ど-529. 花見
時間がないなぁ……
「クソが、この害虫めっ! 俺の目の届く範囲に発生してるんじゃねえよ!!」
「……ごめん」
「って、ああ嘘、嘘だから」
「……ごめん」
「と言うか別にアルに言った訳じゃないから!!」
「……(しゅん)」
「……とっ、所でアルはどうしてこんなところに? ――はっ、もしや、もしかしなくても俺に逢いに来たとか!?」
「……(こくん)」
「――マジで!?」
「……(ふるふる)」
「いや、どっちなんだよ!?」
「……?」
「やっ、首傾げないで!? ソコ凄く重要な所だから!!」
「……ん」
「どっち!? 俺に逢いに来たの、それとも俺に逢いに来たのか!?」
「……かだん」
「……花壇?」
「……(こくん)」
「……ああ、成程。そう言うことか」
「……(こくん)」
「アルってば俺に逢いに来たって言うのが恥ずかしくって、そんな照れ隠しをしてるんだなっ」
「……(ふるふる)」
「ふふっ、分かってる、分かってるって!」
「……おはな」
「……」
「……はな」
「……あの~、アル、もう一度聞くけど、俺に逢いに来てくれたんだよね?」
「……(ふるふる)」
「――もうこの際、嘘でもいいからそうだと言って!!」
「……花」
「そ、そうか。そうだよな。アルは俺が一生懸命育てた花壇が気になるんだよなっ」
「……(こくん)」
「ふ、ふふっ。俺が育てた花が気になってるんだよな! そうだよな!!」
「……」
「お願いだからちゃんと頷いて!?」
「……花」
「……ま、まあ俺が精魂込めて育ててるからなっ、アルが見惚れてしまうのも仕方ないってものだけどな!」
「……きれい」
「まあなっ、まあな!!」
「……(じー)」
「ほら、こっちのアルクとか、俺としては渾身の出来だと思うんだけどアルはどう思う!?」
「……あるく?」
「ああっ、こっちの赤い花の名前なっ。きれいだろ?」
「……(こくん)」
「ふふっ、このアルクは近年稀にみる中々の出来栄えでなっ」
「……あるく」
「お、アルもやっぱり気になるのか!?」
「……あるく?」
「きれいだろ、なー?」
「……(ぽっ)」
「? アル、何か少し顔赤くないか? もしかして、また風邪か!? 駄目じゃないか、ちゃんと十分休んでないと!!」
「……(ふるふる)」
「そんなこと言ってっ、ほら、アル。俺が育てた花に見ほれるのは当然だとしても、ちゃんと休みは取らないと駄目だぞ!!」
「……(ふるふる)」
「アル! 花はちゃんと元気になってからじっくり見ても良いからっ。今はちゃんと休む!」
「……(ふるふる)」
「よしよし、話ならちゃんと後で聞いてやるから。だからほら、早く寝室に行って休みましょうねー?」
「……(ふるふる)」
「良し行くぞ、さあ行くぞ、すぐ行くぞ!!」
「……!!(ふるふる)」
そして連行されるアルーシア