら数百か? ……まあ、そこらに転がってる瓦礫の欠片とかで良いならもう一度降りて拾ってこない事もないが」
「それでも皆さま、涙を流さんばかりに歓喜なされると思いますよ?」
「……マジで?」
「はい。その後は楽しい楽しいお祭りが開かれることでしょう。旦那様も頑張って下さいませ?」
「……ソレはお祭りじゃないと言うか俺に頑張れとか嫌な感じしかしないんだが、てかそれは喜んでないだろ、全然」
「そうかもしれません」
「……」
「……」
「ど、どうするんだよ? と言うか本当にアレ、廃墟だけだぞ? 土産とか言われてもどうしろって言うんだよ!?」
「旦那様」
「……なんだよ」
「お土産、とは“物”を贈ると言うよりもむしろ“心”を贈るモノに御座います。故に皆様方への土産を何になさるかは旦那様がご考慮なされる事でございます」
「お、おう。確かにそうだな。でもそれが、」
「よって、私に考えさせるなどそのような卑劣卑怯極まりない事をなされる旦那様ではないと私は固く信じております」
「や、だから皆は廃墟になんの土産を期待してるんだ!?」
「……さて?」
「じゃあ皆と言わずお前に聞く。お前は一体どんな土産を期待してるんだよ?」
「私は、そうですね。旦那様の事ですので、“家族”を一人連れて来て下さるものと思っていたのですが見当違いに御座いました」
「家族?」
「はい。女の子を一人」
「……ゃ、待て」
「しかし振られましたか? 私はてっきり、ミズ様を強制的に攫ってくるものとばかり思っておりましたが、“静鎮”――クゥワド様に横取りされましたか?」
「いや、横取りっつーか、面倒くさくなったので全部あいつに押しつけた――て、お前も居ただろうが」
「そうですね。ですからなおのこと、旦那様がミズ様を――透怒を見逃した事を不思議に思っておりました」
「んー? だって、折角“ご主人様”が居てくれてるんだから、俺が態々面倒な事を引き受ける事もないだろ?」
「面倒なこと、ですか?」
「ああ、と言うかあのロリィマザコン神な“使徒”ってのは基本的に面倒な奴だけだから。スィリィを見てみろ、アレがいい例だ。俺を見るなり殺しに気やがる……全く、俺が何をしたって言うんだ」
「はい、全て理解いたしました。つまりはいつも通りの旦那様の自業自得で御座いますか。それを避けるために、更に地雷原へと踏み入れる――中々出来る事では御座いません。流石は旦那様」
「いや、だからどうしてそうなるっ!? と、言うよりも今のお前の言い方じゃまるで俺が悪いように聞こえてくるから不思議だよねー?」
「そう申し上げておりますよ?」
「何でだよ!?」
「痛みも愛を表現するための一つの手段と言う事ですね」
「そんな愛は嫌だ。俺はもっとアマアマでどろどろでぬちょぬちょなのがいい」
「どろどろの、……ぬちょぬちょ?」
「そう。砂糖たっぷりな感じで!」
「焼き加減はミディアム? それともレアでしょうか?」
「こんがり、パリッな感じがいいな」
「左様でございますか」
「ああ」
「さっぱり意味が分かりません。もう少々万人に理解出来るお言葉でお願い致します、旦那様」
「ノってきたのはお前だよな!?」
「飽きました」
「ぶっちゃけるなよ!?」
「ですが旦那様、如何致しましょう? 既に新しい旦那様の愛の奴隷が一人加わると言う事で皆様には歓迎会の準備をお願いしてしまっているのですが?」
「……お前、何と言う事を……」
「では仕方ないのでこのまま恒例の“旦那様を吊るし祭る”祭りに移行しましょうか」
「しなくていい! と言うかそんなモノを恒例にしたつもりはねえ!! ……大体、お前らマジで俺を吊るしにかかるし」
「それが楽しいお祭りの主目的で御座いますので」
「俺は、吊るされたって全然楽しくない」
「旦那様を鑑賞して食事を楽しむ……――至福で御座いますね」
「――、マジで言った!? お前、今マジで言いやがった!!??」
「……さて、それでは皆様方に祭りの主旨の交代をお伝えしに、」
「待て! いや待って下さい!! つかマジで待て、こら、おい!!」
「――では、お土産が何かあるのですか?」
「ゃ、それは……」
「それは?」
「……」
「……」
「――とうっ!!」
「……逃げられましたか?」
「――ふははははっ、ちょっと待ってろっ、今すぐミズを攫ってきてやるから! 俺の保身の為に!!!!」
「はい。それではお待ちしておりますね。……ええ、皆様共々、旦那様のお帰りをじっくりと、笑顔でお待ちしておりますとも」
「……っっ!? な、何だ? 今妙な寒気が……? ま、まあいい。それよりも今はミズだ。あいつを確保しないと俺の未来がない!!」
……う~む、ちょいと頭がパンクし過ぎてて……少しばかり気に入らないのでその内PickUpの5~7を書きなおす……かも? まあ、その気に慣れれば、なんですけど(汗)
ふー、やれやれです。




