ど-517.籠の中の、曝露な時間
大体いつも、こんな漫才。
ちなみに力関係は、
【燎原】(リョーン)>>(越えられない壁)>>アルーシア(新)>>アルーシア(旧)
……の、はず。
「曝露大会をしましょう!」
「……えと、急にどうしたのかな、リョーンさん?」
「曝露大会をしましょう、アルク!」
「……あるく?」
「アルーシアの事です、忘れちゃダメですよっ!!」
「……えぇー、まだそれ続いてたの?」
「つ、続いてたの、って。折角私が考えたのにっ、一生懸命考えたのにっ!?」
「でも“アルク”と“アルア”なんて、ぱっと思いつきそうな呼び名だよね?」
「あ、はい。フィーリングで決めましたから」
「……」
「ちょ、アルク!? その手に持ってるふわふわふさふさ――うわ~随分と擽ったそうですねぇ……って感じ満載のモノは何ですかっ!?」
「あのね、リョーンさん。その呼び方、変えないならこれからリョーンさんの事を呼ぶ時は“フレッシュ”で統一するからね、わたし?」
「――鬼ですかっ!?」
「フレッシュさん、ヒトの嫌がる事ってしちゃダメなんだよ? 知ってる?」
「既にフレッシュなってます!?」
「うん? どうかしたのかな、フレッシュさん」
「私が悪かったのでその呼び方は止めて下さい、アルーシア!」
「うん、判ればいいんだよ、リョーンさん」
「……な、何なんでしょう、この私の立場の低さは。【灼眼】や【点睛】、【冰頂】とか、皆さんこんなに自己的地位って低いでしょうか……?」
「きっとリョーンさんが親しみやすいだけだよ、うん。良い事だと思うよ?」
「そ、そうでしょうか?」
「うん。って言ってもわたしは他の使徒さんたちの事は知らないけど」
「まあ、知ってて楽しい事なんてないですけどね。皆詰まらないんですよー? 【点睛】や【冥了】、チートクライの“使徒”って基本無表情無感情で、しかも神様のいいなり! あんな『ねくらやろー』の何処が良いんでしょうね?」
「か、仮にも神様の事を根暗野郎って、リョーンさん……」
「いいんですよっ、女神様が言ってました。男神に碌なのはいない、あいつら全員変態だって。チートクライは『ねくらやろー』でクゥワトロビェは『うざい・きもい・しつこい三拍子揃ったすとーかー』だって」
「……何か凄い事を言ってるんだね、女神様って」
「そうですか?」
「うん、そうだと思う。……ちなみに女神様の事は?」
「――女神様最高ッ!」
「うん、聞くだけ無駄だったね」
「それもそうですね。女神様が最高なんて事、言わなくても分かる事ですから」
「……そだね。わたしは本当の意味で“女神様”に逢った事はないから良く分からないんだけど、そんなにすごいの、女神様って?」
「アルーシア、今みたいな状況にぴったりの言葉を言いましょう。――言葉って万能じゃないんですよ」
「つまり、言葉に出来ない程に凄いって事?」
「はいっ」
「ふーん……まあリョーンさんの事だから話半分に聞いておくよ」
「――それはどういう意味でしょうか!?」
「まあその話は置いといて、」
「置いとかないで下さいよ!?」
「……、まあ置いといて、」
「だから置いておかないで!?」
「他の、男神クゥワトロビェの使徒や、女神様の使徒はどんな感じなの?」
「スルーですかっ!? アルーシアまでわたしの事をスルーですかッッ!!」
「そうだね、リョーンさんの親しみやすさを10とするとどのくらいかな?」
「う、うぅ……」
「ね、リョーンさん。どのくらい?」
「……そう、ですね。クゥワトロビェの使徒さんたちは親しみやすさで言えば……2、くらいかな? それで激情家が多いですよ?」
「激情家?」
「はい。とは言ってもあくまで“使徒”レベルでの話ですけど」
「“使徒”レベルって言うと……」
「そうですね。例えばこんな感じです。気に入らないヒトがいました。アルーシアならどうします?」
「んと、取り敢えずはそのヒトには会わないように気をつける、かな?」
「【冰頂】や【逍遥】……そうですね、クゥワトロビェの使徒たちなら、殺します」
「……え?」
「だからその気に入らないヒトを殺しちゃいます。それでもう万事解決、みたいな?」
「え、えー……それはちょっと違わない?」
「そうですね。私もアルーシアの意見には同意ですけど、“使徒”なんて皆そんな感じですよ? ちなみに気に入らないモノがあった場合は、消滅させます。それで万事解決ですから」
「……う-ん?」
「まあ、――“今”がどうなっているのかは私も知りませんけどね?」
「? それってどういう意味?」
「朱に交われば赤くなる、って事ですよ、アルーシア」
「……、それはつまり、こうしてリョーンさんと話してると私までボケ体質になっていっちゃうって、――そう言う事?」
「私全然ボケ体質じゃないですよ!!??」
「ウン、ソウダネ」
「全く気持ちが籠ってません!?」
「ソンナコトナイヨ、リョーンサン」
「何か片言ですっ、話し方が片言ですからっ!?」
「じゃあ、最後に女神様の使徒たちは? 仮にも女神様の使徒なんだから、他の使徒たちよりもましなんだよね?」
「ん~? そうでもないんですよね。【星天】や【昏白】なんて、凄く女神様ラブ! でもう女神様のいいなりみたいな感じですよ?」
「……それ、リョーンさんとどこが違うの?」
「ふっ、私の女神様への愛を舐めないで下さいっ、あんな小童程度のラブじゃ私のラヴは収まりません! 女神様ラヴ! 女神様最高!! ですっ」
「……あれ? 【星天】と【昏白】って、一人だけ抜けた?」
「あ、はい。最後の【灼眼】はですねー、あの子だけは他とちょっと違うんですよー。なんて言うのか、もう私に激☆ラヴ? ヒトに当てはめると可愛い妹みたいな感じなので、私もあの子の事は好きなんですよね~」
「……へぇ、そうなんだ」
「はい。それに何と言っても、あの子実は料理が上手いんですよ。私がお腹すいた~って言ったら何も言わずに手料理作ってくれますしっ」
「……使徒ってお腹すくの?」
「いえ? お腹なんて好きませんし、当然太りませんよ? ただ食べたいだけです」
「……」
「アルーシア? どうかしましたか、アルーシア?」
「……ううん、リョーンさんは、所詮リョーンさんだなぁ、って今再確認したところ」
「な、何か褒められてます? てへへ」
「……、……そうだねー」
「――って、さっきから私の話ばかりじゃないですかっ!? 私ばっかり曝露して……アルーシアも何か暴露しちゃって下さいよっ!!」
「曝露って急に言われても……」
「ほらっ、何かないんですかっ、実は兄ラブとか、禁断の愛とか、むしろ推奨、みたいな? とか何かっ!!」
「うん、兄さんの事は嫌いじゃないけど、好きでもないよ? 取り敢えず兄さんの頭をひっ捕まえて地面に押しつけて、世界中のヒトにごめんなさいってしたいなとは思う」
「よ、容赦ないですね、アルーシアって」
「……まあたった一人の肉親だしね。間違った事をしてたなら『メッ』ってしてあげたいし、逆に私が間違った事をしてたら、……、……取り敢えず兄さんはいいからレムに『めっ』ってしてほしいかな?」
「兄弟愛の話は何処に!?」
「え、そんなのないよ?」
「ないんですかっ!?」
「うん」
「……」
「他に、私の暴露話……例えば昔、死んだみたいに眠ってたレムの頬にキスしちゃったことがある、とか?」
「――ちょ、え、」
「まあ、あの時はキスの意味も良く分かってなかったんだけ、」
「聞きたくありませんん!! アルーシアの、なんで自分の惚気話を聞かなきゃいけないですかっ!?」
「だって曝露って言いだしたの、リョーンさん……」
「曝露って言ったら普通『実は私、昔こんなひどい目に逢った事があるんです……』って感じでしょ!?」
「……うん、昔のリョーンさんの情景が目に浮かぶ様な一言だよ」
「じぇ、――ジェネレーションギャップ!?!?」
「ちょっと違うと思う」
「うぅ、アルーシアなんて、アルーシアなんて……」
「リョーンさん?」
「――うわ~ん!! 羨ましくなんてっ、凄く羨ましいですよっ、羨まし過ぎですよぉぉぉぉ!!!!」
「あ、リョーンさ、……ぁ」
「――ぁ」
「「……」」
「うん、お帰りなさい、リョーンさん」
「……ただいまです、アルーシア」
-とある二人の会話-
「……、夢か」
「それが母親に向かって言う第一声か?」
「いや、ルナもう死んでるし、これを『夢か』以外のどう言えと?」
「まあ夢だけどね」
「だろうなぁ」
「あんたの方は……間相変わらず元気でやってるみたいで安心だよ」
「夢の中で母親面して言われてもなぁ、ありがたみがないぞ?」
「あんたに母親面出来るのは私だけの特権。文句は?」
「ありません、サー」
「よろしい」
「って、夢の中で何バカなことしてるんだろうな、俺」
「さあ? でもそのくらいがちょうどいいって事なんじゃない? 一応、夢の中とは言え母親との感動の再会の場面として、あんたはさ」
「かな?」
「でしょ?」
「……ま、そうかな」
「それで、一応待っててあげてるわけだけど。私に何か言う事はない?」
「……――久しぶり、母さん」
「ああ、久しぶり」
良い夢を見ているレム君。