ど-532. ゆめ
ふと、変な夢を見た。
「……何か変な夢見た」
「夢ですか?」
「ああ、何か周りにお前らやスヘミア、ラライ、ファイにレアリア。それと何故かアルーシアが二人いてさ。……変な夢だったなぁ」
「アルーシア様が二人、ですか?」
「ああ。何か知らないが“あるあ”と“あるく”って、それぞれ名乗ってたな。スヘミアの奴は“あみ”、ラライが“らい”って名乗ってて……ああ、そう言えばヘンテコな国の学園に通ってたな、俺ら。うん、今思い返しても変な夢だ」
「具体的にはどのような夢だったのですか、旦那様?」
「ん? ああ、何か俺の周りに十人程女の子がいてさ、さすが俺の夢と言うか、俺はそいつら全員囲ってハーレム形成してんだけど、また夢の中の俺がヘタレなんだよ」
「やはり旦那様な何処に行っても旦那様なのですね」
「うるせ。ああ、それと思いだしたけどシャトゥも出てきてたなぁ。何か殺し屋やってるの、あいつ」
「殺し屋、ですか? よりにもよってあのシャトゥが?」
「ああ。文字通り“虫一匹殺せない”くせに殺し屋なんてしてて、なんつーか、世界一似合わないっての」
「全くです」
「んで俺は何故か殺し屋に狙われてるんだけど、」
「それはこちらの旦那様と同じなのですね?」
「いや、俺は殺し屋に狙われたりはしてないぞ」
「御心配なさらずとも既に暗殺ギルドなどの闇に属する方面への“手配”は済んでおります」
「“手配”ってなんだよ、手配って!?」
「旦那様も存外、いえ想像通りに大変人気がおありになるのですね? 方々の方々より見つけ次第、即抹殺という暗殺依頼が多数見受けられております」
「……うげぇ」
「ちなみに私もおもしろそうでしたので一口乗ってみました。報酬は飴玉一つで」
「いや、それはないだろ、ってかお前は何してんの!?」
「旦那様、くれぐれも月のない夜道には気をつけて下さいませ? 旦那様にもしもの事が御座いましたら、私はどうすればよいことか、何をしでかしてしまうのか自分自身でも想像がつきません」
「ってか元凶が何言ってるの!?」
「ですので旦那様、くれぐれも、くれぐれもお体にはお気を付け下さいませ?」
「……まあ、お前に言われずとも気はつけるさ。それに有象無象の三流、一流、超一流の暗殺者如きに殺られるようなへまは絶対しねえよ」
「流石、それでこそ旦那様に御座います」
「あーへいへい、お褒めいただきアリガトな」
「いえ、私は当然の事を申し上げたまでですので」
「それで……あー、そう言えば何の話してたっけ、俺ら?」
「旦那様が夢の中でハーレムうはうはへたれ万歳と言う妄想話のことで御座いますか?」
「ああ、それそれ。ったく、夢に見るくらいだったら現実でハーレム形成しろよって話だよな、全く」
「はい。まさに夢は夢であるという典型的な例に御座いますね、旦那様?」
「悪かったなっ、現実の俺は全然モテてなくて!!」
「いえ、その様な事は申し上げておりませんが。それにご心配なされずとも夢の中であろうと現実の今であろうと、旦那様は十二分なへたれであるとこの私が保証させて頂きます」
「要らねえよ、んな保証!?」
「そう仰らずに」
「仰らずも何もそんなモノを喜んで受け取る野郎が何処にいるって言うんだよ!?」
「私の目の前に」
「俺しかいねえよ!?」
「では旦那様が喜んでおられるのですね? それは良かったです」
「喜んでないっ、全然喜んでねえよ!!」
「ふふっ、ご謙遜を」
「謙遜違う……――って、あー!!」
「――如何なされたのです、旦那様?」
「くそっ、お前のこんなバカ話に付き合ったせいでそれなりに幸せそうだった夢の内容忘れちまったじゃねえか!!」
「所詮夢は夢と言う事ですね? 現実でそうなれるよう、ご尽力を賭しててみてはいかがでしょうか?」
「それが出来れば俺は苦労していない」
「それもそうですね」
「くそっ、こうなったら、」
「こうなったら?」
「――もう一度寝る!」
「の、前にこちらの仕事を片付けてからにして下さいね、旦那様?」
「見えない聞こえないー。それじゃお休み、ぐー」
「はい、お休みなさいませ、旦那様」
「……」
「ですが旦那様、先も申し上げましたが夢など所詮は夢でしかないのですよ? 旦那様も理解しておられるでしょうに」
「……」
「……――しかし、アルーシア様が二人、ですか。旦那様も中々に……興味深い事を仰られますね」
-とある少女たちの内心-
「……(どきどき)」
「どきどき」
「ほら見ましたか! 流石私! あのヒトがあなたたち二人に“アルア”と“アルク”って名付けるって私は初めから分かってたんですよ!!」
「……? あれ、そう言えばリョーンさん事は全然触れられなかったよね?」
「……(こくこく)」
「……………………ふふふ」
そんな感じ。