53. どれいとけつい(誤))
~これまでのあらすじ~
いつもの如く捕まって脱走をしたレム君。そして自分を嵌めたレアリア達一行(?)を遂に追いつめて、着替えを覗き見る事に成功する。けれどそのショックにシンカが“暴走”を起こしてしまい……そして唐突に何の前触れもなくレムが『ちゅっ』ってしちゃいました、と言う感じだったhず。
シンカ・・・天国へ堕ちている(?)最中の“予言の巫女”様。実際は男神クゥワトロビェの眷属の末端っぽい感じのおヒトだったりするのだが。まあ関係ないかー。
アルーシア・・・愛称、アル。最近ちょっぴりとだけ自我が出てきた? な感じの相変わらず殆んど喋らないレム君の愛の奴隷(?)の女の子。
レアリア・・・不幸娘その一。ちなみにその二はシンカさん。レムに奴隷にされて人生暗闇へまっしぐらの最中。
マレーヌ・・・万能な準メイドさん候補。ただ、化物級の潜在能力とかは持ってない、どちらかと言えば器用貧乏な子。将来の夢はでっかく、メイドさんみたいな女性になること。
「……――ふぅ」
「取り敢えず、主様」
「ん? なんだ、マレーヌ」
「やはり狙っていたのですね、いい加減視線を逸らしやがれこの覗き魔、はたまた巫女ゲットおめでとうございます、この腐れ外道。と、乙女の柔肌を唐突に奪って何曝してやがりますか、このクズにも劣る愚悪――と、どの言葉が宜しいですか?」
「……出来ればもうちょっと優しい言葉をプリーズ」
「少しと言わずしばらく、七日ほどその口と鼻を噤んで塞いで密閉していてくれませんか?」
「……あれ? マレーヌ、もしかして怒ってる? いやもしかしなくても嫉妬?」
「――ハッ」
「……うわ、なんだろ。すっげぇバカにされた気がするぞ」
「はい」
「……」
「嫉妬とか何言ってるんですか、この主様は」
「……ぅん」
「取り敢えず一発殴っていいですか、主様?」
「駄目だ」
「……じー」
「どんな目で見つめてきても駄目なものは駄目だ。つか、何で俺が殴られなきゃいけないんだよ」
「……主様、そちらは一体何であるのか、ご説明願います」
「これ……何か気絶しちゃった初心な巫女さんだが、それがどうかしたのか?」
「その原因は主様が急にキ、……キス……をしたからじゃないですか」
「必要な事だったからな。下心は何一つない!」
「……なにひとつ?」
「何一つ、だ!」
「……」
「「……」」
「な、何だよお前たち!? そんなに俺の事が信じられないのかよっ!?」
「はい」
「当然よ」
「……(こくん)」
「そんなっ、マレーヌとレアリアは兎も角としてアルまで!?」
「……?」
「――くふぅっ!? その不思議そうな表情もグッドだぞ、アル!」
「……(すすすっ)」
「って、何故に俺から遠ざかる!?」
「そりゃ、あんたが色々様々むしろ全面的な意味で危険だって本能的にも理性的にも悟ったからじゃないの?」
「……(ふるふる)」
「アルは違うと言っている!」
「……(こくん)」
「え? ねえ、アルーシア、こいつって危ない奴だと思うわよね?」
「……(こくん)」
「そんなっ!? 今のは単にレアリアに脅されて頷いただけだよな、アル!?」
「……(こくん)」
「私、別に脅してないわよっ!」
「……(こくん)」
「ふっ、そんなこと言ってもな、既に素の顔が怖いんじゃないのか?」
「……(こくん)」
「って、さっきからアルーシアただ頷いてるだけじゃない」
「……(こくん)」
「――は!? 今凄い事に気がついた」
「……?」
「凄いこと?」
「アルは俺の事、大好きだよなッ!?」
「……(ふるふる)」
「――何でこう言う時に限って頷いてくれないんだよぉぉ!!??」
「……何と言うか、せこいって言うか、……憐れよね、あんた」
「そう思うなら少しは俺に愛をくれ!!」
「チッ」
「何その舌打ち!?」
「主様の余りの横柄な物言いに嫌気が差したものと推測します」
「うん、正解」
「横柄って何処が!? 俺ちっともおかしなこととか言ってないよ!? 第一俺は横柄どころか謙虚そのものだろうがっっ」
「いい加減シンカの事を放したらどうなの? それともやっぱり疾しい気持ちがあって放したくないとか言うんでしょう」
「何で既に断定してるんだよ!?」
「……所詮主様ですし」
「マレーヌもっ!? 何でそんな『今更ですし……』みたいな感じなんだよ!?」
「今更だし……」
「今更ですし……」
「……(こくん)」
「俺に味方はいないのかっ!?」
「ええ」
「はい」
「……(こくん)」
「……、ふっ、所詮、ヒトは孤独な生き物なんだよな。ああ分かってる、ちゃんと分かっていたさっ!」
◇◆◇
「……んっ、んん?」
「――て、そうこうしてる間にシンカが目を覚ましそうだなっ」
「レムが騒ぐから……」
「主様がうるさい所為で……」
「……(じー)」
「別に俺の所為じゃないよっ!? 第一、こんなところで気絶させたままにしとく訳にもいかないだろうがっ」
「レムが騒ぐから……」
「主様がうるさい所為で……」
「……(じー)」
「繰り返さなくても良いからっ!! ……くそっ、俺の周りは敵だらけかっ、こうなったらシンカ、もうお前だけが俺の味方――」
「「ないない」」
「……(こくこく)」
「そんな事はないっ、シンカが目を覚ませば、既に俺の虜と言うか」
「……ぁ、あれ? わたし、どうして――ぁ」
「よっ!」
「……、れ、――~~~~~~ッッ」
「あ、逃げた」
「逃げましたね」
「……にげた」
「ふっ、照れてるだけだな」
「「ないない」」
「……(こくこく)」
「……まあ真面目な話、アレは必要な処置だったと主張しておこう!」
「あ、そう。一度と言わず千度程刺されてみれば? この女の敵」
「主様、一度許可をいただく前に刺してもいいですか?」
「……シンカ」
「おっと、逃げて行ったシンカの奴を追わないとなっ!」
「誰の所為よ、誰の」
「主様の所為ですね」
「……追う」
「さあっ、早くシンカを追わないと大変な事にっ」
「ちなみに主様、私がまだ結界を張っているのでこの空間からの脱出は不可能です。それとレアリアさん、そろそろ身体を隠したらどうですか?」
「……ぇ? ――っっ」
「……!(だっ)」
「あ、アル――」
「――って、完全に無視されてるのもそれはそれでムカつくわねっ!」
「所詮、主様ですし」
「――あ、それとレアリア、大丈夫だっ、お前の裸体はしかとこの何処にでも転がっていそうな(何処ぞの似非女神特製)“映像を記録が出来る石コロ”に保存しておいたからっ! 安心しとけっ!」
「――なっ」
「……所詮主様、――ふっ!!」
「って、ああー!! マレーヌ、テメェ何しやがる!?」
「ナイスッ、マレーヌ!!」
「……主様にあんなもの必要ありません」
「ちっ、覚えてやがれよ!? くそっ、早くアルを追わないと」
「……?」
「――って、何でアルが此処にいるの!? さっき、シンカ追っていったはず、」
「……シンカ」
「シンカ?」
「……、っっ」
「お、シンカ。ちゃんと戻ってきたのかー、偉い偉……」
「――ヘムさん!!」
「……誰、それ?」
「へっ、変態なレムさん!!」
「――変態とレムを合わせてヘム……って、それはねえよ!?」
「せっ……」
「……せ?」
「――責任取って下さい!!!」
「任せろっ!」
◇◆◇
「……ええー」
「それは誤断です、シンカ様」
「……(こくこく)」
……何でこんな話の流れになってるのだろう? と不思議になります。