ど-526. 微熱注意報
……昨日は急用と微熱で参ってました。むぅ。
風邪引きには注意を。
「――アルっ、大丈夫か!?」
「ふひゃ!? ひゃ、あ……ご主人、様?」
「旦那様、落ち着いて下さいませ。パーセルゥ様が驚いておられます」
「む? ……あ、ああ済まん」
「はい。多少は落ち着かれましたか、旦那様?」
「ああ、落ち着いた。パーセルゥも、いきなり悪かったな」
「ぁ、ぃ……ぃぇ」
「旦那様も、急に走り出さないで下さいませ」
「いや、でも。アルが熱出したって言ったら慌てるだろ、普通」
「旦那様は慌てすぎです。パーセルゥ様もそう思いますよね?」
「ぇ、ぇ……ぇ?」
「お前も急に無茶ぶりは止めろよ。パーセルゥが困ってるじゃないか」
「旦那様の存在程では御座いません。パーセルゥ様もそう思いますよね?」
「や、だからそれが無茶ぶりだと言ってるんだ」
「……、そもそもアルーシア様が熱を出したとお知らせした瞬間に飛び出して行かれた旦那様がいけないのです」
「……仕方ないだろうが、心配だったんだから」
「それは重々承知しておりますが。だからと言って私の報告が全て終わらないうちに飛び出して行かれる旦那様は少々心配し過ぎなきらいが御座います」
「いーやっ、心配してしすぎる事はないねっ」
「はい、それは仰る通りなのでしょう。ですがそれにしても旦那様のソレは度が過ぎます」
「……まあ? 多少慌てすぎてたのは認めようじゃないか。でもな、それも仕方ない事なんだよ」
「はい、では旦那様のそのご弁解を聞き流しましょうか」
「聞き流すなよ!?」
「では旦那様、どうぞ」
「え、あ。そうだな、やっぱりアルが熱出したって聞いたら慌てるじゃないか」
「それは既にお聞きしました」
「お前にどう言われようと心配だったのは心配だったんだよっ! 悪かったな!!」
「いえ、心配し過ぎであるとは申し上げましたが、悪いとは言っておりません。ただ――」
「ただ、なんだよ?」
「此度のアルーシア様は、ただ微熱を出しただけ、云わば日頃の疲れが出たに過ぎません。つまり、」
「……?」
「少し休めば十分元気になります。その証拠に顔色も良いでしょう?」
「……げんき」
「うん、アルが元気そうで俺も安心したぞー? ……あと、お前はそう言う事は早く言えっての」
「私が申し上げる前に旦那様が飛び出して行かれたのです。私に落ち度は御座いません」
「それでも、」
「それでも何とかせよ、と仰られるのでしたら方法はいくつか御座いますが。強制的にぶちのめす、搦め手を使い捕縛する、精神的に陥落させる、口に出せない“ピー”……――どれが宜しいでしょうか? 今後はそちらを実行するように検討いたしますので」
「碌なのがない、つか最後の口に出せない“ピー”とかって何だよ」
「……その、旦那様? アルーシア様やパーセルゥ様の前ではその、……恥かしいです」
「――ふぇ!!??」
「……!」
「……あからさまに誤解を生ませるための発言は止そうな?」
「誤解? なんのことでしょうか?」
「――くっ、此処じゃ分が悪か、と言うか熱出してるアルの傍で騒ぐ訳にもいかないしな」
「そうですよ、旦那様。アルーシア様のお身体に障ります。なんですか、この害にしかならない旦那様は」
「ゃ、そもそもの原因はお前……いや、此処での良い争いは止めておこう」
「賢明な判断です、旦那様」
「……まあ、アルの顔色も良かったし体調も良さそうだし、取り敢えずは一旦引いておこう」
「はい」
「でもまた来るからなっ!?」
「承知しております。ただしそれまでに溜まりに溜まった仕事を片付けてからにして下さいませ?」
「……出来ればお手柔らかにお願いします」
「はい、では参りましょうか、旦那様。――パーセルゥ様にアルーシア様、それでは大変失礼いたしました」
「……え、え?」
「……パーセルゥ」
「――ちょ、アルーシア!? 今のどういう事!? 何でお姉様が、いやそれにご主人様が!!?? え、えぇ!?」
「ぁぅぁぅぁぅ」
-とある少女たちの戯れ-
「……アルーシア、ちょっとそこに座って」
「……座ってる」
「気分の問題なのっ。そうじゃなくて……今の、どう言う事?」
「……?」
「あ~もうっ、だから! 何でアルーシアのお見舞いにあんな慌ててお姉様とご主人様が来るのかって事!」
「……?」
「……駄目だ。その顔、全然分かってないのね」
「……(こくん)」
「……――っ、はぁぁぁぁぁぁぁぁ」