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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
o メイドさん+女の子とご主人様
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 PickUp 7. ……ん?

……駄目。今はとにかく、もうぐっすり寝たいっス。

蒼い瞳と蒼い髪の、まあ控えめに表して超のつく美青年の視線はレムの姿を真っすぐ貫いて。むしろソレ以外など些事と言う様に。


朗々と、囁いた。




「【蒼天に堕ちろ――】」




瞬間、空が堕ちる。




堕ちてくる空へと押し潰される、その寸前。今度は空間が割れた。そしてわれた空間の向こう側に存在していたのは、空が堕ちてくる前の世界風景。


廃墟の中に佇んでいた三人は三者三様である。ミズは、たった今立て続けに起きたありえない出来事に顔を真っ青にして空を見上げたま呆けており。つい先ほどレムの後ろに現れたくすんだ銀髪のメイドは顔色一つ変えず、全く動揺した様子はない。


そして、




「はっ、いきなり随分な挨拶だな、“静鎮”」


「――貴様を見ていると胸がムカムカする。何者だ、貴様?」


「レム」


「レム? 何処かで聞き覚えが――」


「ま、お前の敵だよ」


「敵? 貴様、程度がか?」


「ああ。ところでよ、いつもシャトゥに逃げられて御苦労な事だな、おい」


「……ああ。レムと言う名、何処かで聞いた事があるかと思えば、そうか、貴様が――シャトゥルヌーメを誑かす悪鬼か」


「俺はアレを誑かした覚えは一切ねえよ。つっても? てめえの事だから聞きやしないんだろうな?」


「ああ、聞くものか。貴様の戯言など聞くものか」


「だろうな、このロリコンのマザコン、救いようもねえ変態野郎」


「その言葉、そっくりそのまま貴様に返してやろう」


「――ぶっちゃけ負け犬に何言われても全然悔しくねえのな?」


「――何だと?」


「むしろお前には憐れみすら感じるぞ、道化。それとも当て馬とでも言えば良いのか?」




◇◆◇




『レムッ!! あなた、クゥワトロビェ様に向かって何という暴げ――』


「部外者はお静かに」


『――またっ、私の邪魔を!? 治外の黒白の――!!』


「旦那様の邪魔をしようとされているのはあなたの方です、“透怒すいか”」


『くっ――』






――などと言う事が傍であったが、当の本人たちはその事など視野にも入れてはいなかった。ただお互いを、片や殺意と呼んでもまだ生ぬるい、片や敵意と呼ぶにはやや弱い、そんな瞳で見つめ合っていた。




◇◆◇




「つか、今更こんなところに来て何のつもりだ、“静鎮”?」


「知れたこと。俺もどうしてこんなところにくる気になったのか今の今まで分からなかったが、今はっきりと分かった。――貴様を殺すためだ」


「あ、そ」


「【蒼天に座せ――】」


「――遅ぇよ」




空間に突如として三筋の蒼爪痕が顕れて空間を“壊す”。だが直前までそこにいたレムの姿はもうそこにはなく。




「相変わらず逃げるのだけは巧い――」


「相変わらず? くくっ」


「――? 何が可笑しい」


「ああ、そりゃおかしいとも。そもそもお前と俺は“初対面”だって言うのに、何を以て『相変わらず』なんて言葉を使う気だ、お前?」


「――? 何を言うかと思えば、」


「俺とおまえは今日、今この時が初対面。何か変か、クゥワド・チューエ少年?」


「――お前、何で俺の名前を、」


「知ってるとも。マハラヤ村出身の、村長の息子。武術、魔法の才有り、容姿端麗、性格も一部を除けば文句なし、……って、言っててムカついて来たぞ、おい」


「お前! 俺のストーカーか!! だからさっきから寒気が止まらない訳だ!!」


「――違うわっ、ボケ!!??」


「寄るなっ、ストーカーっ、俺にはそんな趣味はないし、第一俺には心に決めた女性が既にいるんだ!!」




◇◆◇




『れ、レムにそんな趣味が……』


「や、やっぱり凄い変態だったんだ……」


「全くです。旦那様には困ったものですね」




◇◆◇




「俺にも、んな趣味はねえよ!?」


「――ならどうして俺の事を知っている?  ああ、そうか。成程、シャトゥルヌーメから俺の事を聞いていたんだな、そう言うことか。なら仕方ないな!」


「いや全く。大体お前、シャトゥに碌に話聞いてもらえてないだろ、」


「――貴様っ、シャトゥルヌーメの事を気安く呼ぶなっ、殺すぞ!!!」


「自分の力にも振り回されてる“静鎮”程度にゃ俺は殺れねえよ。つか、男のやっかみ? ぷぷ」


「貴様、本当に殺すぞ」


「ああ、やってみろよ? てか、そんな忠告する前に掛かってきたらどうだ、青二才クン?」


「【蒼天に――」


「ああ、違う違う。こうやるんだよ、」




【蒼牢に閉じろ、――クゥワド・チューエ】




「――え?」




◇◆◇




『クゥワトロビェ様!?』


「……え、あれ?」


「おや、旦那様。珍しく、やや本気で御座いますね」


『このっ、いい加減、退きなさい、黒白の――!!』


「なんで、あのヒトの髪が、蒼……く?」


「お断り致します……と、申し上げたい所ではありますが、“今の”旦那様は少々拙いですかね?」


『――クゥワトロビェ様っ、今!!』




◇◆◇




勝敗は明らかだった。




突如として現れた蒼い格子の牢に閉じ込められる形で立ち尽くしている美青年、クゥワド・チューエと。それを冷ややかな視線で見つめている一見へた……、レム。






「そうだな。ちょうどいい機会だ。お前、ちょろちょろとしてちょい目障りなんだよな。だから少しだけ、矯正してやろうか……て、」


「あ、あれ? 何で身体が……勝手、に???」


『レム、それ以上クゥワトロビェ様に手を出すと言うのなら、その前に私が相手です』


「おいおい、何でこんなところにミズが、」




「――旦那様、少し熱くなりすぎで、ソレ……以上は流石に時期尚早かと存じ上げます」




「……ああ、それもそうか。こんなところを“根暗”にでも覗き見されたら拙いか。――確かに、つい嫌な顔を見た所為で熱くなりすぎてたみたいだな、うん」




「はい、旦那様」




『レム、答えなさい。手を引くか、引かないか。引かないのなら――このままあなたを次元刀で両断します』


「え、あ、へ? なんで、私」


「了解、分かったよ。今は引いておくことにする。俺も別に、態々敵じゃない奴を敵にする気はないしな」


『――そうですか。それは良かった』


「わた、わたしの身体、どうして……」


「応っ、それとミズ、余り気にするなっ! 多分時期に慣れるし」


『……ああ、ごめん。身体はミズに返します。とは言っても、私の声はまだ届きませんか』


「慣れる? それってどういう……あ、わたしの身体、が……ちゃんと動、く?」


「ああもうっ、だからいい加減頭の中で声が二重に聞こえてくるの止めてくれっ、うざったくて仕方ない」


『無理です』


「うざ……ご、ごめんなさい」


「ああ、いや、だからこれは別にミズに言ってるわけじゃなくてだなっ、ってもういい加減ややこしいなぁ、本当に!!」


『ざまあ♪』


「ひっ!?」


「あ、や、ミズを驚かせるつもりじゃ、……あーもうっ、いい加減面倒になってきた。――帰る」


『そうですね。クゥワトロビェ様が来られた以上あなたは用済みです、さっさと消えなさい、レム』


「……め、面倒。やっぱりわたし、面倒……」


「いや、もう、俺にどうしろと?」


『早く帰れば?』


「ごめ、ごめんなさい。全部わたしのせい、ですよね……?」


「……、はー。まあいい、もういい、何かもう疲れた。後はそっちのクゥワド・チューエに何とかさせるから。俺もう帰る。良いな、スイカ?」


『か・え・れ! か・え・れっ! かっ・えっ・れっ!!』


「え、スイカ……? どこ、に……?」




「……じゃあな。多分、また会いに来るから。今度はそっちの男が居ない時にゆっくり話しようぜ、ミズ。後その時に話しつけるぞ、スイカ」




『べー』


「あ、はい。まだわたしと話してくれる、んですか?」


「当然」


『ぺっ、ぺっ!』


「――はいっ、レムさん!」




◇◆◇




「……っと、それじゃあ帰る前に一応解放しといてやるかー」




パンッ、とレムが小さく指を鳴らした瞬間、クゥワド・チューエ少年を囲っていた蒼牢が跡形もなく消え去り。


そうして倒れそうになったクゥワの身体を“勝手に動いた”ミズが支えて助ける。当然、助けたことに一番驚いているのはミズ本人である。が、脳内はそうでないと言う事である。






「んじゃ、てっしゅー」


「はい、旦那様。お疲れ様で御座いました」


「いや、まあ。バカを相手にすると精神的に疲れるしなー」


「近親憎悪で御座いますね?」


「違うし」


色々と、ばたんきゅー

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