ど-534. 籠の中のヒト達4
いつも、へいわ。
「……」
「あら、アルーシア、どうかしたんですか?」
「ん? ああ、リョーンさん。ほら、あれ」
「アレは……」
「あ、また地雷踏んだ」
「あのヒトも好きですよね、地雷ワード踏むの」
「だよねー。良くあそこまでって感じだよ、もう」
「あ、また踏みましたね。それにも逃げ場がないっぽいですよ?」
「大丈夫だよ、そこはレムだから。あ、ほら、ちゃんと逃げた」
「ん~、もうあれは使徒の私も感服する逃げっぷりですね~」
「堂に入っちゃってるからねー、レムの逃げ腰って」
「もっとワイルドになっても誰も嫌がらないと思いますけどねー」
「ワイルドになったレムって……ん~?」
「……うん、中々」
「そだね」
「……でも現実と想像とは大違いですかー」
「まあ、アレがレムだしね。……でも、」
「どうしました、アルーシア?」
「いやね、相変わらずレムは女の子から人気があるなーって思って」
「それって、やきもちですか?」
「ん、ちょっとはね。でもヤキモチと言うよりもこれは」
「これは?」
「レムも大変だな―って言う、お疲れ様ーって感じの方が強いかな?」
「ああ、それ分かります。何かあのヒトの周りに集まってくる女の子って、後一歩、残念! て感じの子たちばっかりですもんねっ」
「……、そうだね」
「? どうしたんですか、アルーシ、――って、何でそこで私の事をじっと見てるんです!?」
「いや、そのちょっと残念な筆頭ってリョーンさんかなって」
「違いますよ! 私は女神様に次いで完璧なんです!!」
「う~ん?」
「アルーシアは分かってません! 全然、まだまだ分かってません!!」
「いや、でもこう言うのってさ、えてして本人は知らず、ってやつだよね?」
「そっ、そう言うこと言うのならアルーシアだってあと一歩残念な子って事ですよ!!」
「うん、そうなるね。私は何処が残念なのか、自分で分からないけど」
「ぅぐ。……あ、アルーシアは認めちゃうんですか、それ」
「うん。客観的に見て限りなくクロに近いグレーだからね、私……というか私たち」
「ま、まあ今の私は色々と問題を抱えてるって事は認めますけどっ」
「と言う訳で私たちって残念な子たちなんだよ、リョーンさん」
「……そう開き直って自分で言っちゃうと、何だかモノ悲しいものがありますね」
「……そうだね」
「っと、それよりも! あのヒトが人気があると言う事はそれだけあのヒトが魅力的って事ですよね!」
「……うん?」
「何で疑問形なんですか!?」
「いや、何だかそれだけは素直に頷いちゃいけない気がして」
「? どうしてです?」
「さあ? 私にも良く分からないけど……でもレムって魅力的、かな?」
「魅力的ですよ!」
「具体的には?」
「具体的には、……」
「うん」
「……」
「……」
「全部、って言っちゃダメですか?」
「駄目」
「じゃ、無いです」
「あ、やっぱりないよね?」
「そうですよ! 思い起こせばあのヒト、私の事をゾンビだの悪霊だのフレッシュだのと、バカにしたことしかないじゃないですか!!」
「そもそもリョーンさんて、良くそれでレムの事を好きになったよね?」
「……ふふ、それが惚れちゃった弱みってやつですよぅ」
「だよねぇ……」
「「……――はふぅ」」
-一方そのころ-
「アルーシア様、眼下をご覧ください」
「……」
「あれが“お祭り”と言うモノです」
「……お祭り」
「はい。ああして差し上げると旦那様は大変お喜びになられますので、覚えておいて損は御座いません」
「……悦ぶ」
「はい、アルーシア様。ニュアンスの方もそちらの“悦ぶ”で間違い御座いません。流石ですね」
「……(こくこく)」
「さあ、アルーシア様、では今のうちに、如何にして旦那様を追い詰めるか、方法を考えて置きましょうか」
「……」
メイドさん&アルーシア。レムとマデューカスとシンカの“お祭り”を観戦中。