ど-519. バカはバカを呼ぶ
色々用事が込んでいて、昨日は更新できませんでした。
反省。
「風が――俺をっ、呼んでるぜ!!」
「では旦那様のご希望通り、少々花壇に張り巡らせた結界を解除――」
「――するんじゃねえよ!!??」
「いつもの軽い冗談では御座いませんか。そう本気にならないで下さいませ、旦那様」
「冗談にはな、言っていいのと悪いのがあるんだよっ!?」
「そして旦那様は常に駄目な方の冗談を仰い続けておられます」
「いや、そんな事ある筈がない」
「そして知らぬは旦那様ご本人のみ」
「え、いやそんな事はないだろ――って話をずらすんじゃねえ! 今は花壇の結界の話だ!!」
「旦那様がお望みでしたらただちにあの敷地をこの暴風の中へと解放いたしますが?」
「しなくていい。と言うより、絶対するなよ?」
「真に口惜しい限りではありますが、旦那様がそう仰られている以上は了承いたしました」
「……よし」
「所で旦那様、先程風が呼んでいる、などと仰られておりましたが?」
「ああ、こう言う嵐の日って、何となくそう叫びたくなるだろ?」
「いえ、全く」
「そうか? 男心が足りてないんじゃないのか、お前」
「私は女ですが?」
「小さい事を気にするな」
「小さくはないと思うのですが。それとも旦那様にとっては私の性別など“小さな事”なのでしょうか?」
「……へ、あれ? お前、もしかしなくても少し怒ってる?」
「正に今のが言ってはならぬ冗談、の類のモノであると主張させていただきますが、早速地雷をお踏みになられた旦那様と致しましては何か申し開きが御座いますか?」
「悪気は一切なかったんだ」
「承知しております」
「……でも今の何処がNGだったんだ?」
「はい、それもアウトです、旦那様」
「何でだよ!? ってかお前、俺が分かってないからって無茶苦茶言ってるだろ!?」
「いえ、その様な事は一切御座いません」
「……ふんっ、どうだか。怪しいものだなっ」
「今のも少々厳しめに取るとするならばアウトな発言で御座いますね、旦那様」
「だから何でだよ!? と言うか俺は普通に話すのも駄目ってでも言うつもりかっ!?」
「少なくとも無言の方が旦那様の評価が上がるのは間違いないかと」
「それはないな。喋らない俺なんて、魅力半減どころか激減じゃねえか」
「御心配なさらずとも旦那様は十分口が減らないお方であると具申させていただきます」
「ふっ、その通り。俺の魅力は減らないのさっ」
「ちなみに今私は旦那様をバカにしました」
「なんだとぉ!?」
「旦那様、旦那様には改めて申し上げさせていただきたいと思います」
「……な、何をだよ?」
「旦那様もご存じの通り、この世には愛すべきバカと打破すべき阿呆が存在しております」
「あ、ああ。それは分かってる」
「ちなみに愛すべきバカの代表格ともいえるのがシャトゥです」
「それは誰よりも一番知ってる」
「そうですね。こちらは改めて旦那様にお話しすることでもないと私も承知しております。私が申し上げたいのはもう一方、打破すべき阿呆の方で御座います」
「……今の話の流れだと、その打破すべき阿呆とやらが俺だと言いたいのか、お前は」
「いえ、違いますが。旦那様は何故そのように思われたのでしょうか? まさかそうであると言う自覚でもあるのですか?」
「いや、全くないな」
「で、御座いましょうとも」
「ならお前はなんて言いたいんだよ?」
「旦那様はそのどちらでもなく、打破すべきなのかもしれませんが心情としては打破したくない、けれど倒したくなる阿呆である、と言う事です。つまりは珍種ですね」
「珍種かー」
「はい、この珍種」
「……で? 結局のところお前は何が言いたい訳だ?」
「口を開くなこの虫けらめ」
「随分と唐突な暴言だなぁ、おい!?」
「つまり私が申し上げたい事はですね、旦那様」
「お、おう」
「余り暴風雨の中にばかりおられると、またお風邪を召されますよ?」
「……」
「私は館内にて湯船を沸かし団の用意をしておきますので、旦那様も御気が済まれましたらどうか寄り道せずに御自室へ戻られて下さいませ。――では、私は先に戻らせて頂きます」
「……、って、全然関係ないじゃねえかよ!?」
-とある二人の会話-
「……そう言えば、シャトゥちゃん今頃どうしてるのかなぁ?」
「――!!」
「……? あれ、シャトゥちゃ、」
「――ごめんなさい許して成仏してっだから私に取りつかないで下さいませ下僕一号様ッ!」
「、行っちゃった。……と言うより、え? 成仏って、なに?」
絶賛迷子中のシャトゥとのほほんと平和を満喫中のファイさんの邂逅。